一人暮らしだけど一人暮らしじゃない

ツヨシ

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「上がらせてもらうよ」

「いいよ」

熊田は上がりこむと部屋を隅から隅まで眺めた。

それもゆっくりと何回も。

俺は黙って熊田を見ていた。

熊田はこれでもかと言わんばかりに部屋を眺めたおしていたが、やがて言った。

「おかしいなあ」

「なにが?」

「いやこの部屋、確かに幽霊がいたんだ。それもちょっと前までは。でも今はいない」

「えっ、ここに幽霊がいたのか?」

俺はわざとらしく驚いてみせたが、残念ながら不自然というか大げさというか、自分でも恥ずかしくなるくらいの大根ぶりだったが、熊田はそれどころではないようで、それには気がつかなかった。

「うん。確かに幽霊がいたのに、今はいない。地縛霊ならそう簡単にはいなくなったりしないし、おまえに憑いていた霊だとしても、やはり簡単にはいなくなったりはしない。なのにさっきまでいたはずの幽霊が、今はどこにもいないんだ。不思議だなあ」

こいつは本物だ。

俺は思った。

今の状況はまさに熊田の言ったとおりなのだから。

熊田が続けた。

「浮遊霊の可能性もあるけど、通りすがりの霊がここまでここにいたことを感じさせるわけがない。すると地縛霊かおまえに憑いていた霊がなんだかの理由で急にいなくなってしまったと考えたほうがいいが、そんな例は少なくとも俺は知らない。おまえ、なにか心当たりがあるか。たとえばお祓いしてもらったとか」

「いや、なんも心当たりなんてないよ」

どきどきしながらしゃべった。

かと言って動揺している素振りを見せると熊田に怪しまれてしまうので、そこは本当になにも知らないといった顔で答えた。
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