やり直したい傲慢令嬢は、自分を殺した王子に二度目の人生で溺愛される

Adria

文字の大きさ
35 / 40

コスピラトーレ王妃

しおりを挟む
「アリーチェ、このブレスレットは術者以外には外せん。なので、大丈夫だとは思うが壊さないように気をつけるのだぞ」
「アリーチェって、どこか抜けているから不安だわ。絶対に油断しちゃ駄目よ」

 あのあと準備のために神殿へ戻り、いつも腰につけているポーチに上級ポーションを補充していると、鬼司教と神子仲間達が何度も同じことを言ってくる。

 ……心配してくれるのは嬉しいんだけど、壊すなとか抜けているとか、何度も言われると複雑な気持ちになってくるから、そろそろやめてほしい。

 私は小さく溜息をついて、皆に向き直った。

「もう、皆ったら。心配しすぎです。もう少し私を信用してください」
「其方が楽観的すぎるのだ。可能なら、ルチャーナ姫の治癒は後回しにして、すぐに帰ってきなさい。帰ってくれば、どうとでもなる」
「わかりました……っ!」

 鬼司教の言葉に頷いたのと同時に、イヴァーノがぎゅっと抱きついてくる。


「イヴァーノ……」
「アリーチェ、やはりやめよう。不安でたまらぬのだ」

 そう言って私の首筋にすり寄る彼に向き合い、いつもしてくれているように私が彼の頭を撫でた。すると、彼が泣きそうな顔で微笑む。


「イヴァーノも、そんなに心配しないでください。三十分もしないうちに帰ってきます」
「嫌だ。アリーチェ……其方さえ許してくれるのなら、私は今すぐにでも父上を玉座から引きずりおろそう。そして、コスピラトーレへ攻め入ってやる。そもそも藩属国であるコスピラトーレなど、恐れる必要はないのだ。私は……」
「イヴァーノ、いけません。引きずりおろすなんて……冗談でも、そのようなことを言わないでください。たとえ王子でも罪に問われてしまいます」
「冗談ではない。アリーチェを伴侶に迎えたいと望んだ時から、念のためにその準備もしている。父上はああいう人なのでな」

 私の目を見据えて力強くそう言うイヴァーノに――イヴァーノの覚悟に、私はとても驚いた。

 でも、私はゆるやかに首を横に振る。
 それは駄目だ。私はイヴァーノに陛下と仲違いしてほしいわけじゃない。それに力で玉座を奪い取れば、そのことが原因でいつか足をすくわれるかもしれない。

 ノービレ学院を卒業すれば、成人と認められ、正式な王太子となれるのだ。私はイヴァーノに順当に華々しく王となってほしい。
 それに今進軍すれば、ルチャーナ様が殺されてしまうかもしれない。フラーヴィア様の持つルチャーナ様の安否が分かる魔石は、まだ輝きを失っていなかった。だから、きっとこの方法が最善なんだ。


「イヴァーノ。私は絶対に陛下に認めさせてみせます。ちゃんとルチャーナ様を連れて帰ってきて、正規軍の指揮権を得てみせます。だから、大船に乗った気持ちで待っていてください」

 私は自分の胸をどんっと叩いて、にこっと笑った。

 近衛兵と王宮騎士団から構成される国王直属の軍は正規軍と呼ばれ、イストリア軍の頂点に立つ。彼らの指揮をイヴァーノの婚約者として任せてもらえるなら、それはもう正式な妃として認められたようなものだ。

 私はイヴァーノや鬼司教に守られるだけじゃなく、自分の力で未来を切り開いてみせる。


「私はアリーチェに軍の指揮などさせたくないのだ。本来、王太子妃も王妃も戦場には立たぬ」
「イヴァーノ、観念してください。貴方が妃に選んだ女は普通じゃなく変わり者なんですよ。私は貴方を守る盾と剣になりたい。そんな王妃を目指します」
「……愚か者。頼むから戦で名を残すような英雄になどならないでくれ」

 イヴァーノの両頬を包むように手を添えてそう言うと、彼は困ったように笑った。そして、鬼司教達からは前例のない王妃になりそうだと呆れた目で見られてしまう。

 前例がないなら打ち立ててこそだ!

