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俺はしばらく呆けていたがやがて我にかえり、綱を握りなおすと渾身の力で引いた。
両のこめかみが痛くなるほどに。
そのまま引き続けると、やがて何かが俺の耳に届いた。
「うげっ」
それは呻き声と言うかなんと言うか、とにかく苦しげな人間の声に聞こえた。
――今のは?
そのまま引き続けると、また聞こえた。
「ぐふっ」
やはり呻き声か何かのように聞こえる。
俺はそのまま綱を引いた。引くのを止めてはいけないような気がしたからだ。
しかし再びその声が聞こえてくることはなかった。
俺は綱をはなした。
すると手に痛みを覚えた。
見てみると、手のひらの皮が何箇所か裂けていて、血がにじんでいた。
俺は自分が思っていた以上の力で綱を引いていたことに、あらためて気がついた。
そして何気に綱が突き出している壁を見ていると、壁から何かがゆっくりと出てきた。
それは壁からは垂直、床からは平行に突き出してきた。
そしてそれは女だった。
女の上半身が影から出てきたのだ。
女の首には俺が最前まで全力で引っ張っていた綱が巻き付いている。
俺が女を見ていると、女が真っ赤な眼で俺を見た。
「私、あなたに殺されたのよ」
女はそう言うと壁から抜け出した。
そして口元だけ笑いながら、俺に近づいて来た。
終
両のこめかみが痛くなるほどに。
そのまま引き続けると、やがて何かが俺の耳に届いた。
「うげっ」
それは呻き声と言うかなんと言うか、とにかく苦しげな人間の声に聞こえた。
――今のは?
そのまま引き続けると、また聞こえた。
「ぐふっ」
やはり呻き声か何かのように聞こえる。
俺はそのまま綱を引いた。引くのを止めてはいけないような気がしたからだ。
しかし再びその声が聞こえてくることはなかった。
俺は綱をはなした。
すると手に痛みを覚えた。
見てみると、手のひらの皮が何箇所か裂けていて、血がにじんでいた。
俺は自分が思っていた以上の力で綱を引いていたことに、あらためて気がついた。
そして何気に綱が突き出している壁を見ていると、壁から何かがゆっくりと出てきた。
それは壁からは垂直、床からは平行に突き出してきた。
そしてそれは女だった。
女の上半身が影から出てきたのだ。
女の首には俺が最前まで全力で引っ張っていた綱が巻き付いている。
俺が女を見ていると、女が真っ赤な眼で俺を見た。
「私、あなたに殺されたのよ」
女はそう言うと壁から抜け出した。
そして口元だけ笑いながら、俺に近づいて来た。
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