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正也は思わず目をこすった。
しかしこすった後も、目の前は以前真っ暗だ。
「えっ」
「なにこれ?」
「なんにも見えないぞ」
三人の声が同時に聞こえた。
そして急ブレーキで車は停止した。
「なんなんだよ」
「なんにも見えないわ」
「いったいどういうこと?」
正也は三人の声を聞いていた。
自分以外もみんな目が見なくなったようだ。
すると不意に目の前が明るくなった。
そして見れば、さっきいた村の中に四人はいた。
車のすぐ横に、二体並んだ地蔵が見える。
「ちょっとどういうことよ」
「村に戻っちまったぜ」
「いったいなにがどうなっているのよ」
三人が騒ぐ中、正也は一人車を降りた。
そして周りをあらためて見まわし、二体の地蔵も見た。
穏やかな顔の二体の地蔵。
これもやはりさっき見たものだ。
「ねえねえなんなのよう。なにがどうなってるのよう」
もはやもう黙ってしまった三人を残して、さやか一人がずっと騒いでいる。
正也は車に戻った。
「おい、どうする」
陽介が聞いてきた。
正也が答える。
「少しの間だが、目の前が急に真っ暗になった。そして目が見えるようになったと思ったら、ここにいた。みんなもそうなのか?」
「そうよ」
「そうだ」
「私も同じ」
正也が言った。
「目の前が真っ暗になった時間は体感だがそんなに長い時間ではなかった。せいぜい数秒といったところだろう。それなのに車はここに戻ってきている。車をユーターンして戻ったとしても、とてもじゃないがあんな短い時間にここまで戻ることなんてできやしない。不可能だ」
陽介が口をはさむ。
「俺はユーターンなんかしてないし、目の前が真っ暗になってから車も走らせていない。いきなり前が見えなくなったんで、ブレーキを踏んだだけだ」
そりゃそうだろうと、正也は思った。
あの狭い山道。
そこを走っている時に、目の前が真っ暗になったら、そのまま車を走らせるバカはいないだろう。
しかし正也の目の前が真っ暗になってから、陽介がブレーキを踏むまで少し時間があった。
正也と陽介が同時に前が見えなくなったわけではなさそうだ。
だからそれがどうしたと聞かれたら、なんとも答えようはないのだが。
「ねえねえねえねえ、どうすんのよどうすんのよ」
さやかがヒステリックにわめきだす。
「とにかくもう一度戻ってみるまでだ」
陽介がそう言い、荒々しく車を発進させた。
ユーターンをして、そのまま山道へと入っていく。
――はたしてこれは、どうなるんだか。
正也は考えた。
また目の前が真っ暗になり、あの村に戻されるのか。
それとも何事もなく分かれ道に出られるのか。
四人とも無言だったが、時折さやかの鼻をすする音が狭い車内に響く。
どうやら涙ぐんでいるようだ。
しかし隣にいる陽介は声をかけることもなく、口を閉じたまま車を走らせている。
車はひたすら山道を走った。
そしてもうすぐ分かれ道と思われたところで、車が急に止まった。
「まただ」
陽介がそう言った時、正也の目は正常に見え、車も山道にいたが、ちょっと遅れて正也の目の前も真っ暗になった。
「まただわ」
「もう嫌!」
「くそっ、一体どうなっている」
「とにかくみんな、落ち着け」
そして視界が戻った。
見れば車は村の中にいた。
横には腹立たしいほどに穏やかな顔をした二体の地蔵が。
正也は車を降りてまわりを調べてみることを考えていたが、その前に陽介が車を走らせた。
山道に入ってもスピードを落とさず、タイヤをきしませながら走る。
「きゃーーーっ!」
「ちょっと、陽介、落ち着いてよ」
「陽介、とにかくスピードを落とせ。危ない!」
しかし陽介がスピードを落とすことはなかった。
正也はなんとかしようと思ったが、山道を猛スピードで運転している陽介に触れることも大きな声を出すこともできず、なにもすることができなかった。
しかしこすった後も、目の前は以前真っ暗だ。
「えっ」
「なにこれ?」
「なんにも見えないぞ」
三人の声が同時に聞こえた。
そして急ブレーキで車は停止した。
「なんなんだよ」
「なんにも見えないわ」
「いったいどういうこと?」
正也は三人の声を聞いていた。
自分以外もみんな目が見なくなったようだ。
すると不意に目の前が明るくなった。
そして見れば、さっきいた村の中に四人はいた。
車のすぐ横に、二体並んだ地蔵が見える。
「ちょっとどういうことよ」
「村に戻っちまったぜ」
「いったいなにがどうなっているのよ」
三人が騒ぐ中、正也は一人車を降りた。
そして周りをあらためて見まわし、二体の地蔵も見た。
穏やかな顔の二体の地蔵。
これもやはりさっき見たものだ。
「ねえねえなんなのよう。なにがどうなってるのよう」
もはやもう黙ってしまった三人を残して、さやか一人がずっと騒いでいる。
正也は車に戻った。
「おい、どうする」
陽介が聞いてきた。
正也が答える。
「少しの間だが、目の前が急に真っ暗になった。そして目が見えるようになったと思ったら、ここにいた。みんなもそうなのか?」
「そうよ」
「そうだ」
「私も同じ」
正也が言った。
「目の前が真っ暗になった時間は体感だがそんなに長い時間ではなかった。せいぜい数秒といったところだろう。それなのに車はここに戻ってきている。車をユーターンして戻ったとしても、とてもじゃないがあんな短い時間にここまで戻ることなんてできやしない。不可能だ」
陽介が口をはさむ。
「俺はユーターンなんかしてないし、目の前が真っ暗になってから車も走らせていない。いきなり前が見えなくなったんで、ブレーキを踏んだだけだ」
そりゃそうだろうと、正也は思った。
あの狭い山道。
そこを走っている時に、目の前が真っ暗になったら、そのまま車を走らせるバカはいないだろう。
しかし正也の目の前が真っ暗になってから、陽介がブレーキを踏むまで少し時間があった。
正也と陽介が同時に前が見えなくなったわけではなさそうだ。
だからそれがどうしたと聞かれたら、なんとも答えようはないのだが。
「ねえねえねえねえ、どうすんのよどうすんのよ」
さやかがヒステリックにわめきだす。
「とにかくもう一度戻ってみるまでだ」
陽介がそう言い、荒々しく車を発進させた。
ユーターンをして、そのまま山道へと入っていく。
――はたしてこれは、どうなるんだか。
正也は考えた。
また目の前が真っ暗になり、あの村に戻されるのか。
それとも何事もなく分かれ道に出られるのか。
四人とも無言だったが、時折さやかの鼻をすする音が狭い車内に響く。
どうやら涙ぐんでいるようだ。
しかし隣にいる陽介は声をかけることもなく、口を閉じたまま車を走らせている。
車はひたすら山道を走った。
そしてもうすぐ分かれ道と思われたところで、車が急に止まった。
「まただ」
陽介がそう言った時、正也の目は正常に見え、車も山道にいたが、ちょっと遅れて正也の目の前も真っ暗になった。
「まただわ」
「もう嫌!」
「くそっ、一体どうなっている」
「とにかくみんな、落ち着け」
そして視界が戻った。
見れば車は村の中にいた。
横には腹立たしいほどに穏やかな顔をした二体の地蔵が。
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山道に入ってもスピードを落とさず、タイヤをきしませながら走る。
「きゃーーーっ!」
「ちょっと、陽介、落ち着いてよ」
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