女とじゃイケなかったので男としたらめくるめく経験をして恋に落ちました。

乃木のき

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 泣き言を零した彰仁を残し、萌香は呆れたようにホテルを出ていった。
 結局こんな結果になるんだったら期待なんて持たなきゃよかった。イケないどころか反応までしないなんてこの先どうしたらいいのかわからない。

「遊里……」

 知らず名前を呼んでいた。
 だけどもう会うことは叶わない。
 どこにいるのか、どうやったら会えるのか、接点のない相手に助けを求めたって仕方ないのに。

 中途半端な身体を持て余しながら自宅へと戻るとまっくらな室内がさらに孤独を強くした。この先一生こうやって一人で生きていくんだ。
 誰にも愛されず、誰のことも愛することが出来ないままに。

 体だけじゃないなんてきれいごとだ。
 体もひっくるめてその人を形作り、関係を深めていけるのだから。

 ベッドにもぐりこみ、手持ち無沙汰にスマートフォンを弄った。
 画面の中では楽しそうな人たちが幸せをアピールしている。
 それだってどこまでが現実で作り上げた幸せかわかったものじゃない。
 いつだって自信に満ち溢れて成功者のように見えている彰仁だって同じだ。作り物のまやかしに誤魔化されているだけ。
 こんなに悩んで半泣きでベッドに潜り込んでいるなんて誰にも想像がつかないだろう。

「は」と乾いた笑いが起きた。
 どいつもこいつも好き勝手ばかり言いやがって。都合のいい幻想を彰仁に見て近づいてくるくせに、理想と違うからと平気で捨てていく。

 まともなセックスができない人間に価値がないとばかりに。

 指先一つで世界をシャッフルして幻の中をさまよいながら、知らず遊里の名前を検索していた。
 本名じゃなかったとわかればさらにショックを受けることがわかっているのに。

 だけど案外簡単に遊里の名前がヒットした。
 
「え、ホンモノ?」

 画像を見ると確かに本物の遊里だった。
 ベースを手に輝かしいスポットライトを浴びている。動画を探すと誰かがあげたのか、演奏してるものもいくつか発見された。

 たくさんの歓声や他の楽器にまぎれていても間違いなく遊里の音だとわかる重低音が耳に届く。想像していたように重く艶を帯びた音がリズムを刻んで彰仁の芯を揺らす。

「……ん、あ」

 知らず勃ちあがっていた自身を手に包んだ。
 上下に動かすまでもなく先端からは先走りがこぼれている。画面越しだというのに遊里は彰仁を昂らせた。

「遊里、ん、……触って」

 キスして。触れて。抱きしめて。
 強く奥までえぐって。入っちゃダメな場所まで犯して。
 グダグダになるまで抱きつぶして。体の奥底に眠る欲望を散らして。

「遊里、ああ、遊里……っ」

 密かな穴が遊里を欲しがってひくついた。
 ぬるつく体液を塗りたくって自分の指をさし込んだ。性交の動きをして見せても全然足りない。遊里じゃなきゃ届かない。

「……、あ、ああ、ほし……い」

 画面の中で気持ちよさそうにベースを搔き乱す遊里を見ながら小さな穴とたかぶる性器を弄った。

 さっきまで生身の女じゃ反応しなかった肉体が遊里を求めて出口をさまよう。

「う、ああっ」

 ビュクビュクと吐き出しても収まらず、画面の中の遊里がこっちを見た瞬間さらに高まっていく。

 いつの間に眠ってしまっていたのか、全裸でベッドに横になっていた彰仁は自己嫌悪に陥った。
 まさか画面越しの遊里だけで自慰にふけってしまうなんて。
 
 ベッドサイドには丸めたティッシュがいくつも散らばり、ぬぐい切れなかった精液が腹の上で皮膚を引きつらせていた。
 握り締めていたスマホは充電が切れている。

 気怠い体を無理矢理起こしてシャワーを浴びるとやっと目が覚めてきた。

 本物の遊里が存在していることが分かってしまった。
 出没するライブハウスも見当がつく。

 会いに行ったら遊里はどんな顔をするだろうか。
 
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