αの愛し子の黙示録(完結)

ビスケット

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ウチの嫁

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筑葉高校から車でしばらく行った場所に、桐生家の広大な屋敷はあった。
敷地の周りを白壁が延々と続き、その上にうっそうと茂った木々が影を落とす。
重明が桐生家の車に小山田を乗せて連れてきたのは、この桐生本家だった。
ほとんどの名門のα家にはヒートの隔離室がつくられているが、桐生家では敷地内にある離れの建物がそれだった。

桐生本家には、前当主のαの祖父、祖母。現当主のαの父にΩの母。
その間にもうけたαの長男、次男、そしてΩの長女、そしてαの三男が住んでいた。

主人が出払った後の、昼前のまどろみのような時間が流れる本家の廊下。
重明は、小山田を横抱きにして離れに向かっていた。

すると、ステッキを手に三つ揃いのスーツを着込んだ祖父に出くわした。

「お爺様、これからお出かけですか?」

「重明。お前学校はどうした。
…なんだその坊は。
チョーカー・・・Ωか。重明、その坊を番にするのか?」

「いえ、筑葉の学友でαです。
婚約したいと考えていますのでよろしくお願いします。」

「α。ならばなぜ坊はネックガードをしておる。
それにヒートをおこしているではないか。」

「いえ。これはラットです。」

「もしや噂になっていたエクストラか?」

「はい。我が家には美千留がおりますので。
桜花にいる時間だとは思いましたが、彼には念の為につけてもらってます。
このように苦しんでいますので静めてやってきます。
お聞き及びとは思いますが、
夕刻、屋敷で皆と顔合わせをしたいと考えておりますので、そちらもよしなに。」

「まったく。急に予定をいれてきて会わせたい人がいるなどというから番かと思えば。
まさかそこの αとはとても思えぬ坊とはな。
まあいい、時間までには戻る。」

そういって、通り過ぎようとしたその時、ひょいと小山田の方に顔を寄せて言った。

「・・・重明。宝飾を贈るなら、もう少し相手のことを見て求めなさい。
それは坊には壊滅的に似合ってない。
この坊には、赤…いや違うな、もっとこう…」

苦しそうな小山田が気になっていた桐生は、長くなりそうな祖父の話を切り上げようと口を開いた。

「俺もそう思います。これは幸之助さんからの返礼の品なのです。」

城田の名を聞いた先代は、小山田の首で鈍い光を放つ黒真珠をしばし見つめながら言った。

「あの小僧からの返礼…?これがか。
フム…、では時間がなさそうだ。
城田の家が嫁取りに動く前に決めておくべきだ。
重明、婚約などとまどろっこしいことをやっていたら、坊はあっというまに持っていかれるぞ?」

桐生は、深い笑みを浮かべると、祖父に向かって同意した。

「俺もそう思っていました。
お爺様にそういっていただけてありがたい。
婚姻まで可及的速やかに動きたいと思います。」
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