小豆洗い

ツヨシ

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しかし音のする場所には、何も見当たらなかったのである。
空耳? それとも。
水を汲む手を止めて音に聞き入っていると、不意に後ろから声がした。
「おーい」
振り返ると、どこかの工場の作業服のようなものを着た、顔も体もいかつい中年男が俺に向かってやって来た。
背には大きなリュックを背負っている。
男が言った。
「やあ、一人でキャンプかい。俺もなんだけど」
「ああ、どうも」
「キャンプっていいよなあ。俺も好きでよく一人で行っている。それにしても……」
男は川を見つめた。
「それにしても?」
「今、なんかいたな」
「なんか……とは?」
「よくないものだ」
「よくないもの?」
「まあ、こういった場所は、時たま不幸なことが起きるんだ。だからたまによくないものが出てくる。今はいないけど」
「そうですか」
俺はよくわからないまま答えた。
しかし確かに、しゃきしゃきしゃきという音は、もう聞こえなくなっていた。
「俺にはそういったものがわかるし、そいつらは俺が嫌いならしくて。俺が来るとどこかに行ってしまうんだ」
――霊能者かなんかか?
俺はそう思ったが、男の風貌は俺がイメージする霊能者とは真逆だった。
「まあどっかに行っちまったからもう安心だ。俺は別の場所でキャンプするから。じゃあな」
そう言うと男は、そのまま上流へ行ってしまった。
俺は男の去った後をしばらく見ていたが、やがて調理の準備に取り掛かった。
昼食と夕食を一度に作り、昼食を食べて魚を釣り、しばらくテントで休んでそのあとその辺りを散策し、それから夕食を食べてまたテントで横になった。
そのまま何もしないで過ごした。
あたりはとうに暗くなっている。
――そろそろ寝るか。
俺は寝ることにした。
ランタンの灯を消す。
そしてうとうとしていると、聞こえてきた。
しゃきしゃきしゃき。
昼間聞いたあの音だ。
――またか!
最初聞こえてきたときは、昼間よりも小さな音だった。
テントが川から離れているからだ。
しかし。
しゃきしゃきしゃき。
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