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のこのこやってきた男
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トイレがある洋館というのは、明治だか大正だかに建てられた歴史ある建物だった。
由緒あるというよりも 普通に国の重要文化財になっていると聞いた。
トイレを済ませて、誰もいない廊下を歩いていると、向こうから桜花の女の子が歩いてきた。
まっすぐな亜麻色の髪をなびかせてこちらに歩いてくる。
優雅な足の運びはいかにも桜花生で、容姿もとても愛らしかった。
その子は、なぜか俺の前で立ち止まると、小首をかしげてこちらを見てきた。
ビックリするくらい小さい顔と、その抜けるような肌の白さが目に飛び込んでくる。
そして見上げてくる彼女の目を間近で見て、初めてその瞳は青みがかかっていることに気が付いた。
「あの。失礼かもしれませんが、タイが緩んでいるみたいで・・・。」
そんな彼女の言葉に、俺が目線を首元に落とす一瞬の間に、桜花の美少女はいつの間にか距離を詰めてきていた。
至近距離から彼女は俺に言った。
「よろしければ結び直して差し上げますわ。失礼致しますわね。」
嫌も応もなく、美少女の華奢な手が伸ばされた。
しゅるりと音がして、ふと見ると抜かれたネクタイが彼女の手に収まっていた。
んん?なんて思っている内に、流れるような動きで、いつの間にかシャツのボタンを二つ外されていた。
なるほど、ネクタイ締め直すのにいったん引き抜いて、ボタンを外す必要が・・・いや、ないな!
って思って首を捻ったその時だった。
すうぅ――
「きゃあ―――――いやぁ――――!!」
女の子が、がいきなり金切り声を挙げながら、出口の方に走って行った。
「え。なに!?どうしたの!?だ、大丈夫っすか!?」
女の子の後ろ姿におろおろしながら声を掛けたが、彼女の姿はあっという間に遠ざかっていった。
虫でもいたんかな?ネクタイ持ったまま行っちゃったから、後で返してもらわないと・・・しかし何だったんだ、一体?
なんて首をひねりつつ、自分も足早に洋館を出て、会場に戻ったら、桜花生が集まって何やら騒ぎになっていた。
誰かがしゃがんでいて、それを桜花生が取り巻くようにしていた。
近づくと、彼女たちの会話が聞こえてきた。
「どうなさったの!?愛奈さん!?」
「男に襲われて…怖かったですわ。無我夢中で抵抗して逃げてきて・・・、気が付いたら手にこんなものが・・・」
そう言って、握りしめた俺のネクタイを差し出す。
「それは筑葉のネクタイでは…」
そんな最中に、襲われた場所の方角からのこのこ歩いて来た俺に、一斉に視線が突き刺さった。
「え。」
我ながら情けないことに、俺がとっさに言えたのはこれだけ。
そうする間に、さっきの美少女が涙目で俺をにらみながら弱弱しい声で言った。
「私に何か飲ませて、いやらしいことをなさろうとしたのは・・・あなたなのね・・・」
「いやらしいって・・・?飲ませて・・・何を?
いや、えっとネクタイ返して下さい・・・」
しどろもどろの俺に、桜花生の一人が俺に向かって毅然と言ってきた。
「あなた様は確か 小山田様とおっしゃるのよね。あなたが愛奈さまに何をなさったのか、説明を求めます!!!」
由緒あるというよりも 普通に国の重要文化財になっていると聞いた。
トイレを済ませて、誰もいない廊下を歩いていると、向こうから桜花の女の子が歩いてきた。
まっすぐな亜麻色の髪をなびかせてこちらに歩いてくる。
優雅な足の運びはいかにも桜花生で、容姿もとても愛らしかった。
その子は、なぜか俺の前で立ち止まると、小首をかしげてこちらを見てきた。
ビックリするくらい小さい顔と、その抜けるような肌の白さが目に飛び込んでくる。
そして見上げてくる彼女の目を間近で見て、初めてその瞳は青みがかかっていることに気が付いた。
「あの。失礼かもしれませんが、タイが緩んでいるみたいで・・・。」
そんな彼女の言葉に、俺が目線を首元に落とす一瞬の間に、桜花の美少女はいつの間にか距離を詰めてきていた。
至近距離から彼女は俺に言った。
「よろしければ結び直して差し上げますわ。失礼致しますわね。」
嫌も応もなく、美少女の華奢な手が伸ばされた。
しゅるりと音がして、ふと見ると抜かれたネクタイが彼女の手に収まっていた。
んん?なんて思っている内に、流れるような動きで、いつの間にかシャツのボタンを二つ外されていた。
なるほど、ネクタイ締め直すのにいったん引き抜いて、ボタンを外す必要が・・・いや、ないな!
って思って首を捻ったその時だった。
すうぅ――
「きゃあ―――――いやぁ――――!!」
女の子が、がいきなり金切り声を挙げながら、出口の方に走って行った。
「え。なに!?どうしたの!?だ、大丈夫っすか!?」
女の子の後ろ姿におろおろしながら声を掛けたが、彼女の姿はあっという間に遠ざかっていった。
虫でもいたんかな?ネクタイ持ったまま行っちゃったから、後で返してもらわないと・・・しかし何だったんだ、一体?
なんて首をひねりつつ、自分も足早に洋館を出て、会場に戻ったら、桜花生が集まって何やら騒ぎになっていた。
誰かがしゃがんでいて、それを桜花生が取り巻くようにしていた。
近づくと、彼女たちの会話が聞こえてきた。
「どうなさったの!?愛奈さん!?」
「男に襲われて…怖かったですわ。無我夢中で抵抗して逃げてきて・・・、気が付いたら手にこんなものが・・・」
そう言って、握りしめた俺のネクタイを差し出す。
「それは筑葉のネクタイでは…」
そんな最中に、襲われた場所の方角からのこのこ歩いて来た俺に、一斉に視線が突き刺さった。
「え。」
我ながら情けないことに、俺がとっさに言えたのはこれだけ。
そうする間に、さっきの美少女が涙目で俺をにらみながら弱弱しい声で言った。
「私に何か飲ませて、いやらしいことをなさろうとしたのは・・・あなたなのね・・・」
「いやらしいって・・・?飲ませて・・・何を?
いや、えっとネクタイ返して下さい・・・」
しどろもどろの俺に、桜花生の一人が俺に向かって毅然と言ってきた。
「あなた様は確か 小山田様とおっしゃるのよね。あなたが愛奈さまに何をなさったのか、説明を求めます!!!」
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