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定番の始まり ~アルケオ~
盗賊といっしょ
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小走りの盗賊の肩の上で小刻みに揺られながら儂は聞き耳をたてていた。盗賊たちは無言で、リズミカルな息づかいだけが聞こえてくる。だんだんと街の喧騒が遠退き、足音だけが回りの壁に反響する静かな場所を通り抜ける。
そして壁の反響も聞こえなくなり、街中の石畳の上を走っていた足音が、今は固い土を踏みしめるざっざっという、眠気を誘う音に変わっていく。
すこしうとうとしかけた頃、盗賊が立ち止まり、何か扉を開けるような音と建物の中に入る気配がして、柔らかいものが敷き詰められているらしき場所にどさりと降ろされた。
さてどうしよう。このまま脱出してウイルさん家に帰ってもいいんだけど、もう少しこの異世界定番イベントを楽しんでみたい気もする。様子をみてから決めよう。
なんて考えていたら、袋の口が開いた。そして声がかけられた。
「おい、お前。」
盗賊が儂の足に話かけた。
「ばか、そっちは足だ。袋から出してやれ。」
「ぐふふっ!」
儂は思わず吹き出した。猿ぐつわを噛まされてるので変な声になった。
盗賊は儂の足をつかみ、袋から儂を引きずり出した。もう少し丁寧に扱って欲しい。
「お前今笑いやがったな。」
「ぐひはへん。」
「このやろう、ばかにしやがって。」
「ばか、猿ぐつわをはずしてやれ。」
盗賊は儂の猿ぐつわをはずして言った。
「おい、お前、なんて名だ?」
「ヘラ。」
「どこの娘だ?」
「家族はいません。」
「ちっ、孤児かよ。だが、いい服を着てるな。お前、金持ちなのか?」
「金持ちと言うほどじゃないですけど、多少は。」
「ふん、まあいい、お前を誰かに売れば金になる。とりあえず、その服は脱がせろ。」
盗賊は儂の縛めを解き、儂の服を脱がせようとした。
「おかしいぜ、この服、継ぎ目がない。」
まあ、今着てる服はつなぎになってるからね。外から脱がせるのは不可能だろう。
「自分で脱げますよ。…はい。」
儂は無造作につなぎの胸の辺りを手でつかみ、体から服を引き剥がした。今の儂は、最初のワンピース姿だ。
「え、今どうやって脱いだ!?」
この服は他の人には着たり脱いだりできないかもな、などとどうでもいい心配をしていたら、また手足を縛られて、猿ぐつわを噛まされた。
「よし、いいか、一晩ここでおとなしくしていろ。」
そう言い残して、盗賊たちは建物から出ていった。
また静かになったので、部屋の中を見回してみる。部屋は天井の隙間からわずかに光が入ってきて仄暗い。部屋の床全体に敷き詰められているのは牧草のようなものだ。ひょっとすると、川を挟んで街の反対側まで連れてこられたのかもしれない。ここは農家の納屋のように見える。
うーん、暇だ。
やっぱり脱出しようかと思った時、外から数人の足音が聞こえてきた。そして乱暴に扉が開くと、さっきとは別の盗賊たちが入ってきてどさりと担いでいた袋を降ろした。袋は中で何かがもがいているかのように、くねくね動き、袋の中からはうーうーという呻き声が聞こえてくる。この盗賊たちは人さらい専門なのかな。
儂の時のように、盗賊は袋の口を開け(今度はちゃんと頭の方だった)、頭だけを露出させて、首のところで袋の口を引き絞った。
袋の中身は生粋のまだ若いエルフだった。やはり猿ぐつわを噛まされ、盗賊たちを恨めしそうににらんでいる。
「いいか、お前は身代金の人質だ。お前の家族が取引に応じれば家族の許に無事に返してやる。だが応じなければお前を奴隷商に売るからな。」
そう言って盗賊たちは、今度は見張りを一人残し、部屋からみんな出て行った。
さらわれたエルフは首から下が袋に入れられたまま、儂のいる壁際まで見張りに引きずられ、その見張りは反対側の壁にどかりと腰をおろし、隙を見せまいと三白眼でこちらを見ている。
エルフはしばらく見張りをにらんでいたが、そのうちにらみ疲れたのか、視線を下に落とした。
ごめん、ちょっと可愛いって思ってしまったよ。
なんとなくもう一人くらいさらって来るのかと思ったていたが、ややしばらくして出て行った盗賊が全員が部屋に戻ってきて、部屋の中は急に賑やかになった。
「よし、今夜はこんなもんだろう。こっちのエルフは人質だから大切に扱え。そっちワンピースの女は朝になる前に奴隷商に連れていく。そうだな、…よし、お前が連れていけ。」
盗賊の一人が頭目らしき人に指図され、私に近づいてくる。
「おとなしくしていれば手荒な真似は…だからなんで嬉しそうに笑ってるんだ、こいつ、気持ち悪いな…」
再び頭から袋を被せられ、また担がれて、今度は荷車のようなものに乗せられたようだ。
儂は袋の中で手足を縛っている縄をほどき、猿ぐつわを外して袋の口を開け、そっと外の様子を伺ってみた。さっきの盗賊が荷車を牽いてるいる。そっと周囲を観察すると、空には星が瞬き、遠くに街の明かりが見える他は、辺りは真っ暗、どこからか獣の鳴き声が、蛙や虫の鳴き声に混じって時々聞こえてくる。
