闇の中の黒い闇

ツヨシ

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やがて夕食が運び込まれ、母娘水入らずでご馳走になる。

食べ終わると和子食器を持って姿を消した。

台所に行ったのだろう。カーテンはまだ開いていた。

夕食が済んでもカーテンが開いているのも、これまた初めてだ。

好子はそのままテレビを見ているようだ。

静止画のように動かない。

本間があくびを一つかみ殺したとき、好子が立ち上がった。

そして窓まで来ると、こちらを見た。

――えっ?

本間は一瞬あせったが、よく見ると好子は本間を見ているわけではないようだ。

目はこちらを向いてはいるようだが、どこか遠くを見ているような、焦点がどこに合っているのかわからない目をしていた。

――あの子、いったいなにを見てるんだろう。

本間のいる部屋の先を見るといっても、あの視線の角度では先を見ることが出来ない。

見るとしたら空だが、それも角度が低すぎる。

好子の目は確実にこちらの方を向いている。

本間がそのまま見ていると、好子はすうっと窓から離れて、ソファーに座った。

そしてテレビの続きを見ている。

――変わった子だな。

本間は少々薄気味悪くなってきた。

子供にこんな感情を抱くのは、生まれて一度もなかったことだった。


大道は非常識連続殺人事件の取材を再開した。

前の事件の取材がようやく終わったのだ。

これまでの全ての資料を提出すれば、編集部がまるで自分が取材したかのような内容で、一冊でっち上げてくれるだろう。

著者名も編集部となっている。

大道の名前が載ることはないが、その点を大道が気にしたことはなかった。

再開したといっても、取材場所が前と変わったりすることはない。

が、暇そうな専業主婦から新たな情報を一つ得ることが出来た。

それは最近よく好子が顔や手足にアザを作っているという話だ。

「父親が生きていたときもよくアザを作っていたけど、死んでからは見なくなったんで安心していました。でも二ヶ月くらい前から、またアザを見かけるようになって。好子ちゃんに何度か聞いたんですけど、返事もしてくれませんでした。そこで和子さんに聞いたら「あの子、最近よく転ぶんです。気をつけてはいるんですが」と言われ。もう少し詳しく聞こうとしたんですけど、そうはさせない雰囲気というか威圧感というか、そんなものを和子さんから感じたものですから、結局それ以上聞くことができなくて。そのままになっているんです」

主婦は本当に残念そうな顔をした。

――二ヶ月前といえば、並木が殺された頃だな。

なにか関係があるかもしれないと、大道は感じた。

――調べてみる必要があるな。

そうかと言って、和子に直接聞いてみたとしても、まともな返答はとても望めないだろう。

小峠のように正面の部屋を借りてそこから観察するという手もないわけではないが、経費が税金の警察とは違って、ベストセラーになることはまずない本の出版のために、余分なお金を出版社が出さないだろう。

一応向かいのマンションを調べて見たが、正木親子の部屋を覗くことのできる部屋は、小峠たちが陣取っているところをのぞくと一つも空いていなかった。

道路での張り込みは、わりと交通量の多い道だし、東西に集合住宅がある環境から考えてもまず不可能だ。
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