 私は皆の固い雰囲気が少し和んだところで、腰にポーチをつけ、「さあ、行きましょう!」と拳を握りしめた。


 ◆     ◇     ◆


「では、行ってきますね」
「私達はアナクレトゥスの魔法で、その魔石から様子を窺っている……。どうか気をつけてくれ」
「アリーチェ、くれぐれも無理はするな。一人で対処できんと感じた場合は、すぐにでも帰ってきなさい」
「はい」

 王宮に戻り、皆に挨拶をすると、イヴァーノと鬼司教がまた同じことを言った。そのことに苦笑していると、イヴァーノのお母様とフラーヴィア様が私の手を握る。

「危険な真似をさせてしまってごめんなさいね。コスピラトーレは私が嫁いでいた時とは大きく違うわ。くれぐれも油断しないように」
「はい」
「アリーチェ、なんとしてでも無事に帰ってきなさい。さすれば、あの狸にはもう何も言わせないわ」
「お義母様……。はい! 必ずルチャーナ様を連れて帰ってきます!」

 二人の言葉に力強く頷くと、二人がぎゅっと抱きしめてくれる。私はそのあたたかさを噛み締めながら、怖いのは少しの辛抱だと自分に言い聞かせた。

 大丈夫。ルチャーナ様を連れて帰ってくるだけ。間者の人からルチャーナ様が住まわせられている場所は確認済みだし、行って帰ってくるだけだ。必要なら治癒魔法を使えばいいし、それほど大きな怪我じゃないのなら、帰ってきてから治療すればいい。

 だから何も怖いことなんてない。

 私は何度か深呼吸をして、皆に頭を下げ、陛下に「行ってきます」と挨拶をした。けれど、陛下は先ほどフラーヴィア様達に顔を叩かれて機嫌が悪いのか、何も言ってくれない。

 とても機嫌が悪そうなので、これ以上は声をかけないほうがよさそうだ。私はそう判断して、イヴァーノに抱きつき、「行ってきます」と言ったあと、転移の魔法陣を描いた。

destinazioneデスティナツィオーネ コスピラトーレ王宮、スフォルトゥーナの小屋」
「アリーチェ! 絶対に己が身を、命を、優先するのだぞ!」

 視界がぐにゃりと歪む瞬間、イヴァーノの声が聞こえた。返事をしたかったけれど、もう自分のいる場所が変わっていて、返事はできなかった。

 イヴァーノ、ごめんなさい。その返事は、無事に戻ってから自分の安否と共にするから。


「ここがコスピラトーレ……」

 きょろきょろと辺りを見回す。情報どおり、王宮の敷地の隅のほうにあり、手入れが行き届いていないのか、鬱蒼としている。目の前には王女が住んでいるとは思えないほどの荒ら屋があって、私はほっと胸を撫で下ろした。

 王宮に保管されているコスピラトーレの見取り図で確認しただけで、実際に来たことはなかったけれど、どうやらうまく転移ができたようだ。


「ここにルチャーナ様が……」

 こんな荒れた小屋に住まわされているなんて……。
 私は彼女が置かれている現状に胸が痛くなった。早く助けてあげなきゃと扉の前に駆け寄る。すると、血の臭いが鼻をついた。


「……っ」

 どうやら、瀕死というのは嘘ではないのかもしれない。私はごくりと生唾を呑み込んで、中の気配を探った。

 中には二人……くらいってところかしら? 大勢の人間の気配はなさそうね。良かった。
 一人はルチャーナ様よね? もう一人はフラーヴィア様が忍び込ませている間者、かしら? まさかコスピラトーレ王妃じゃないわよね?

