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下界にて
11:ユリナス
しおりを挟むそう思ったとき、床一面ににいきなり魔方陣が現れ、目映い光を放った。
このエフェクト知ってる。浄化の魔法だ。
たちまち部屋中の瘴気が消え失せ、部屋の中がモザイクなしではっきり見えるようになった。お母さんの呻き声もなくなり、静かな呼吸を取り戻したようだった。
「久しぶりじゃな、マリアンヌ、ディック。」
私たちが少し落ち着きを取り戻した時、戸口の方からそんな声が聞こえた。
「…大賢者様…」
「ユリナス様!?どうしてっ!?」
ほう、ディックも大賢者ユリナスと知り合いなのか。
二人の驚いた顔を見て、大賢者は微笑んだが、お母さんの様子を見ると、顔色を変えて呟いた。
「…おっと、これはいかん。」
そう言ったと思ったらいきなりお母さんの寝巻きを無造作にひんむいた。容赦ないな、ユリナス。
お母さんの骨と皮だけのような全身が露になり、大賢者は一瞬顔をしかめたが、すぐ元の真剣な表情を取り戻すと、お母さんの鼠径部に手をかざし、なにやら呪文を唱えた。すると、怪しげな紋様が浮かび上がった。
「ユリナス様、それは一体」
「呪印じゃな。恐らく、マリアンヌに呪具が使われたのであろうて。」
そしてすぐさま大賢者が呪文を唱えると、呪印を覆うように魔方陣が浮かび上がった。そして、お母さんの体全体を柔らかなライムの光が包んだ。
このエフェクトも見たことある。解呪の魔法だ。
光が収まると、お母さんの陰部を隠していたモザイクが消え、瘴気の流出が止まった。
「あうっ(呪いが消えた!)」
「呪いは消えた。もう少し遅ければ、手遅れになるところじゃった。」
「マリー!」「…兄さん…」
ディックとお母さんは安堵の表情で抱擁し合った。ほんっとに兄妹仲いいな。大賢者も微笑ましげに二人を眺めている。
「ユリナス様はどうしてこちらに?」
「わしか?街道を歩いておったら、ちょうどディックを見かけての、後を追っただけじゃ。」
「…そういえば…兄さんは…どうして…戻って…きたの?」
「えっそれは」
言い淀んだディックは、ちらりと、私の寝台に転がっている擬陰に視線を合わせた。…いや、どんだけ後ろ髪引かれてるんだよ…。その場にいた全員が微妙な表情になってしまった。
ひとつため息をついて、大賢者は部屋を見回し、部屋の隅で倒れているカーラの様子をうかがった。
「ふむ、何故この部屋で全裸でいるのかはわからんが、この女は気絶しているだけじゃな。呪いも受けていないし、瘴気も全て浄化されているようじゃ。怪我をしているようじゃから、治癒だけしておこうか。」
と言うが早いか、たちまち魔法陣が現れ、怪我が見る間に治ってゆく。しかも処女膜付きで。…それ絶対嫌がらせだろ。
大賢者は治癒の結果に満足したのか、大股開きのまま気絶しているカーラをそのまま放置し、今度は窓の外を見た。
さっき放り出した淫獣を、大賢者の従者と思しき人が処分している所だった。
「ふむ、あれは淫獣じゃな。嬰児を核としておるようじゃが、あれはそこで気絶している女の胎におったのかの。あれは魔物の子のように見えるが、この女は魔物と交わっておるのか?」
うわ、なんか要らん情報でてきた。という事は、他にカーラの子供がいるって事か。それがいずれ私の義理の兄になるわけ?
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