女装をしたら復讐を始めよう〜糞王子に婚約者を奪われた僕、転生チートで国ごと滅ぼすと決め男装王女と手を取りました〜

猪鹿蝶

文字の大きさ
25 / 33

25、隣国の王女と出会う僕①

しおりを挟む

 僕たちは今、ガタゴトと馬車に揺られ隣国であるクリーム王国へと向かっていた。
 目の前には多分この国の王女だと思われる二人が、笑顔でこちらを見ている。
 何故曖昧なのかといえば、急いで馬車に乗った為にまだ挨拶もできていなかったからだ。

「皆様もう大丈夫ですわ。ようやくクリーム王国に入りましたから、安心してくださいませ。ここからは我が国の風景を楽しみながらゆっくりと王都へ向かう予定ですわ」
「そうか、特に追っ手が来る事もなくてよかったよ。それにしてもカスタード、迎えに来てもらってすまなかったね」
「いえ、男装美少女であるショコラ様の為でしたら、私は火の中水の中ですわ……」

 そう言いながら、カスタードと呼ばれた女性はショコラ様をうっとりと見つめていた。
 なんだろう、この人凄く男装美少女が好きなのだろうか?
 なんだか不穏な気配を感じてしまう……。

「お姉様、それよりも私は横にいる方々が気になっている所なのですが……」
「まあ、確かに私も気になっていたところですわ! この美少女二人は誰なのかしらって!」
「この二人は私の協力者だよ、先程見ただろ? 町の前に大穴が空いているのを、それはここにいるフラムによるものなんだ」
「まあまあ、あなたフラムちゃんって言うのですわね~。今すぐに抱きしめたいところですけど、馬車の中は危ないからやめておきますわ」

 勢いよくこちらを見たカスタードさんに僕は少しビビりながらも、一応挨拶をと思い手を胸に持っていく。

「ご挨拶が遅れましてすみません、僕はフラムです。こう見えて男なので、美少女ではなくてすみません」
「まぁ!」
「!?」

 王女様はとても驚いて声を上げていた。そして妹さんの方も本当に一瞬だけ目が見開いていたけど、早すぎて多分僕しか気がついていないと思う。

「それと、ショコラ様の反対側に座っているのは僕の妹です」
「リノーです。お兄様について来ただけですが、どうぞよろしくお願いします」
「あらあら~、『おとこの娘』と可愛い妹ちゃん、ですのね!」

 ん? なんでこの世界に『おとこの娘』という単語があるんだ?
 そう疑問に思っていると、二人の王女様も僕に挨拶を返してくれた。

「私も挨拶を、私はクリーム王国第一王女のカスタードですわ」
「私はクリーム王国第二王女のクロテッドです。どうぞよろしくお願いします」

 カスタードさんはふわふわの薄黄色の髪に青い瞳で、クロテッドさんも同じ髪色と瞳を持ったサイドツインテールの女性だった。
 二人ともタレ目でおっとりしたタイプだった。そしてとてもそっくりなのだけど、カスタードさんがあまりにも巨乳でつい視線がそこにいきかけてしまう。しかし姉妹なのにその差は一体……と、少し失礼な事を思ってしまった。
 そして先程から、クロテッドさんを見るたびに何か違和感を覚えてしまうのに、それが何かわからない。

「それでは挨拶も済みましたから、今後我が国でどうされるのかを聞いてもよろしくて?」
「ああ、そうだな。私はアイス城へと着いたら、国王陛下にタルト王国へ戦争をしかけて欲しいと伝えるつもりだ」

 その話に、先程まで笑顔だったカスタード様は無表情になり、その目がスッと細くなる。
 そしてこの場に緊張が走ったのだ。

「それは我が国に何か利益があるのかしら?」
「勿論。その内容は、また国王陛下のもとで詳しい話しをするよ」
「そうですの……ではショコラ様の話は王宮に着くまでの楽しみにとっておきますわ」

 フッと、その緊張状態が解けたと思ったときには、カスタード様の表情はすでにもとへと戻っていた。

「それにしても、ショコラ様が本当に自国を潰そうと思ってるなんて思いませんでしたのよ?」
「仕方がないよ。前までは本当に実現できるか不安だったからね。でも今は違う、ここにいるフラムがいればそれも容易に出来ると、私は信じているんだ」
「まあ、それ程までに互いを信頼なさっているのですわね……素敵!」

 隣でなにか恥ずかしい事を言われている気がするのだけど、今の僕には二人の会話をあまり聞く余裕はなかった。
 何故なら先程からクロテッド様が僕の事をじーっと見つめてくるのだ。何故か僕もその瞳を見つめ返してしまう。
 そして僕は思い出していた。
 そういえばクリーム王国の第二王女と言えば、あの糞王子が貢いでいた相手じゃなかっただろうか?

「あの、クロテッド様に聞いてもいいですか?」
「はい、なんでしょう?」
「タルト王国のシュクル殿下に言い寄られて、貢がれていたと聞きましたけど?」
「ああ、そんな事もありましたね。何故かあの人、私にあった途端運命の相手だと言ってきましたからね……」

 その時のことを思い出したのか、クロテッド様は少し嫌そうな顔をした。
 と、いうよりもあの糞王子は誰にでも運命感じちゃう系のアホだったようだ。

「それにしてもあれ程貢がれていたのに、よく婚約を断れましたね。流石にそこまでされたら国王陛下も重い腰を上げそうなものですけど……」
「ああ、それは仕方がありませんよ。それには理由があるのです」
「理由、ですか?」
「ええ、でもこの話をするには許可を取らないといけませんので……えーっと、少しお待ちください」

 そう言うと、今もショコラ様に話しかけているカスタード様の話に割り込むように、クロテッド様は普通に話しかけたのだ。

「お姉様、お話し中すみません。もしよろしければ、フラムに私の事を話してもよろしいですか?」
「うーん、そうですわね。彼は『おとこの娘』なのですのよね?」
「ええ、間違いなくそうですね」
「それなら私としてはあなたと仲良くして欲しいですし、特に不利益もなさそうですわ。ですから話す事を許可します」
「お姉様、許可を下さってありがとうございます」

 そしてクロテッド様は改めて僕を見て微笑んだ。

「お待たせしました。先程の話の続きですが、何故私が婚約者として断るしかできなかったのか、それは……」
「それは……?」

 見つめ合う視線のせいで、それを聞くまでにとても長い時間がすぎたように思えてしまう。
 そして、クロテッド様はニコリと笑いながら言ったのだ。

「私が『おとこの娘』だからですよ?」
「え?」

 その表情はどこからどう見ても可愛い女の子にしか見えないのに、何処か違和感があった。
 でもその一言で、僕はその違和感の正体を全て理解したのだった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

【完結】悪役令嬢は婚約破棄されたら自由になりました

きゅちゃん
ファンタジー
王子に婚約破棄されたセラフィーナは、前世の記憶を取り戻し、自分がゲーム世界の悪役令嬢になっていると気づく。破滅を避けるため辺境領地へ帰還すると、そこで待ち受けるのは財政難と魔物の脅威...。高純度の魔石を発見したセラフィーナは、商売で領地を立て直し始める。しかし王都から冤罪で訴えられる危機に陥るが...悪役令嬢が自由を手に入れ、新しい人生を切り開く物語。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

処理中です...