逃がさない

ツヨシ

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女と出会った。
人がめったに来ない展望台。
展望台と言う名前だが、山道の一部が広くなって、そこに車が数台停められる駐車場と、お金を入れたら見ることができる望遠鏡が二つあるだけのところだ。
その先は崖になっているが、腰くらいの高さの柵があるだけだ。
そこからの眺めは悪くはないのだが、特別にいいわけでもないので人もそんなには来ない。
休日になんとなくそんなところに行った時、女がうずくまっているのを見た。
「お腹が痛くて……」
病院に連れて行くと、単なる食あたりだ。
お礼を言われ、連絡先を教えた。
そこから付き合うようになった。
しかし長くは続かなかった。
女は独占欲が異常だった。
女と街を歩いていた時に、たまたま女の従兄弟と会って話しただけで、小一時間罵詈雑言を浴びせられた。
子供の頃から知っている従兄弟だと言ってもまるで通じない。
ラインを入れてから返信があるまでに四十秒もかかったと、延々と泣きわめく
夜中の二時に「浮気してないでしょうね」と電話が来る。
しかもそれが長電話になるのだ。
その他もろもろ。あれやこれや。
ひっきりなしだ。
もう限界だ。
俺は思い切って別れ話を切り出した。
予想をしていたが、彼女は発狂した。
正常な人間を相手しているとはとても思えないほどのありさまだ。
そして何度も「たとえ私が死んでも逃がさない」と言うのだ。
その場は無理矢理なんとかおさめて、後日また話し合おうと言うことになった。
場所は彼女が指定した。
二人が出会ったあのしょぼい展望台だ。
彼女にとっては運命の場所というわけだ。
俺にとっては悪夢の場所だが。

約束の日、仕方なく展望台に行く。
ひたすら気が重い。
行くと彼女はもう来ていた。
「たとえ私が死んでも逃がさないわ」
死んだらどうしようもないだろうと思いながらも、なんとか彼女を説得しようとした。
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