29 / 47
29
しおりを挟むやがて夕食が運び込まれ、母娘水入らずでご馳走になる。
食べ終わると和子食器を持って姿を消した。
台所に行ったのだろう。カーテンはまだ開いていた。
夕食が済んでもカーテンが開いているのも、これまた初めてだ。
好子はそのままテレビを見ているようだ。
静止画のように動かない。
本間があくびを一つかみ殺したとき、好子が立ち上がった。
そして窓まで来ると、こちらを見た。
――えっ?
本間は一瞬あせったが、よく見ると好子は本間を見ているわけではないようだ。
目はこちらを向いてはいるようだが、どこか遠くを見ているような、焦点がどこに合っているのかわからない目をしていた。
――あの子、いったいなにを見てるんだろう。
本間のいる部屋の先を見るといっても、あの視線の角度では先を見ることが出来ない。
見るとしたら空だが、それも角度が低すぎる。
好子の目は確実にこちらの方を向いている。
本間がそのまま見ていると、好子はすうっと窓から離れて、ソファーに座った。
そしてテレビの続きを見ている。
――変わった子だな。
本間は少々薄気味悪くなってきた。
子供にこんな感情を抱くのは、生まれて一度もなかったことだった。
大道は非常識連続殺人事件の取材を再開した。
前の事件の取材がようやく終わったのだ。
これまでの全ての資料を提出すれば、編集部がまるで自分が取材したかのような内容で、一冊でっち上げてくれるだろう。
著者名も編集部となっている。
大道の名前が載ることはないが、その点を大道が気にしたことはなかった。
再開したといっても、取材場所が前と変わったりすることはない。
が、暇そうな専業主婦から新たな情報を一つ得ることが出来た。
それは最近よく好子が顔や手足にアザを作っているという話だ。
「父親が生きていたときもよくアザを作っていたけど、死んでからは見なくなったんで安心していました。でも二ヶ月くらい前から、またアザを見かけるようになって。好子ちゃんに何度か聞いたんですけど、返事もしてくれませんでした。そこで和子さんに聞いたら「あの子、最近よく転ぶんです。気をつけてはいるんですが」と言われ。もう少し詳しく聞こうとしたんですけど、そうはさせない雰囲気というか威圧感というか、そんなものを和子さんから感じたものですから、結局それ以上聞くことができなくて。そのままになっているんです」
主婦は本当に残念そうな顔をした。
――二ヶ月前といえば、並木が殺された頃だな。
なにか関係があるかもしれないと、大道は感じた。
――調べてみる必要があるな。
そうかと言って、和子に直接聞いてみたとしても、まともな返答はとても望めないだろう。
小峠のように正面の部屋を借りてそこから観察するという手もないわけではないが、経費が税金の警察とは違って、ベストセラーになることはまずない本の出版のために、余分なお金を出版社が出さないだろう。
一応向かいのマンションを調べて見たが、正木親子の部屋を覗くことのできる部屋は、小峠たちが陣取っているところをのぞくと一つも空いていなかった。
道路での張り込みは、わりと交通量の多い道だし、東西に集合住宅がある環境から考えてもまず不可能だ。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる