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道すがらはるみが言った。
「さやかさんの墓標をたててもらえるだけでも、来たかいがあったと言うものだわ」
「そうね」
みまがいま一つ感情のこもっていない声で言った。
はるみの言う通り、さやかの墓標を造ってもらえることは無駄ではないと思ってはいるのだろうが、みまとさやかはそんなに親しくはなかった。
と言うよりも、みまはさやかのことが好きではなかった。
どちらかと言えば、嫌いだったのだ。
そんな人間に対して、なんの思い入れもない。
そしてみまの性格上、寺に行くことによって、なんだかの進展があることをわずかながらでも期待していたのだろうと、正也は思った。
前向きで、少し楽天的なところのあるみまならば。
しかしその期待は全くかなわなかったのだ。
張りのある声など、出せるわけがない。
そのまま誰も口を開かないまま、洞窟へと帰った。
洞窟についても誰もなにも言わず、なにもないまま時間だけが過ぎてゆく。
いつものように。
そして随分と時間が経ったと思われる頃、みまが言った。
「とりあえず、むこう山道歩いてみる」
むこう山道とは、入ってきたのと反対側の山道だ。
おまけに昨日さやかが喰われた山道でもある。
そんなところを昨日の今日で行ってみようと言うみまの提案には正直驚いたが。
みまは、ある意味精神的に追い込まれたようになっているのかもしれない。
やけくそというかなんというか。
しかし正也は考えた。
化け物の出てくる確率は、どこも同じだ。
むしろ昨日化け物が出てきたばかりのところは、他の場所よりも化け物が出てくる確率が、ひょっとしたら低いかもしれない。
確証はまるでないのだが。
正也はみまに同意した。
ついで少し遅れてはるみも。
正也もはるみも積極的に同意したとは言えないが、反対はしなかった。
このままなんにもしないよりかはましだ。
化け物が出てくる危険が、あるといえばあるが。
それはこの洞窟が絶対に安全と言えない限り、どこにいても同じなのだから。
三人で洞窟を出て歩き出す。
先頭ははるみ。
つづいてみま。
正也が最後だった。
洞窟を出てしばらく歩くと、村に入った。
典型的な山間の村。
そのあまりにものどかな風景に、これが死んだ村人たちの怨念が造り上げたものだと言うことを、一瞬忘れてしまいそうだ。
心地よい日差し。さわやかな風においしい空気。鳥の声、川のせせらぎ。
どれ一つとっても、癒しの要素しかない。
見れば先頭のはるみは、真剣なまなざしであたりをくまなく見わたしている。
むこうの山道に着くまでの間も、なにかないかと力強く探しているのだ。
それにつられてみまも同じようにし始めた。
もちろん正也もそうした。
かなり懸命に探したつもりなのだが、これと言ったものは見つからないまま、山道に着いた。
「ここからが本番ね」
はるみが言う。
それは自らを無理にでも奮い立たせようとしているように、正也には聞こえた。
聞こえたが、もちろんそれを否定はしない。
とにかくなんでもいいから、なにかを見つけなければならないのだ。
そうしないとこの村からは出られない。
そうするといつかはあの化け物に喰われることになるのだ。
三人で歩く。
それぞれが右を見たり左を見たり、時には上を見たり下を見たりしながら。
ここから村に戻される地点までは、けっこうな距離がある。
なにかみつかるかどうなのかはわからないが、時間だけは確実につぶせそうだ。
そう考えた自分に、正也は驚いた。
これは決して暇つぶしにやっているのではない。
一言で言えば命がけなのだ。
それなのにそんなことを思いつくなんて。
確かになにかを見つける可能性は、低いと言えば低いのだが。
でもそういう問題ではないのだ。
――いかん、いかん。
正也は首を大きく振った。
前の二人は当然見ていない。
――命がかかっているんだから、それこそ死ぬ気でやらないと。
正也は自分に気合を入れなおした。
