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第三章 sugar sugar honey

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 ゴクリと喉が鳴った。
 普段は健康そのもの爽やか好青年という風情なのに、こういう時の周防はかなり艶めかしい。どこにそんなエロさを隠していたんだと叫びたいくらいに。

 指を伸ばして画面越しに触れると甘い息を漏らす。

「先生やらしい」

「蜜が悪い。ほら、蜜も見せて」

 誰もいないのに周りをきょろきょろと見渡した。耳をそばだてて足音がしないことを確認する。こんなところを見られたらマズイと思うのに画面の周防に釘づけになる。
 
「ほんとに脱ぐんですか?」

「見せて」

 覚悟を決めて上を脱いだ。恥ずかしくて電気を消したら真っ暗になってしまって怒られた。ベッドのヘッドライトをつけると淡い光に照らされて却っていやらしくなってしまった。

「あ~蜜に触りてーなあ」

 画面越しに撫でられた。
 直接触られたわけじゃないのにゾクリと背筋が粟立った。周防の指を体は覚えているのだ。与えられる快感を知っている。

「胸触ってもいい?」

「……ん」

 ここに周防はいないのに、触っているのは自分の指なのに興奮して息が上がってしまう。まるで周防が画面から出てきて触れているかのようだ。

「可愛いなあ。気持ちよくなってきた?」

「ん。先生も?」

「俺も気持ちいい」

 そういう周防も興奮しきった顔をしていた。触れたくて指を伸ばす。
 硬質なガラスに阻まれているのに指先から何かが出ているように通じ合っていた。互いの肌が感じられるようだった。

「もうやばいくらいなんだけど」

 周防の動きから自分の下半身を触っていることが分かった。蜜のそれもさっきから痛いくらいで下着を汚している。

「……ぼくも、」

 夢中になって下着の中に手を入れた。すっかりと起ちあがっている性器の先端はぬるぬるとしていて、こするとはしたなく汁を零した。

「あっ、せんせ、っい、」

「濡れてる?」

「や、聞かないで……気持ちいい。先生に触りたい。あ、ああっ」

 誰も入ってこない保証はないのに止められなかった。声を押し殺しながら何度も上下にこすった。腹の奥から欲望が湧き上がってくる。
 ぐちゅぐちゅといやらしい音が聞こえてしまいそうだ。

「俺も蜜に触りたい。あちこちキスして舐めまくりたい」

「っ、そんなこと、言わないで」

 想像してしまう。
 周防の唇の感触を。なめらかな舌を。蜜を翻弄し何度も高みへと連れて行ってくれる周防の熱を。

「あ、ああっ、先生」

「やばい。出そう、蜜も一緒にイく?」

「ん、んんんっ、も、」

「蜜、顔見せて。好き」

 画面越しに目を合わせた瞬間、欲望が爆ぜた。ビクビクと体を震わせながら視線をはずせない。
 熱に浮かれたように染まる頬にキスをしたかった。赤く濡れて開いた唇に触れたかった。
 今すぐ抱き合いたかった。

 ベタベタに汚れた手には欲望の残滓が残っている。
 お互いにゴソゴソと処理をして、さて、と仕切り治すのもなんとも間抜けすぎる。
 
「そういうわけで、合格おめでとう」

「ありがとうございます、って言えばいいの先生?」

 呆れるようなおかしいような、なんともいえない空気。
 だけどスッキリしたせいかさっきまでのモヤモヤが吹っ切れたような気もする。
 大学に合格したんだと実感が押し寄せてきた。

「やった」

 思わず呟くと周防はおかしそうに笑った。

「やったな」

「うん、先生、ぼく合格した!」

「そうだ。蜜は合格した。おめでとう、よくがんばったな」

 推薦だからと後ろめたい気持ちでいるのは他のみんなにも失礼だ。これも実力、蜜が今まで頑張ってきたから掴めたことだ。
 それがようやく腑に落ちた。

「先生ってすごいね。さっきまで少しモヤモヤしてたのが吹っ切れたみたい」

「そっか、それはよかったな」

 もしかして蜜のモヤモヤを解消するためにあんなやらしいことをしたんだろうか? 聞けば「あ、そうそう、それ」と嘘っぽい答えが返ってきた。やっぱ違うか。

 でもいい。
 蜜の進学先は決まって、周防のことは大好きだ。それだけは間違いじゃない。
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