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第一部
9.口惜しい
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私は座り込んだまま、己の姿をルドヴィカへと変える。
すると、そんな私を見下ろしているルキウスが気持ちが悪いばかりの笑みを浮かべた。
「美しい。その真っ直ぐな赤紫の髪に、勝気な黒の瞳。全てが全て美しい。まさしく肖像画に見た建国の魔女だ」
ルキウスは恍惚に満ちた表情で私を立たせ、羽織っているローブを脱がせたあと、舐め回すように私の体を見つめている。実に気持ちの悪い目だ。
「では、ルドヴィカ。着ているものを全て脱げ」
私は屈辱だが、先程舌を弄りまわされた事もあり、逆らえなかった。またされたら嫌だからだ。
「これは良いな。ルイーザのような華奢な体ではなく、鍛え上げた腹筋と、程よく筋肉のついた手足。そして、ルイーザのような貧乳ではなく、形の良い豊満な胸。どれも、私の欲望を掻き立てる。気に入った」
「あっ! っ、やめっ」
突然、胸を指でなぞられて、私はルキウスの手を掴みながらやめさせようとしたのに、ルキウスは気にせず私の胸で遊んでいる。
悔しい。悔しい。絶対に逃げてやる。
いつか絶対、お前の屈辱に満ちた表情を拝んでから逃げてやるからな!
「っ! ふ……っ、ぅ」
「どうした? しっかり立っていろ」
ルキウスに胸を弄ばれて、私の体は意図せず跳ね体から力が抜けて、嫌なのにルキウスにしがみついてしまった。
「っあ! や、やめろっ、んぅ……さわるな……あっ、やっ、ああっ!」
ルキウスが私の乳首に軽く歯を立てる刺激ですら、反応してしまう己が恨めしい。ルキウスはゆっくりと私の胸を堪能するかのように、手と口で好き放題弄んでいる。
「んんあっ、待て、っ……も、立てなっ……ひあっ、胸ばっかり、やめろ……んんっ」
胸ばかり丹念に弄られていると、訳が分からなくなってくる。思いたくないのに、他の場所も触って欲しいと……もっと他の刺激も欲しいと……思ってしまう私がいる。
「ほら、しっかり立っていろ」
「うわあぁぁ、あ、あ…………」
突然、背中に鋭い痛みが走ったと思ったら、ルキウスが奴隷を打つ為の太く長い一本鞭で私の背中を打っていた。
背中の肉が裂ける痛みに、今までの快感がぶっ飛んでいく……だが、それと同時に言い表せない程の屈辱と怒り、殺意が私を支配する。
婚約破棄して逃げる? 否、今ここで終わらせてやる! ルキウス・セヴェルス、殺してやる!
私が剣を魔力で具現化しルキウスに斬りかかると、ルキウスは鞭の柄で受け止めただけでなく、私を軽く往なす。
そしてよろけてしまった私を嘲るように見つめている。
ルドヴィカの姿になり、見た目は筋肉があっても、元々のルイーザの体に筋肉がなければ何の意味もない。
腕力、筋力、体力、速さ、その全てでこの男に敵わない。
だが、構わない。私は相討ちでも、この男を殺してみせる。
「ハ……ッ、ハァ、ッ……くっ」
「どうした? 息が上がっているようだが?」
攻撃魔法が使えぬ私に、ルキウスを倒す事は不可能なのだろうか……いや、諦めては駄目だ。私はこの男を殺す。そして、従属の魔法陣に殺されても悔いはない。
「私がこの手で、この皇統に終わりを告げてやる。ルキウス・セヴェルス、死ぬが良い!」
「クッ、面白い」
その時、嘲笑と愉快さ、何とも形容し難い笑みを浮かべたルキウスは剣を取り出し、私の懐へと入った。
しまった!
そう思った時には、既に遅かった。ルキウスが私の腹を横一文字に斬り裂く。飛び散る血飛沫と、己の口から噴き出すように出る喀血……。
敵わない……そう思いながら、倒れそうになった瞬間、ルキウスは私をベッドに投げ、そのまま犯した。
頭がイカれている……屍姦趣味でもあるのか……この男は……。
だが、もう声を出す余裕も抵抗する余裕もなく、私は力なく己を突き刺し、揺さぶる相手をうつろな目で見つめていた。
嗚呼、いっそ殺せ。殺してくれ─────
前世、私が何をしたと言うのだ?
一体、神は何故私にこのような耐え難い事を与えるのだ?
ルイーザとして生まれ変わらせた意味は?
記憶を戻させた意味は?
