闇の中の黒い闇

ツヨシ

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長時間の張り込みをしたら、間違いなく誰かに通報されることだろう。

――うろうろするしかないか。

周りを出来る限りあたる。

それ以外の方法はなさそうだ。

それ以外の方法がないなら、それをやるしかない。


「なんにもなし」

誰も聞いてないのに、本間は誰かに話しかけるようにそう言った。

毎日なにもない。

本当にこんなことに意味があるのだろうか。

たとえなにも掴めなかったとしても、それで給料が減るわけではないが、退屈なことには変わりない。

今日も好子が先に帰ってきた。

リビングに姿を見せたが、数秒後には消えていた。

その後和子が帰ってきて、いつもの夕食。

夕食のときはカーテンが閉まっていることが多いのだが、この日は数日ぶりに開いていた。

食事が終り、和子が後片付けにむかうと思いつつ見ていたが、和子は動かなかった。

ソファーに座ったままで、好子になにか言っている。

その間、好子はずっと口を閉じたままだ。

――なんだろう?

しばらく見ていたが、相変わらず和子だけがしゃべっている。

なにか興奮しているようにも見えた。

が、急に和子の口と動きが止まった。

――……。

和子はじっと好子を見ていた。

好子のほうは、一応母親のほうに顔を向けてはいるが、その視線は微妙にずれている。

そのまま二人に動きはなかったが、突然和子が立ち上がった。

そして好子の顔に、思いっきり平手打ちをした。

――えっ!

成人女性の遠慮ない攻撃を受けて、好子の身体はぐらついた。

そして和子は、こんどは好子の腹を殴り始めた。

そこには八歳の女の子を殴っているとは思えないほどの強い力が加わっていた。

本間が見ていると、和子は何度も何度も好子を殴り続けた。

好子は身体を丸めて痛みに耐えていたが、口は真一文字に閉じられ、なにかを言ったり、泣いたり叫んだりすることはなかった。

涙すら流していないように見えた。

本間は気づいた。

これはしつけなんて次元のものではないと。

明らかに虐待だ。

母から娘へのいわれなき暴力。

和子は子供の頃に親から虐待を受けていたと、本間は聞いていた。

そして結婚してからは、夫による虐待があった。
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