よし、やるなら今だ。儂は気付かれないように(気付かれてもかまわないんだが)荷車を牽く盗賊にそっと近づいた。
パン!という乾いた音とともに、盗賊の頭の上半分が跳ねあがる。
そして壁の反響も聞こえなくなり、街中の石畳の上を走っていた足音が、今は固い土を踏みしめるざっざっという、眠気を誘う音に変わっていく。
すこしうとうとしかけた頃、盗賊が立ち止まり、何か扉を開けるような音と建物の中に入る気配がして、柔らかいものが敷き詰められているらしき場所にどさりと降ろされた。
さてどうしよう。このまま脱出してウイルさん家に帰ってもいいんだけど、もう少しこの異世界定番イベントを楽しんでみたい気もする。様子をみてから決めよう。
なんて考えていたら、袋の口が開いた。そして声がかけられた。
「おい、お前。」
盗賊が儂の足に話かけた。
「ばか、そっちは足だ。袋から出してやれ。」
「ぐふふっ!」
儂は思わず吹き出した。猿ぐつわを噛まされてるので変な声になった。
盗賊は儂の足をつかみ、袋から儂を引きずり出した。もう少し丁寧に扱って欲しい。
「お前今笑いやがったな。」
「ぐひはへん。」
「このやろう、ばかにしやがって。」
「ばか、猿ぐつわをはずしてやれ。」
盗賊は儂の猿ぐつわをはずして言った。
「おい、お前、なんて名だ?」
「ヘラ。」
「どこの娘だ?」
「家族はいません。」
「ちっ、孤児かよ。だが、いい服を着てるな。お前、金持ちなのか?」
「金持ちと言うほどじゃないですけど、多少は。」
「ふん、まあいい、お前を誰かに売れば金になる。とりあえず、その服は脱がせろ。」
盗賊は儂の縛めを解き、儂の服を脱がせようとした。
「おかしいぜ、この服、継ぎ目がない。」
まあ、今着てる服はつなぎになってるからね。外から脱がせるのは不可能だろう。
「自分で脱げますよ。…はい。」
儂は無造作につなぎの胸の辺りを手でつかみ、体から服を引き剥がした。今の儂は、最初のワンピース姿だ。
「え、今どうやって脱いだ!?」
この服は他の人には着たり脱いだりできないかもな、などとどうでもいい心配をしていたら、また手足を縛られて、猿ぐつわを噛まされた。
「よし、いいか、一晩ここでおとなしくしていろ。」
そう言い残して、盗賊たちは建物から出ていった。
また静かになったので、部屋の中を見回してみる。部屋は天井の隙間からわずかに光が入ってきて仄暗い。部屋の床全体に敷き詰められているのは牧草のようなものだ。ひょっとすると、川を挟んで街の反対側まで連れてこられたのかもしれない。ここは農家の納屋のように見える。
うーん、暇だ。
やっぱり脱出しようかと思った時、外から数人の足音が聞こえてきた。そして乱暴に扉が開くと、さっきとは別の盗賊たちが入ってきてどさりと担いでいた袋を降ろした。袋は中で何かがもがいているかのように、くねくね動き、袋の中からはうーうーという呻き声が聞こえてくる。この盗賊たちは人さらい専門なのかな。
儂の時のように、盗賊は袋の口を開け(今度はちゃんと頭の方だった)、頭だけを露出させて、首のところで袋の口を引き絞った。
袋の中身は生粋のまだ若いエルフだった。やはり猿ぐつわを噛まされ、盗賊たちを恨めしそうににらんでいる。
「いいか、お前は身代金の人質だ。お前の家族が取引に応じれば家族の許に無事に返してやる。だが応じなければお前を奴隷商に売るからな。」
そう言って盗賊たちは、今度は見張りを一人残し、部屋からみんな出て行った。
さらわれたエルフは首から下が袋に入れられたまま、儂のいる壁際まで見張りに引きずられ、その見張りは反対側の壁にどかりと腰をおろし、隙を見せまいと三白眼でこちらを見ている。
エルフはしばらく見張りをにらんでいたが、そのうちにらみ疲れたのか、視線を下に落とした。
ごめん、ちょっと可愛いって思ってしまったよ。
なんとなくもう一人くらいさらって来るのかと思ったていたが、ややしばらくして出て行った盗賊が全員が部屋に戻ってきて、部屋の中は急に賑やかになった。
「よし、今夜はこんなもんだろう。こっちのエルフは人質だから大切に扱え。そっちワンピースの女は朝になる前に奴隷商に連れていく。そうだな、…よし、お前が連れていけ。」
盗賊の一人が頭目らしき人に指図され、私に近づいてくる。
「おとなしくしていれば手荒な真似は…だからなんで嬉しそうに笑ってるんだ、こいつ、気持ち悪いな…」
再び頭から袋を被せられ、また担がれて、今度は荷車のようなものに乗せられたようだ。
儂は袋の中で手足を縛っている縄をほどき、猿ぐつわを外して袋の口を開け、そっと外の様子を伺ってみた。さっきの盗賊が荷車を牽いてるいる。そっと周囲を観察すると、空には星が瞬き、遠くに街の明かりが見える他は、辺りは真っ暗、どこからか獣の鳴き声が、蛙や虫の鳴き声に混じって時々聞こえてくる。
よし、やるなら今だ。儂は気付かれないように(気付かれてもかまわないんだが)荷車を牽く盗賊にそっと近づいた。
パン!という乾いた音とともに、盗賊の頭の上半分が跳ねあがる。
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