これは前世、マルクスの望む治世を実現させる為に多くの命を手にかけた罰なのか……それとも神が私に与え賜うた試練なのか……。
ルキウスの気が済んだあと、私は己の体を回復する事を命じられた。
「殺さぬのか?」
「クッ、言ったであろう? 私の地位を確固たるものにせしめる、その魔力が必要だと。建国の魔女、ルドヴィカ・カスティリオーネよ、其方は私の正妃となる。殺しはせぬ」
私は己を回復しながら、ぼんやりとその言葉を聞いていた。
今のままでは、此奴を殺す事は出来ぬ。何としでも、この体を鍛え上げねば……。
「分かった。もう逃げはせぬから、私に剣を学ばせてくれ。近衛兵の鍛錬に混じるのでも構わない。そうすれば、見張りにもなり、護衛にもなり、其方も安心だろう?」
「……力を得たからと言って、其方に私を殺す事は出来ぬぞ。10年死ぬ気で頑張っても無理な話だ」
「そ、そんなの、やってみなければ、分からないだろう!!」
私がルキウスの腕をガシッと掴み、睨みつけると、ルキウスは愉快そうに笑うだけだった。
「1週間後、私の婚約者としての披露目の場を設ける。それをそつ無くやり遂げる事が出来れば、褒美として剣を学ばせてやっても良い」
「本当か?」
「其方の社交界デビューも兼ねている。せいぜい励め」
社交界…………。
社交界で発した言葉は、深く深く刺さった棘のように簡単に取り消す事は出来ぬ。
その場で、ルキウス……其方に恥をかかせてやる。
婚約を発表した瞬間、この私から婚約破棄を言い渡されれば、皆はどう思うだろうか?
ふっ、拭っても拭えぬ恥を、其方に贈ろう。
「何を考えているかは知らぬが、余計な気は起こさぬ事だ。あと、今後は人前に出る時はルドヴィカの姿で出るように」
「……何故だ? ルイーザはどうするのだ?」
「婚約者として国中に広める姫の容姿が、建国の魔女に瓜二つなのだぞ。そして、持つ力もだ。これ以上に素晴らしい事はない」
そして、ルキウスはルイーザのような華奢で貧乳な娘の体には、元々興味がなかったと続けた。
「あ、あんなに愛を囁いていながら、最低だな。このクズめ」
「ふっ、何とでも言え。私は其方のように豊満な胸のほうが好みだ」
そう言って、ルキウスは私の胸に顔を埋め、吸い付いた。チクリとした痛みと共に、赤い鬱血した痕が散らされた。
「だが、あの部屋では無理だぞ。あの部屋では、私は魔力を使えぬ」
「問題はない。どの部屋でも、お前が無力な事には変わらぬからな」
あの部屋以外では、この姿で私を楽しませろと言って、ルキウスは私を組み敷いた。私がルキウスの下から逃れようと暴れても、ルキウスはそんな私を楽しそうに眺めるだけで、びくともしない。
抑えつけられている手を振り払う事すら出来ない己の非力さが恨めしい。
「先程は、其方の良い声が聞けなかったからな。先程の分も存分に堪能させてもらうとしようか」
「っ! いやだ! やめろ、やめてくれ!」
その後、ルキウスは私を、まるでオモチャのように焦らして弄んだ。全身を、時間をかけて丹念に愛撫されると、体がとても敏感になってしまった気がする。
触れられるだけで体をしならせ、嫌なのにもっとという感覚が、私を支配するから不思議だ。
一体、どんな幻術を使っているのだろうか……それとも、これは全てルキウスが巧みだからなのか?
「あっ、ああっ……それ、ばっかり……やあっ、ッ!」
秘所以外は余すところなく弄びながら、秘所には触れてくれぬ。私が脚を擦り合わせてしまうのを馬鹿にするような笑みを浮かべて見てくる目にも私は情欲が煽られた。
「ハァ、ッ、ハ……ッ、ああっ、ふ……っ、んぅ……も、いやだ、んんぅ」
「ならば、言うことがあるだろう?」
い、言うこと?
「……さ、さわってくれ、ルキウス」
うう、屈辱だ。どうして、この私が触ってくれと頼まねばならぬのだ。本当は嫌なのに、嫌なのに。
「それが人に物を頼む態度か? 触って下さい、ルキウス様だろう」
「っ!」
「嫌ならば、これまで通り私の好きなように焦らして遊ばせてもらうだけだ」
「……それは嫌だ……、……っ! うう……、さ、さわって、下さい……ル、ルキウス……さま」
屈辱だ。こんな事、屈辱なのに……。
なのに、どうして抗えないのだ?
だが、覚えていろ。披露目の場で、ルキウスにも屈辱を味わわせてやる。
せいぜい今、優位に立って楽しんでいるが良い、ルキウス。
花嫁に逃げられた間抜けな皇太子の烙印を押してやる!!
