女とじゃイケなかったので男としたらめくるめく経験をして恋に落ちました。

乃木のき

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 達したはずの遊里は更に動きを続け、彰仁は何もでなくなるまで体液を飛び散らかした。
 それは自分でするような単純な放出ではなく、全身を震わせながら、まさに命を吐き出すかのような絶頂だった。

 今まで抱いてきた女の子だってこんなイキ方をしたことがない。
 場数だけは踏んできたはずなのにこんなセックスを知らなかった。
 放り出されるように意識を飛ばしてその後は光り輝く宇宙の中を泳いでいるような開放感があった。

 いつの間に気を失っていたのだろう。ふと浮上すると遊里に強く抱きしめられていて、彰仁はおそるおそる背中に手を回した。

「目、覚めた?」
「……ん」
「気持ちよかったね」
「……ん」

 体内を犯していた凶暴はすでに抜けていて、汚れた体も綺麗に拭き取られていた。柔らかなベッドで布団にくるまれながら、あやすように背中を叩かれている。

「ねえ彰仁さん、イったことないとかほんとはネタでしょ」

 聞かれてフルフルと首を振った。
 今までどうやってもあんな風に達したことはなかった。自分を慰めている時だって一度が限界だ。

「自分でも信じられない」
「へえ、じゃあよっぽど俺たちの相性がいいってことだね」

 遊里は小さなキスの雨を降らすと、彰仁の左手の薬指を口に含んだ。

「どう? 俺に決めちゃわない?」
「何を?」
「俺と付き合ったら悩みなんてなくなると思わない?」

 とろけるような告白につい頷きそうになる。

「男と付き合うってこと?」
「そう、俺今フリーだし」

 チュッチュとキスを降らせながら遊里が誘う。

「きっとうまくいくと思うんだけど」
「……ないな」

 答えると遊里の動きがピタリと止まった。伺うように顔を覗かれても「ないよ」と答えた。

 これだけイキまくったといってもそれはそれで。
 好きになるのは女の子だし、これをキッカケにイケるようになっているかもしれないし。
 遊里がいい人だってことはわかったけれどそれと付き合うっていうのとはまた別の話で。

「一度試してみるって話だろ。これで終わりだ」

 キッパリと断ると遊里は一瞬傷ついたような表情を浮かべた。だけどそれを気づかせないほどすぐにニコリと笑って「だよね」と言った。

「棚ぼた的に好きになってくれないかな~って思ったけど無理か」

 ははっと笑いをこぼしながら遊里の目は笑っていない。
 こんな顔をさせたかったわけじゃないと訂正の言葉を探したけれど、どうやっても見つからなかった。

「まあ彰仁さんも女の子に愛してもらいなよ、そしたら健全なセックスライフを送れるかもね」
「……や、遊里、あのな」
「いーの、っていうか疲れたよね。寝よう」

 ゴロリと背中を向けて遊里はベッドに横になった。
 広い背中を見つめながら胸がチクリと痛む。
 その痛みが何に対してなのかわからないまま彰仁も背中を向けた。動いた瞬間ズキリとあられもない場所が重く響いた。

「ケツがヤバイ」
「あ、ごめんね、気持ちよさそうだったから手加減できなくて。でもたくさんイケたよね、えっと、」

 と数を数え始めたからあわててそれを止めた。

「数えるな!」
「っていうか数えられないほどだったけど」

 それは自分でもわかっている。
 一度堰を切った濁流は止まることを知らず、今までの分まで吐き出すかのようにイキまくった。
 自分にこんなことが起こるなんて信じられないくらい気持ちがよくて解放感に溢れた。
 それも遊里がうまく誘導してくれたからだ。

「あーあの、ありがとな」
「え、なにイキナリ」
「や、あの、イケないって思ってたけど、そうじゃなかったのかなって」
「それはさあ、絶対間違いないと思うけど、彰仁さんがソッチの方が向いているからだと思うよ」

 合わせた背中越しに遊里が笑うのが分かった。

「違うって!」
「まあ今はそれでいいけど」

 含むような声色に真剣みが混じる。

「いつかきっとね、彰仁さんは俺を探すよ」

 その響きは確信を持つように彰仁の中に積もり、そうかもな、と小さくこぼした。次第に意識が遠のいていく。

 その次に目を覚ました時に遊里の姿はなく、広いベッドに彰仁ただ一人が寝転がっていた。

「遊里?」

 部屋の中を探したけれど姿はなく、その形跡の何もかもが消えていた。まるで自分が望んだ白昼夢のように。

「え? 夢?」

 だけど体中に愛された痕が残っていて、重怠い体だけが遊里の存在を現実のものにしている。
 シャワーを浴びチェックアウトをするとすでに支払いは済んでいて、ただポツンとひとり外の世界へと放り出されたようだった。
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