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§1
転生と少年の夢
しおりを挟むいきなり突き飛ばされた。
高校の合格発表の帰りだった。
スマホに届いたメールをチェックしている時だった。
急の事で、転ぶまいと踏ん張ったら、たたらを踏んで、からだがくるりと回った。その時、一瞬だが今にも建築資材に押し潰されようとする人影が、俺の方を見つめているのが見えた。
あの人が僕を突き飛ばしてくれたおかげで、間一髪で助かったと、そう思った。
が、そのまま後ろに倒れ込み、後頭部を何かにぶつけて、気を失った。
あとから考えると、それが致命傷だったのだろう。
長い眠りから覚めると、俺は別の人間…五歳位の子供に転生していた。
「ア、アスカ!気が付いたのね!良かった!本当に良かった!」
とシーツの上から俺の胸にすがって、今世の母が号泣していた。
偶然にも「アスカ」は前世の俺の名前でもあった。そして今世のアスカのこれまでの人生の記憶も残っていた。
俺は数日前に近くの森で遊んでいる時、倒れてきた朽ち木が頭に当たって意識を失っていたらしい。隣町から呼んだ医者の話だと、いつ死んでもおかしくない状態だったとか。
…まぁ、ラノベにありがちな、死んだ子供に異世界の魂が入り込んだ的なパターンかなぁ。
今世の俺は、小さな村の住人である。
母は専ら、近くの農場で出面さんとして働いている。
父は、この剣と魔法の世界で定番の剣士として冒険者をしている。が、普段は仲間と一緒に行商の旅に出ている。ダンジョンに潜っては、そこで得られる素材やら何やらを自分で売り捌くんだと父に聞いた事がある。だから、一年の大半は家にいない。
アスカに兄弟はいない。一人っ子だ。前世の俺は、姉と妹が一人ずついて、間に挟まれて育ったので、一人っ子というのは新鮮だ。
この村の村長は、母が働いている農場を経営している大地主である。日用品や村では栽培していない食料品を売る商店、そして農機具などを作る鍛冶屋を除けば、村民のほとんどは、農場で働いている。なので、ここは村というより会社という感じだ。生憎と医者はこの村にはいない。
森を突き抜けて流れる川から水を引き、そこそこ広い平野部に農地が広がっている。野菜や主食の麦の他に、麻や綿、家畜や蚕の餌など、多少の商品作物も栽培されている。
まぁ贅沢もできないがひもじくもない、長閑な村である。
そんな村で、俺、アスカは、剣士である父に憧れ、いつかはこの村を出て冒険者として身を立てる事を夢見ていた。
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