すると、そんな私を見下ろしているルキウスが気持ちが悪いばかりの笑みを浮かべた。
「美しい。その真っ直ぐな赤紫の髪に、勝気な黒の瞳。全てが全て美しい。まさしく肖像画に見た建国の魔女だ」
ルキウスは恍惚に満ちた表情で私を立たせ、羽織っているローブを脱がせたあと、舐め回すように私の体を見つめている。実に気持ちの悪い目だ。
「では、ルドヴィカ。着ているものを全て脱げ」
私は屈辱だが、先程舌を弄りまわされた事もあり、逆らえなかった。またされたら嫌だからだ。
「これは良いな。ルイーザのような華奢な体ではなく、鍛え上げた腹筋と、程よく筋肉のついた手足。そして、ルイーザのような貧乳ではなく、形の良い豊満な胸。どれも、私の欲望を掻き立てる。気に入った」
「あっ! っ、やめっ」
突然、胸を指でなぞられて、私はルキウスの手を掴みながらやめさせようとしたのに、ルキウスは気にせず私の胸で遊んでいる。
悔しい。悔しい。絶対に逃げてやる。
いつか絶対、お前の屈辱に満ちた表情を拝んでから逃げてやるからな!
「っ! ふ……っ、ぅ」
「どうした? しっかり立っていろ」
ルキウスに胸を弄ばれて、私の体は意図せず跳ね体から力が抜けて、嫌なのにルキウスにしがみついてしまった。
「っあ! や、やめろっ、んぅ……さわるな……あっ、やっ、ああっ!」
ルキウスが私の乳首に軽く歯を立てる刺激ですら、反応してしまう己が恨めしい。ルキウスはゆっくりと私の胸を堪能するかのように、手と口で好き放題弄んでいる。
「んんあっ、待て、っ……も、立てなっ……ひあっ、胸ばっかり、やめろ……んんっ」
胸ばかり丹念に弄られていると、訳が分からなくなってくる。思いたくないのに、他の場所も触って欲しいと……もっと他の刺激も欲しいと……思ってしまう私がいる。
「ほら、しっかり立っていろ」
「うわあぁぁ、あ、あ…………」
突然、背中に鋭い痛みが走ったと思ったら、ルキウスが奴隷を打つ為の太く長い一本鞭で私の背中を打っていた。
背中の肉が裂ける痛みに、今までの快感がぶっ飛んでいく……だが、それと同時に言い表せない程の屈辱と怒り、殺意が私を支配する。
婚約破棄して逃げる? 否、今ここで終わらせてやる! ルキウス・セヴェルス、殺してやる!
私が剣を魔力で具現化しルキウスに斬りかかると、ルキウスは鞭の柄で受け止めただけでなく、私を軽く往なす。
そしてよろけてしまった私を嘲るように見つめている。
ルドヴィカの姿になり、見た目は筋肉があっても、元々のルイーザの体に筋肉がなければ何の意味もない。
腕力、筋力、体力、速さ、その全てでこの男に敵わない。
だが、構わない。私は相討ちでも、この男を殺してみせる。
「ハ……ッ、ハァ、ッ……くっ」
「どうした? 息が上がっているようだが?」
攻撃魔法が使えぬ私に、ルキウスを倒す事は不可能なのだろうか……いや、諦めては駄目だ。私はこの男を殺す。そして、従属の魔法陣に殺されても悔いはない。
「私がこの手で、この皇統に終わりを告げてやる。ルキウス・セヴェルス、死ぬが良い!」
「クッ、面白い」
その時、嘲笑と愉快さ、何とも形容し難い笑みを浮かべたルキウスは剣を取り出し、私の懐へと入った。
しまった!
そう思った時には、既に遅かった。ルキウスが私の腹を横一文字に斬り裂く。飛び散る血飛沫と、己の口から噴き出すように出る喀血……。
敵わない……そう思いながら、倒れそうになった瞬間、ルキウスは私をベッドに投げ、そのまま犯した。
頭がイカれている……屍姦趣味でもあるのか……この男は……。
だが、もう声を出す余裕も抵抗する余裕もなく、私は力なく己を突き刺し、揺さぶる相手をうつろな目で見つめていた。
嗚呼、いっそ殺せ。殺してくれ─────
前世、私が何をしたと言うのだ?
一体、神は何故私にこのような耐え難い事を与えるのだ?
ルイーザとして生まれ変わらせた意味は?
記憶を戻させた意味は?
