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26、隣国の王女と出会う僕②
しおりを挟むクロテッド様の笑顔は、美少女ではなく美少年だったからこそ僕は違和感を感じていたのだ。
でもそれよりも、おかしな事に気がついた。
「第二王女様が『おとこの娘』?」
「勿論それは偽りの姿ですよ、本来の私はクリーム王国第一王子ですから」
「それって、シュクル殿下は『おとこの娘』のクロテッド様にゾッコンだったって事ですか?」
「ええ、その通りですね。私が男だとバレたら困りますから、シュクル王子との婚約は断るしかありませんでした」
「確かにそれは仕方がないですね……」
もしかして糞王子って、元から『おとこの娘』好きの資質を持っていたとか?
それかあんなにも女に囲まれていたせいで、普通の女じゃ魅力を感じなくなったかのどっちかだよ。
でも最後に自分の女装姿にときめいていたから、多分前半だと思う。
しかも『おとこの娘』に恋をして貢ぎまくった挙句幽閉されるなんて、ざまぁないよね。
「どうしました、なんだか不思議な顔をしていますけど……?」
「いや、シュクル殿下の知りたくない事実を知ってしまったもので……って、この話はもういいのですよ。それよりもこれは聞いていいのかわかりませんが、どうして王子なのに女装を?」
「我が国では王位継承争いがおきないように、生まれてくる子は皆女とする事になっているのです。誰が男かわからなければ変な貴族が取り入って来る事も減りますからね」
隣国だというのにそんな風習初めて聞いた。
きっとこの話自体、国のトップシークレットなのだろう。そんな事を僕が聞いて良いのだろうか?
「因みに全員の性別を知っているのは国王陛下だけです。後は私たちのように兄妹同士でバラしている事もありますけどね」
「それって、生みの親もさえも知らないって事ですか?」
「ええ、生まれてすぐに子供とは引き離されますから。王妃たちもそれがわかった上で嫁いできているんです」
「そういう物なのですね……でも、この話を僕にして良かったのですか?」
「ええ。だって私はフラムに一目惚れしてしまったから、あなたを婚約者にしたいのです」
「……は?」
僕を婚約者にって聞こえたけど、互いに美少女みたいな姿をしてるけど二人とも男だよ?
驚いた僕を見て、クロテッド様はクスクスと笑い始めたのだ。
「ふふ、そんな真に受けなくても……私にとってあなたは理想の『おとこの娘』なんです。でも流石におとこの娘同士でも結婚はできません」
「揶揄わないで下さい。じゃあなんでそんな事?」
「フラムの見た目が好みと言う事は、その妹であるリノーも私の好みという事です」
「まさか妹を婚約者に、なんて言わないですよね!?」
僕は大事な妹を取られたくなくて、ついクロテッド様を睨んでしまった。
「そんなに、可愛い顔で睨まないで下さい。でもフラムが言った通り、私はリノーを婚約者にしたいと思っています」
「それは、お断りします」
いつのまに話を聞いていたのか、リノーはショコラ様の向こうからクロテッド様を睨んでいた。
リノーが感情的になるなんて珍しい、それほど婚約者になりたくなかったのか……。
「私はお兄様の側にずっといたいのです……だから今の私には他の誰かと恋をする、ましてや結婚するなんて考えられません……」
「り、リノー」
なんだろう、その気持ちは凄く嬉しい。嬉しいのだけど、ちょっとブラコン過ぎる気がするよ。いや僕もシスコンだけどさ……。
「あらあら。クロテッド、これはフラれちゃいましたわね」
「仕方がありません、私たちはまだ出会ったばかりですから。それにこの話は急ぎてもないですし、また今度にしましょう」
少し残念そうに微笑みながらも、クロテッド様は話題を変える事にしたようだ。
「それよりも私は気になっている事があるのですが、聞いてもいいでしょうか?」
「えっと僕の事でしたら何でもいいですよ?」
「でしたら一つ、フラムの女装はスキルによるものなんですか?」
「……どうしてわかったんですか? もしかしてクロテッド様もスキル『女装』をお持ちとか?」
僕の疑問にクロテッド様は首を振った。
「いいえ、私が持っているのはスキル『美少女』です」
「『美少女』? って事は実は性別も女性になっているとか……」
「いいえ、これは見た目が美少女になるだけです。それに性別まで変わるスキルは流石に無いと思いますけど……」
少し残念そうに言うクロテッド様を見て、もしかして本当は女性になりたかったのだろうかと、思ってしまう。
「でも謎が解けてよかったです。そのスキルは私の『美少女』とは違ってとても強そうですけど、どんな事ができるのですか?」
「えっと……でしたらクロテッド様のお体を少しお借りしてもいいですか?」
「え、ええ……何をするのかわからないですけど、少しドキドキしますね」
僕は前に糞王子へと使った、男性を『おとこの娘』にする機能をもう一度使って見ようと思ったのだ。元々おとこの娘でも使用出来るのか気になったから仕方がない。
クロテッド様にはふんわり天使系が似合いそうだけど、この中にあるだろうか?
そう思って衣装を探してみたけど、この世界で手に入れた服はいまいちイメージと違う。だから僕はデフォルトで入っていた前世の服から選ぶ事にした。
それは、前に僕がミラクルチェンジモードで変身したルンルンの、相方のランランの衣装だった。
「じゃあ、いきますよ?」
僕は選んだ服をポチッと押すと、クロテッドさまが一瞬光に包まれた。
【おとこの娘が増えた効果により光属性の属性威力が上がり現在50%になりました】
クロテッド様も王子様だから光属性持ちのようだけど、糞王子に比べて持ってる威力の桁が違うようだ。
「す、凄いです! これがスキル『女装』の力。でもこの衣装どこかで……?」
「クロテッド様どうです……って、なんだろうこの『おとこの娘コレクション』って……?」
「え……おとこの娘コレクション?」
クロテッド様を見ようとしたのに、僕の前にウィンドウさんが凄く主張してきたのだ。
【『おとこの娘コレクション』を確認しますか?】
【はい】【いいえ】
そんなのを見たら【はい】を押すしかない。と、僕はすぐにそれを押していた。
するとウィンドウさんは大きく広がり、僕の前には『おとこの娘』にしたシュクル殿下とクロテッド様のお姿、そして『現在のおとこの娘度』とかかれた意味深なステータスが出ていた。
「フラム、これが先程言っていたおとこの娘コレクションでしょうか?」
「え? クロテッド様にもこれが見えていらっしゃるのですか?」
「もしかしたら私もそのコレクションに入った為、一部の機能が見えるようになったのかもしれませんね。しかしこの機能、ここから衣装を変えたりできるのでしょうか?」
そう言われたら確かに気になるので、僕はシュクル殿下の衣装を違う服へと変えてみる。
するとすぐにシュクル殿下の姿も変わったのだ。
しかもこれ、衣装をプレゼントすれば『おとこの娘』が自分で服装を選べるようになるみたいなんだけど?
なんかこういう育成ゲーム前世であった気がする……。
「これは面白いですね。もしやフラムはこれから『おとこの娘』仲間を増やすのですか?」
「……それは、わかりません」
「そうですか、面白そうなのにもったいないです」
少し残念な顔をしたクロテッド様に、申し訳なく思いながら僕は話題を変える事にした。
そしてその後も、僕らは色々な話をしながら数日かけて、クリーム王国の王都へたどり着いたのだった。
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