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第一章 First love
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「うるさい! 黙れ!」
怒りに火を注いでしまったのか吉崎は激高した。真っ赤にのぼせた顔が醜く歪む。
「いつまでそんな減らず口を聞いていられるのかな」
下半身からカチャと金属音がする。
外した自分のベルトで蜜の手を縛りつけると、ファスナーを開け張り詰めた自身を取り出した。
我慢のできなくなった体液が下着の色を変えている。
これはさすがにまずい。蜜はなんとか逃れようと体をひねったり跳ねたりさせたがうまく逃げられない。
いや、逃げれないなんて余裕をぶっこいてる場合じゃない。早くなんとかしなきゃ。
初めてのキスくらい好きな人としたかった。周防と、したかった。それもかなわなかったのにこれ以上こいつにくれてやるものなんかない。
「くっそ、ふざけんなよ」
「怖がらなくていいよ、蜜……痛がることはしない。今日が僕たちの記念日だよ」
はあはあと息を荒くしながら蜜の下半身にまで手を伸ばしてくる。
逃げなきゃ。
何をしてでも逃げ切らなきゃ。
「先生!!!」
振り絞るように叫んだ。
聞こえないかもしれない。でも届いてほしい。
「助けて! 先生、周防先生!」
「こんな時になんであんな奴の名前をよぶんだよお!」
吉崎はハンカチを蜜の口に中に突っ込むともう一度頬を打った。ガツンと強い衝撃にクラリと視界が揺らいだ。
「本当に君は人をたぶらかす天才だな。僕としながら他の男の名前を呼ぶなんてさ。無駄だよ。君はもう僕のものになるんだし誰も助けにも来ないよ」
「ん-ーーん-ーーーー!」
乾いた感触が舌にはりついて呼吸が苦しい。
このまま吉崎に好きなようにされるなんて、嫌だ。絶対に嫌だ。助けて先生。
窓の外からは賑やかな声が聞こえている。
たった一枚隔てた向こうは今頃後夜祭で盛り上がっているのに。さっきまであそこにいたはずなのに、なんでこんなことになったんだ。
スマホなんて無くしたままでよかった。
ないことに気がつかなかったらあのまま楽しく笑っていられたのに。ほんとバカだ。
獣じみた呼吸が部屋の中を満たしている。吉崎は蜜の下半身に顔を寄せるとスリスリと頬ずりをした。
「君の匂いがする」
「変態」と言ってやりたいのに、口に入れられたハンカチのせいで何も言葉が出てこない。
足を広げられ折りたたまれるとあまりにも恥ずかしすぎる格好にまた涙が出た。もうどうしていいのかわからない。意識がもうろうとしてくる。
逃げたいのに力が入らない。助けて。
「誰かいるのか?」
ふいに周防の声が聞こえた。
助けを求めてばかりいたからついに幻聴が聞こえたんだろうか。
ここだよ、先生、助けて。
早く気がついて。でもこんな情けない姿は見せたくない。でも助けてほしい。ぐちゃぐちゃな感情が胸の中で吹き荒れる。
「おかしいな。電気の消し忘れか?」
コツコツと歩く音が近づいてきて、準備室の前で止まった。ガチャガチャとノブをひねっている。
「おーい?」
幻聴じゃない?
本物の周防が来てくれたのか。
ハっと我に返った蜜はなんとか意識を繋ぐように頭を振った。ドアの方を見ると確かに人影がある。
周防だ。本物が、そこにいる。
「んんんんん-ーーーーーー!!!」と精一杯叫んだ。
力を振り絞って足をばたつかせテーブルを蹴る。
物音に気がついてくれたのか周防はドアをドンドンと叩いた。
「誰かいるのか!?」
「ん-ーーーーん-ーーーーーん-ーーーーーー!!」
「蜜?」
再びノブをひねる音がする。
「くそ、鍵を開けろ!!」
今にも突破されそうな勢いに吉崎は真っ青になったまま動きを止めた。
まさか誰かがくるなんて思っていなかったのだろう。
「なんで……なんであいつが来るんだよ……」
「んんんんーーーーーんんんん-ーーーーー!」
蜜もドンドンとテーブルを蹴った。
「おい! 大丈夫か!」
「なんなんだよ、どうすればいいんだよ」
吉崎の力が緩んだのを感じると蜜は今だと思い切り蹴っ飛ばした。油断した体はゴロンとあっけなくテーブルから転がり落ちる。ガツリと鈍い音が聞こえたが気にしない。
急いで脱がされた服を拾うとそのままドアにダッシュした。小さなガラス越しに目が合う。
口にハンカチを詰められ、顔にあざが出来ている蜜を認めると周防は「離れろ!」と命令した。
何をするのかと思うとドアにタックルを仕掛けたのだ。ドーンと激しい音がしてノブがガタガタと揺れた。
何度も繰り返す。
小石川が言っていた話を思い出した。
周防は激しいタックルをくらって大けがを負ったと。なのに今、蜜を助けようとドアを相手に体当たりをくらわしている。
また怪我をしてしまったらどうしようと蜜は止めてと声にならない叫びをあげた。