 私は万が一のことを考えながら、手の中に剣を出して扉を開け、中へ飛びこんだ。

「!!」

 中へ入ったのと同時に飛び込んでくる惨状に目を見張る。そこには、ルチャーナ様と思わしき人と間者の人が血まみれで倒れていた。

 予測していたけれど、これはひどい……!


「大丈夫ですか!?」

 慌てて近寄り、声を掛けても返事はない。それどころか意識すらない。でも、その手にはフラーヴィア様が持っているものと同じ魔石が握りしめられていた。それを確認して、この方がルチャーナ様だと確信する。

 とてもひどいわ。手足が折られているし、顔も腫れ上がるくらいに殴られている。それに無数の刺し傷。それだけじゃない、日常的に暴力が振るわれていると分かる体中の痣。

 これを私の実母が……。

「最低……何が気に入らなかったのか知らないけれど、こんなひどいことをするなんて……」

 私は怒りと悔しさが込み上げてきて、唇を噛んだ。目頭が熱い。私はぐいっと浮かんできた涙を拭い、ルチャーナ様に治癒魔法をかけ、ポーションを飲ませた。呼吸が整ったことを確認して、胸を撫で下ろす。

「これでいいわ、少ししたら目覚めるでしょ……。あとは間者さんね」

 私は小さな息を吐き、彼に手をかざして治癒魔法をかけた。

 その瞬間、間者さんが「う……」と呻く。

「大丈夫ですか?」
「逃げろ……」
「もちろん分かっています。外傷だけでも治したら、すぐにでも一緒に逃げましょう……」
「罠、だ……」
「え?」

 罠……?

 その言葉を聞いた途端、背筋に嫌なものを感じてぞくりと震える。
 とても大勢がこちらに向かってくる気配がした。

「……っ、もう見つかったの?」

 早い、早すぎる。それとも間者さんの言うことが本当なら、最初からバレていたということ?


「申し訳ありませんが、残りの治療はイストリアでします。今は逃げることを優先しましょう」

 私は間者さんと、まだ意識が戻っていないルチャーナ様を壁に凭れかからせ、転移の魔法陣を描いた。

 早く、早くしないと……。

「きゃあっ!」

 その瞬間、大きな爆発が起こり、自分の体が飛んだ。

 痛い……。

 飛ばされて瓦礫の下敷きになってしまった体を少し起こしながら、ルチャーナ様達を確認する。

 凭れかからせていたのが良かったのか、どうやら二人は無事なようだ。転移の魔法陣もちゃんと描けている。私は安堵して、始動の呪文を唱えた。すると、二人が眩い光に包まれて、消えていく。

 これで大丈夫。
 私一人なら、すぐにでも転移できるもの。ああ、こんな時に無詠唱で転移できていたら、描く手間が省けたのに……。帰ったら、現実的じゃないとか言わないで、ちゃんと勉強しよう。

 私は瓦礫からずりずりと這い出て、先ほどの爆発で足に刺さった大きめな破片を引き抜いた。

「それにしても突然小屋に爆発物を投げ込むなんて、めちゃくちゃよ。治療はあとにして逃げなきゃ」

 独り言ちて、転移の魔法陣を描く。その瞬間、腕に縄が巻きつけられて、体を大きく引きずられた。

「きゃあっ!」
「あらあら、アリーチェ。おかえりなさい。スフォルトゥーナと引き換えに、貴方が手に入るなんて、今日はなんてよい日なのかしら」
「……!」

 しまった、魔法陣に夢中で気づけなかった。

 顔を上げて高笑いをする女性を睨みつける。すると、一瞬息が止まった。
 誰? と聞かなくても分かる。私にとてもよく似ている。

 私は腕に縄を巻きつけられたまま、コスピラトーレ王妃を呆然と見つめた。すると、彼女が私の前に立つ。

「おかえりなさい、私の可愛い娘」
「い、いいえ。いいえ、王妃陛下。私はイストリアへ戻らねばなりません」
「あら、なぜ? もしかして人質としての責務を果たそうとしているの? 貴方、とても真面目なのね」

 そう言ってクスクス笑う王妃はまるで少女のようだった。そしてその少女のような笑顔が酷薄に歪む。

「その必要はないわ。貴方がこちらに来たことを確認できた時点で、イストリアへ刺客を送り込んでおいたから。今頃、イストリア王宮は大騒ぎではないかしら? コスピラトーレは、今日をもってイストリアから独立するの。そして、イストリアは我が国のものになるのよ」
「っ!? 嘘、嘘です! だって、イストリアには結界があります。害意ある者は弾かれ、入国できません!」
「それは外から来る者に対してだけでしょう?」

 え……?

