びらん

ツヨシ

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その時、本部がびらんにおおいかぶさった。
「私が全力でこいつを押さえる。みんなその間に封印してくれ」
本部の胸の下でびらんが暴れた。
そのたびに本部の体が激しく揺れる。
本部のその表情は苦痛に満ちていた。
「早く。今がチャンスだ!」
草野がそう言い、手をかざしたまま大きな声で何かを唱えた。
桜井も起き上がり、再び手をかざして封印の想いをこめた。
もちろん大場もそうした。
「ううっ」
本部の口から苦痛のうめき声がもれる。
びらんは相変わらず暴れている。
しかし見ればその体は完全に小さな箱の中に入り、そして箱よりも大きな顔も、だんだんと箱の中に吸い込まれていった。
「ぐふっ! もう少しだ」
本部がそう言った後、びらんの体と顔が完全に箱の中に入った。
本部が体を転がし、箱から離れた。
そこへ草野がお札を取り出し、箱に張り付けた。
本部も体を反転させて木箱に近づき、寝転がったままお札を張り付けた。
「封印は完成しました!」
草野が声高くそう言い、桜井と大場は見つめあった後、思わず抱き合った。
しかし寝転がったままの本部が動かない。
「本部さん」
草野が近寄り、その体を揺さぶった。
そして何かを感じて、手を本部の口に当てた。
本部は息をしていなかった。

病院に搬送されたが、本部が息を吹き返すことはなかった。
草野が木箱を手にしたまま言った。
「本部さんが命がけで封印したこのびらん。二度と封印が解けるような真似はさせません。それと……」
「それと?」
「あのバカ息子。見つけ出して青森の神社に連れて帰り、生涯をかけてこれまでの罪を償わせます」
「そうですか」
「ええ。本部さんの葬式の準備。それとあのバカを探し出す。私はこれから忙しくなりますので、これで失礼させてもらいます。ではお二人とも、お元気で」
「はい、草野さんも」
「お元気でいてくださいね」
草野が去り、桜井と大場が残された。
二人とも何も言わなかった。
だが二人のその手は、しっかりとつながれていた。

       終
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