もうこれ以上体を痛めつけないで。
何度も繰り返す衝撃に鈍い音がして、ノブが外れた。
怒りに火を注いでしまったのか吉崎は激高した。真っ赤にのぼせた顔が醜く歪む。
「いつまでそんな減らず口を聞いていられるのかな」
下半身からカチャと金属音がする。
外した自分のベルトで蜜の手を縛りつけると、ファスナーを開け張り詰めた自身を取り出した。
我慢のできなくなった体液が下着の色を変えている。
これはさすがにまずい。蜜はなんとか逃れようと体をひねったり跳ねたりさせたがうまく逃げられない。
いや、逃げれないなんて余裕をぶっこいてる場合じゃない。早くなんとかしなきゃ。
初めてのキスくらい好きな人としたかった。周防と、したかった。それもかなわなかったのにこれ以上こいつにくれてやるものなんかない。
「くっそ、ふざけんなよ」
「怖がらなくていいよ、蜜……痛がることはしない。今日が僕たちの記念日だよ」
はあはあと息を荒くしながら蜜の下半身にまで手を伸ばしてくる。
逃げなきゃ。
何をしてでも逃げ切らなきゃ。
「先生!!!」
振り絞るように叫んだ。
聞こえないかもしれない。でも届いてほしい。
「助けて! 先生、周防先生!」
「こんな時になんであんな奴の名前をよぶんだよお!」
吉崎はハンカチを蜜の口に中に突っ込むともう一度頬を打った。ガツンと強い衝撃にクラリと視界が揺らいだ。
「本当に君は人をたぶらかす天才だな。僕としながら他の男の名前を呼ぶなんてさ。無駄だよ。君はもう僕のものになるんだし誰も助けにも来ないよ」
「ん-ーーん-ーーーー!」
乾いた感触が舌にはりついて呼吸が苦しい。
このまま吉崎に好きなようにされるなんて、嫌だ。絶対に嫌だ。助けて先生。
窓の外からは賑やかな声が聞こえている。
たった一枚隔てた向こうは今頃後夜祭で盛り上がっているのに。さっきまであそこにいたはずなのに、なんでこんなことになったんだ。
スマホなんて無くしたままでよかった。
ないことに気がつかなかったらあのまま楽しく笑っていられたのに。ほんとバカだ。
獣じみた呼吸が部屋の中を満たしている。吉崎は蜜の下半身に顔を寄せるとスリスリと頬ずりをした。
「君の匂いがする」
「変態」と言ってやりたいのに、口に入れられたハンカチのせいで何も言葉が出てこない。
足を広げられ折りたたまれるとあまりにも恥ずかしすぎる格好にまた涙が出た。もうどうしていいのかわからない。意識がもうろうとしてくる。
逃げたいのに力が入らない。助けて。
「誰かいるのか?」
ふいに周防の声が聞こえた。
助けを求めてばかりいたからついに幻聴が聞こえたんだろうか。
ここだよ、先生、助けて。
早く気がついて。でもこんな情けない姿は見せたくない。でも助けてほしい。ぐちゃぐちゃな感情が胸の中で吹き荒れる。
「おかしいな。電気の消し忘れか?」
コツコツと歩く音が近づいてきて、準備室の前で止まった。ガチャガチャとノブをひねっている。
「おーい?」
幻聴じゃない?
本物の周防が来てくれたのか。
ハっと我に返った蜜はなんとか意識を繋ぐように頭を振った。ドアの方を見ると確かに人影がある。
周防だ。本物が、そこにいる。
「んんんんん-ーーーーーー!!!」と精一杯叫んだ。
力を振り絞って足をばたつかせテーブルを蹴る。
物音に気がついてくれたのか周防はドアをドンドンと叩いた。
「誰かいるのか!?」
「ん-ーーーーん-ーーーーーん-ーーーーーー!!」
「蜜?」
再びノブをひねる音がする。
「くそ、鍵を開けろ!!」
今にも突破されそうな勢いに吉崎は真っ青になったまま動きを止めた。
まさか誰かがくるなんて思っていなかったのだろう。
「なんで……なんであいつが来るんだよ……」
「んんんんーーーーーんんんん-ーーーーー!」
蜜もドンドンとテーブルを蹴った。
「おい! 大丈夫か!」
「なんなんだよ、どうすればいいんだよ」
吉崎の力が緩んだのを感じると蜜は今だと思い切り蹴っ飛ばした。油断した体はゴロンとあっけなくテーブルから転がり落ちる。ガツリと鈍い音が聞こえたが気にしない。
急いで脱がされた服を拾うとそのままドアにダッシュした。小さなガラス越しに目が合う。
口にハンカチを詰められ、顔にあざが出来ている蜜を認めると周防は「離れろ!」と命令した。
何をするのかと思うとドアにタックルを仕掛けたのだ。ドーンと激しい音がしてノブがガタガタと揺れた。
何度も繰り返す。
小石川が言っていた話を思い出した。
周防は激しいタックルをくらって大けがを負ったと。なのに今、蜜を助けようとドアを相手に体当たりをくらわしている。
また怪我をしてしまったらどうしようと蜜は止めてと声にならない叫びをあげた。
もうこれ以上体を痛めつけないで。
何度も繰り返す衝撃に鈍い音がして、ノブが外れた。
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