「さやかさんの墓標をたててもらえるだけでも、来たかいがあったと言うものだわ」
「そうね」
みまがいま一つ感情のこもっていない声で言った。
はるみの言う通り、さやかの墓標を造ってもらえることは無駄ではないと思ってはいるのだろうが、みまとさやかはそんなに親しくはなかった。
と言うよりも、みまはさやかのことが好きではなかった。
どちらかと言えば、嫌いだったのだ。
そんな人間に対して、なんの思い入れもない。
そしてみまの性格上、寺に行くことによって、なんだかの進展があることをわずかながらでも期待していたのだろうと、正也は思った。
前向きで、少し楽天的なところのあるみまならば。
しかしその期待は全くかなわなかったのだ。
張りのある声など、出せるわけがない。
そのまま誰も口を開かないまま、洞窟へと帰った。
洞窟についても誰もなにも言わず、なにもないまま時間だけが過ぎてゆく。
いつものように。
そして随分と時間が経ったと思われる頃、みまが言った。
「とりあえず、むこう山道歩いてみる」
むこう山道とは、入ってきたのと反対側の山道だ。
おまけに昨日さやかが喰われた山道でもある。
そんなところを昨日の今日で行ってみようと言うみまの提案には正直驚いたが。
みまは、ある意味精神的に追い込まれたようになっているのかもしれない。
やけくそというかなんというか。
しかし正也は考えた。
化け物の出てくる確率は、どこも同じだ。
むしろ昨日化け物が出てきたばかりのところは、他の場所よりも化け物が出てくる確率が、ひょっとしたら低いかもしれない。
確証はまるでないのだが。
正也はみまに同意した。
ついで少し遅れてはるみも。
正也もはるみも積極的に同意したとは言えないが、反対はしなかった。
このままなんにもしないよりかはましだ。
化け物が出てくる危険が、あるといえばあるが。
それはこの洞窟が絶対に安全と言えない限り、どこにいても同じなのだから。
三人で洞窟を出て歩き出す。
先頭ははるみ。
つづいてみま。
正也が最後だった。
洞窟を出てしばらく歩くと、村に入った。
典型的な山間の村。
そのあまりにものどかな風景に、これが死んだ村人たちの怨念が造り上げたものだと言うことを、一瞬忘れてしまいそうだ。
心地よい日差し。さわやかな風においしい空気。鳥の声、川のせせらぎ。
どれ一つとっても、癒しの要素しかない。
見れば先頭のはるみは、真剣なまなざしであたりをくまなく見わたしている。
むこうの山道に着くまでの間も、なにかないかと力強く探しているのだ。
それにつられてみまも同じようにし始めた。
もちろん正也もそうした。
かなり懸命に探したつもりなのだが、これと言ったものは見つからないまま、山道に着いた。
「ここからが本番ね」
はるみが言う。
それは自らを無理にでも奮い立たせようとしているように、正也には聞こえた。
聞こえたが、もちろんそれを否定はしない。
とにかくなんでもいいから、なにかを見つけなければならないのだ。
そうしないとこの村からは出られない。
そうするといつかはあの化け物に喰われることになるのだ。
三人で歩く。
それぞれが右を見たり左を見たり、時には上を見たり下を見たりしながら。
ここから村に戻される地点までは、けっこうな距離がある。
なにかみつかるかどうなのかはわからないが、時間だけは確実につぶせそうだ。
そう考えた自分に、正也は驚いた。
これは決して暇つぶしにやっているのではない。
一言で言えば命がけなのだ。
それなのにそんなことを思いつくなんて。
確かになにかを見つける可能性は、低いと言えば低いのだが。
でもそういう問題ではないのだ。
――いかん、いかん。
正也は首を大きく振った。
前の二人は当然見ていない。
――命がかかっているんだから、それこそ死ぬ気でやらないと。
正也は自分に気合を入れなおした。
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