 私が意味が分からずに王妃を見つめると、王妃は「サヴェーリオはイストリアの学院に通っているのよ」と楽しそうに笑った。

 その言葉に血の気がひいていく。
 そうだ、ノービレ学院は他国からの学生を受け入れている。だから、あそこだけ結界が薄いのだ。それに今は夏季休暇中なので、人も少なく、容易に入り込めるだろう。

 嫌な汗がつたった。

「今までの暗殺者も……王太子付きの者にまぎらせて、学院からイストリアに入国させていたんですね」

 私の問いかけに王妃が笑う。
 その高笑いを聞きながら、嫌な予感がした。

 イレーニアさんの予言。
 まさかとは思うけど、それは今日起こることを指し示しているのではないのだろうか。

 私がコスピラトーレに来たせいで……。

 なんということ……。
 早く、早くイストリアに帰って対策を練らないと!

「私、イストリアに帰ります! こんなことをして、ただですむと思わないでください! 私達は貴方がたの横暴を絶対に許しません!」
「許さない?」

 腕に巻きつけられた縄を切り、ふらつく足で立ち上がる。距離を取り、転移の魔法陣を描こうとしたのと同時に、王妃が小首を傾げた。

「っ!」

 それを合図にコスピラトーレ軍が弓で総攻撃を仕掛けてくる。雨のように降り注ぐ矢を避けながら、魔法陣を描こうと試みるけれど、応戦するのが精一杯で描けない。

 どうしよう。魔法陣を描きさえできれば、呪文を唱えるだけでいいのに。

「早くアリーチェを捕まえなさいな!」

 王妃の金切り声が聞こえたと思った瞬間、屈強な兵が私目掛けて大剣を振り下ろす。それを剣で受け止めたのと同時に王妃が何かを投げた。

「アリーチェ、貴方のような親に歯向かう悪い子にはお仕置きが必要だわ」
「!!」

 しまった……!
 そう思った瞬間、大きな爆発がまた起きる。目の前にいた兵士諸共、弾き飛ばされてしまう。

「っ、イヴァーノ……、鬼司教……」

 痛い……。こんなことなら、二人の言うことを聞いておけば良かった……。

 先程と今の爆発で負った怪我が思った以上にひどくて、つい弱音が顔を出す。
 でも諦めない。絶対に諦めちゃ駄目だ。早く帰らないと……。

 私は杖をぐっと握り込んだ。それと同時に、その手を王妃が踏みつける。

「っゔあ」
「馬鹿な子、往生際が悪いのよ。私、馬鹿は嫌いなの。まあいいわ。教育し直せばいいだけだものね。とりあえず、今の貴方、とても汚いわ。イストリアでの汚れを落とさなきゃ」

 そして王妃は私の首に魔力を封じる首輪をつけた。その瞬間、私の手から杖が消える。

「あら、このブレスレットは何かしら?」

 その言葉にぎくりと体が揺れた。王妃は外したいのか、がちゃがちゃとブレスレットをいじっている。

「大きいし外れないわ。イストリアの物は汚いからすべて処分したいのよね……。ねぇ、そこの貴方。この石を手首ごと貫いて壊してちょうだい。無理なら、手首を切り落としてもいいわ」
「は!? やめっ、やめて! きゃああぁっ!」

 逃げようと踠いたけれど、数人の兵が私を押さえつける。そして手首目掛けて剣を突き下ろした。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...