カウの島

ツヨシ

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再び部屋に案内された。
黒服は部屋を出て扉を閉める前に言った。
「これからは本当に自由です。ただし他の参加者とのトラブルだけは起こさぬようにお願いします」
そして黒服は扉を閉めた。
黒服が去った後、俺は考えた。
ここには食いきれないほどの食料と、そして数多くのDVD、本、マンガ、そしてボードゲームとアウトドア用品がある。
それらを使って暇をつぶせと言うのだろう。
ネットもテレビの電波も届かないこの島で。
しかもこの島にはきれいな砂浜と透き通るような海がある。
洋館の後ろは小高い山となっている。
中でも外でもけっこう遊べそうだ。
ただ気になるのはほかの参加者たちだ。
八人いるはずなのに、俺はいまだに誰とも顔を合わせていないのだから。

島に着いてから適当に朝食をとり、まえから読みたかったマンガを全巻よんだ。
その後昼食を食べて、ミニ映画館で三本連続して映画を見た。
そして夕食の後、図書館から借りてきた本を読み、風呂に入り、すこしごろごろした後にベランダに出た。
ベランダだけでも八畳くらいの広さがある。
左右の部屋もベランダがあるようだが、壁があって見ることはできない。
それししても静かだ。
驚くほどに防音が行き届いている。
なにせ黒服の言ったことが本当なら、ここには八人の参加者がいるのだ。
それなのに今日一日俺が聞いたのは、映画のセリフとBGM。自分が出した音、そして波の音、風の音、虫の声しかないのだから。
それ以外の音は一切聞いてない。
まるでたった一人でこの洋館にいるみたいなのだ。
六時間もの間ミニ映画館にいたのに誰も入ってこなかったし、食糧庫や台所は朝昼晩と出入りしたというのに。
図書館でも誰も見なかった。
ほかの人の気配が全くなかったのだ。
――本当に八人もここにいるのか?
そんなことを考えていると、外から音がした。
なにか固いものが地面を連続してたたいているような音だ。
とっさに音のする方を見た。
しかしそれは瞬時に洋館で死角になっている場所に移動した。
目の隅に一瞬だけであり、おまけに明かりは月明りのみ。
ほとんど見えてないと言っていい状態だが、それでもなにか大きなものが、小型のバス程度の、あるいは象くらいの大きさのものが移動したことだけはわかった。
――なんだったんだ今のは?
車とかそういうたぐいのものではないような気がする。
だいたいあのあたりに道などない。
そうするとなにか動物ということになるが、そうなるとそいつはほぼ象くらいの大きさがあることになる。
見知らぬ離島とはいえおそらくここは日本だ。
東京からクルーザーで一晩しかかかっていない。
遠く外国にいるとはとても思えない。
もちろん日本にそんな大きな動物はいない。
すると今見たのはいったいなんなのだ。
俺は考えた。
しかしいくら考えてもあれがなんであるかはわからなかった。
そのうちに考えるのが面倒になり、俺はベッドに入って寝た。

目が覚めた。
時計を見ると午前九時だった。
何時に眠りについたのだろう。
思い出せない。
というより寝る前に時計を見ていなかった。
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