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とにかく腹が減った。
食糧庫に行き、適当なものを適当に料理して、食堂で食べた。
そしてなにか本はないかと図書館に行くと、そこにいた。
四十歳くらいの男が椅子に座って本を読んでいた。
初めて見る俺以外の参加者だ。
むこうも気づいて俺を見た。
なにか言わなければと思い、とっさに口に出た。
「どうも初めまして。ポンチと言います。ネット依存症を克服する目的でここにやってきました」
我ながら間の抜けた挨拶だと思ったが、男はていねいに返してきた。
「初めまして。私もネット依存症を克服するためにここに来ました。名前はアンノウンと言います」
アンノウン。
ハンドルネームだろう。
日本語にすると、誰も知らない、という意味になる。
俺はアガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」を思い出した。
あの小説の犯人の名前がU.N.オーエン。
U.N.オーエンを続けて読むと、アンノウンになる。
そして今のこの状況。
離島に見知らぬ人間が集まっている。
これこそまさに「そして誰もいなくなった」と同じ状況だ。
俺がそんなことを考えていると、アンノウンが言った。
「二日前の夜に船に乗ってここに来て、初めて人に会いました」
小さめの声でぼそぼそとしゃべる。
おとなしくて控えめな性格なのだろう。
俺もそうだがネット依存症に、快活で行動力がありアウトドアが好きというやつはあまりいない。
アンノウンはネット依存症の見本みたいな男だ。
「俺もそうですよ。二日前の夜に船に乗って、ほかの参加者に会うのは初めてです」
そう言うと、アンノウンは軽く笑った。
俺も笑った。
「とにかく俺は七号室にいますから、好きな時に訪ねてくださいね」
俺がそう言うとアンノウンが言った。
「私は三号室です。そちらこそいつでもどうぞ」
三号室と言えば廊下を挟んで俺の部屋の反対側だ。
それでもこの男の生活音は一切耳にしなかった。
やはりこの屋敷は防音が半端ではないのだろう。
「わかりました。そうさせてもらいます」
そう言った後、俺は本を探し、目についた本を手に取ると自分の部屋に戻った。
社交的な人間ならばそのまま図書館にとどまったのだろうが、残念ながら俺はあまり社交的ではない。
しかし他の参加者と初めて会って話ができたのは、なんと言ってもおおきな出来事だ。
それだけでも収穫と言えるだろう。
結局その日はアンノウンにしか会わなかったが、翌日、朝食を食べた後で浜辺を散歩し、部屋に帰る途中玄関ホールで四十代と思える女性に会った。
見知らぬ他人が一つ屋根の下に集まるツアーの参加者の中に女性がいるとは思わなかったので、正直少し驚いたが、とりあえず挨拶と自己紹介をした・
「初めまして。このツアーの参加者のポンチです」
女性も少し驚いたようだが、ちゃんと返してきた。
「初めまして。参加者のももです。よろしく」
「女の人が参加しているとは思わなかったので、少し驚きました」
「あらそう。私以外にも一人は女の人がいるわよ。昨日たまたま会ったの。みゃあと言う若い女の子よ」
若い女の子もいるのか。
俺はちょっと期待してしまった。
「へえ、若い女の子もいるんですね。ところでこのツアーには八人参加していると聞いたのですが、俺が会ったのはももさんで二人目ですよ」
「私もポンチさんで二人目よ。ポンチさんが会ったもう一人の人は誰なの?」
食糧庫に行き、適当なものを適当に料理して、食堂で食べた。
そしてなにか本はないかと図書館に行くと、そこにいた。
四十歳くらいの男が椅子に座って本を読んでいた。
初めて見る俺以外の参加者だ。
むこうも気づいて俺を見た。
なにか言わなければと思い、とっさに口に出た。
「どうも初めまして。ポンチと言います。ネット依存症を克服する目的でここにやってきました」
我ながら間の抜けた挨拶だと思ったが、男はていねいに返してきた。
「初めまして。私もネット依存症を克服するためにここに来ました。名前はアンノウンと言います」
アンノウン。
ハンドルネームだろう。
日本語にすると、誰も知らない、という意味になる。
俺はアガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」を思い出した。
あの小説の犯人の名前がU.N.オーエン。
U.N.オーエンを続けて読むと、アンノウンになる。
そして今のこの状況。
離島に見知らぬ人間が集まっている。
これこそまさに「そして誰もいなくなった」と同じ状況だ。
俺がそんなことを考えていると、アンノウンが言った。
「二日前の夜に船に乗ってここに来て、初めて人に会いました」
小さめの声でぼそぼそとしゃべる。
おとなしくて控えめな性格なのだろう。
俺もそうだがネット依存症に、快活で行動力がありアウトドアが好きというやつはあまりいない。
アンノウンはネット依存症の見本みたいな男だ。
「俺もそうですよ。二日前の夜に船に乗って、ほかの参加者に会うのは初めてです」
そう言うと、アンノウンは軽く笑った。
俺も笑った。
「とにかく俺は七号室にいますから、好きな時に訪ねてくださいね」
俺がそう言うとアンノウンが言った。
「私は三号室です。そちらこそいつでもどうぞ」
三号室と言えば廊下を挟んで俺の部屋の反対側だ。
それでもこの男の生活音は一切耳にしなかった。
やはりこの屋敷は防音が半端ではないのだろう。
「わかりました。そうさせてもらいます」
そう言った後、俺は本を探し、目についた本を手に取ると自分の部屋に戻った。
社交的な人間ならばそのまま図書館にとどまったのだろうが、残念ながら俺はあまり社交的ではない。
しかし他の参加者と初めて会って話ができたのは、なんと言ってもおおきな出来事だ。
それだけでも収穫と言えるだろう。
結局その日はアンノウンにしか会わなかったが、翌日、朝食を食べた後で浜辺を散歩し、部屋に帰る途中玄関ホールで四十代と思える女性に会った。
見知らぬ他人が一つ屋根の下に集まるツアーの参加者の中に女性がいるとは思わなかったので、正直少し驚いたが、とりあえず挨拶と自己紹介をした・
「初めまして。このツアーの参加者のポンチです」
女性も少し驚いたようだが、ちゃんと返してきた。
「初めまして。参加者のももです。よろしく」
「女の人が参加しているとは思わなかったので、少し驚きました」
「あらそう。私以外にも一人は女の人がいるわよ。昨日たまたま会ったの。みゃあと言う若い女の子よ」
若い女の子もいるのか。
俺はちょっと期待してしまった。
「へえ、若い女の子もいるんですね。ところでこのツアーには八人参加していると聞いたのですが、俺が会ったのはももさんで二人目ですよ」
「私もポンチさんで二人目よ。ポンチさんが会ったもう一人の人は誰なの?」
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