これは前世、マルクスの望む治世を実現させる為に多くの命を手にかけた罰なのか……それとも神が私に与え賜うた試練なのか……。
ルキウスの気が済んだあと、私は己の体を回復する事を命じられた。
「殺さぬのか?」
「クッ、言ったであろう? 私の地位を確固たるものにせしめる、その魔力が必要だと。建国の魔女、ルドヴィカ・カスティリオーネよ、其方は私の正妃となる。殺しはせぬ」
私は己を回復しながら、ぼんやりとその言葉を聞いていた。
今のままでは、此奴を殺す事は出来ぬ。何としでも、この体を鍛え上げねば……。
「分かった。もう逃げはせぬから、私に剣を学ばせてくれ。近衛兵の鍛錬に混じるのでも構わない。そうすれば、見張りにもなり、護衛にもなり、其方も安心だろう?」
「……力を得たからと言って、其方に私を殺す事は出来ぬぞ。10年死ぬ気で頑張っても無理な話だ」
「そ、そんなの、やってみなければ、分からないだろう!!」
私がルキウスの腕をガシッと掴み、睨みつけると、ルキウスは愉快そうに笑うだけだった。
「1週間後、私の婚約者としての披露目の場を設ける。それをそつ無くやり遂げる事が出来れば、褒美として剣を学ばせてやっても良い」
「本当か?」
「其方の社交界デビューも兼ねている。せいぜい励め」
社交界…………。
社交界で発した言葉は、深く深く刺さった棘のように簡単に取り消す事は出来ぬ。
その場で、ルキウス……其方に恥をかかせてやる。
婚約を発表した瞬間、この私から婚約破棄を言い渡されれば、皆はどう思うだろうか?
ふっ、拭っても拭えぬ恥を、其方に贈ろう。
「何を考えているかは知らぬが、余計な気は起こさぬ事だ。あと、今後は人前に出る時はルドヴィカの姿で出るように」
「……何故だ? ルイーザはどうするのだ?」
「婚約者として国中に広める姫の容姿が、建国の魔女に瓜二つなのだぞ。そして、持つ力もだ。これ以上に素晴らしい事はない」
そして、ルキウスはルイーザのような華奢で貧乳な娘の体には、元々興味がなかったと続けた。
「あ、あんなに愛を囁いていながら、最低だな。このクズめ」
「ふっ、何とでも言え。私は其方のように豊満な胸のほうが好みだ」
そう言って、ルキウスは私の胸に顔を埋め、吸い付いた。チクリとした痛みと共に、赤い鬱血した痕が散らされた。
「だが、あの部屋では無理だぞ。あの部屋では、私は魔力を使えぬ」
「問題はない。どの部屋でも、お前が無力な事には変わらぬからな」
あの部屋以外では、この姿で私を楽しませろと言って、ルキウスは私を組み敷いた。私がルキウスの下から逃れようと暴れても、ルキウスはそんな私を楽しそうに眺めるだけで、びくともしない。
抑えつけられている手を振り払う事すら出来ない己の非力さが恨めしい。
「先程は、其方の良い声が聞けなかったからな。先程の分も存分に堪能させてもらうとしようか」
「っ! いやだ! やめろ、やめてくれ!」
その後、ルキウスは私を、まるでオモチャのように焦らして弄んだ。全身を、時間をかけて丹念に愛撫されると、体がとても敏感になってしまった気がする。
触れられるだけで体をしならせ、嫌なのにもっとという感覚が、私を支配するから不思議だ。
一体、どんな幻術を使っているのだろうか……それとも、これは全てルキウスが巧みだからなのか?
「あっ、ああっ……それ、ばっかり……やあっ、ッ!」
秘所以外は余すところなく弄びながら、秘所には触れてくれぬ。私が脚を擦り合わせてしまうのを馬鹿にするような笑みを浮かべて見てくる目にも私は情欲が煽られた。
「ハァ、ッ、ハ……ッ、ああっ、ふ……っ、んぅ……も、いやだ、んんぅ」
「ならば、言うことがあるだろう?」
い、言うこと?
「……さ、さわってくれ、ルキウス」
うう、屈辱だ。どうして、この私が触ってくれと頼まねばならぬのだ。本当は嫌なのに、嫌なのに。
「それが人に物を頼む態度か? 触って下さい、ルキウス様だろう」
「っ!」
「嫌ならば、これまで通り私の好きなように焦らして遊ばせてもらうだけだ」
「……それは嫌だ……、……っ! うう……、さ、さわって、下さい……ル、ルキウス……さま」
屈辱だ。こんな事、屈辱なのに……。
なのに、どうして抗えないのだ?
だが、覚えていろ。披露目の場で、ルキウスにも屈辱を味わわせてやる。
せいぜい今、優位に立って楽しんでいるが良い、ルキウス。
花嫁に逃げられた間抜けな皇太子の烙印を押してやる!!
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