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序章
虚像干渉
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「なあ、難波。どうやって勉強をしてるんだ?」
「どうって、普通に……」
難波は簡単にそう答えた。そして、再びノートに目を戻し、黙々と手を動かし始めた。
「普通って……お前の普通が分からんのだけど」
少し笑みを浮かべて問いかけた。
「そうやな、しいて言うなら、したい教科をとことんして、残った教科は何時間って時間を決めてやるだけや。ほないに変わったことはしてない。志桜里はどうなん? 俺より勉強できるやん、どうやって勉強しとん」
俯いたままの難波が問いかけた。話しかける時も、ノートの上を動く手は休めることをしなかった。話しかけられた志桜里でさえ、ノートの上を走るペンは止まらなかった。
「私は時間を決めて毎日しっかりしてるよ。でも、勉強時間は少ない方だと思うよ。一日二時間ぐらいしかしてないもん」
志桜里も簡単に毎日勉強をするのが当たり前のように答えた。
「そっか……。まあ、がんばろ」
「そうだね。がんばろ」志桜里が言った。
「まあ、当たり前だな」続けて難波が言った。
沈黙の檻を破って、勉強から一時遠ざけようかと思ったが、また沈黙に逆戻りしてしまった。
いつもそうだ。誰かが沈黙を破るため話し出しても、結局は勉強の話題になってしまう。いまだ勉強の檻から抜け出せない。
そんなこともあって僕たちの学力は、全国でもトップクラスにまでなっていた。
僕が得意としていたのは化学や生物などのサイエンスである。ちなみに志桜里は数学、難波は英語である。
その得意としている化学や生物の知識などを使って、不老不死の薬の類似である薬品を作っている。
時折、数学的な事や英語など僕の許容範囲を超える要語が出てくるが、理由は伝えずに志桜里や難波に手伝って貰っている。だから、彼女たちは、僕が何かを作っているのかさえ知らない。
そう思っていた。でも、彼女たちは僕が何を作っているのか知っていた……
近頃、薬品作りが順調に進んでいた。それは、僕が過去や未来を深い眠りの中で見る夢でなくても、瞼を閉じるだけでも視れるようになっていたからだ。
僕はこの力に名前を名付けた。
虚像干渉
実際にはあり得ないことに手をだし過去や未来を変えることができる。
意味としては、あり得ないことを虚像として、さらに手を出すことを干渉と呼ぶことにした。
しかし、この虚像干渉の力が巨大化して、知らない方が良かった重大な秘密を知ってしまうことを、僕はまだ知る由もなかった。何故なら不老不死の薬を作るために未来と現在を行き来していて周りに目がいっていなかった。
夢以外でも視られるようになったからか、僕は今まで以上に体力を消耗するようになっていた。さらに、行きたい未来に確実に行けるわけではなく、何度も力を使わないといけなかった。
何度も繰り返しているうちに体が持たなくなってきた。体の負担が大きくなるたびに不老不死の薬は完成に近づいてきたが、どうしても、未来の研究道具までは真似をすることができなかった。
それから二週間後、なんとか薬は完成したが、未来にある研究道具が真似できない以上、真の完成とは言えなかった。
「まあ、できたことだし、とりあえず飲んでみるか」
僕は完成したばかりの薬を口に含み水を注いだ。飲んですぐに効果が出るのかを確かめたいが、万が一成功していなく、体を傷つけて死んでしまっては元も子もない。
「これじゃあ、確かめようがないな。未来ではどうやって確かめていたんだろう」
僕はそれを確認するために未来を視た。
未来では薬を飲んだ後、血液採取をしてDNAが特殊になっているのかを確かめるのだが、生憎その機械は今の世界では作ることができなかった。
「どうしようか……」
虚像干渉を使うために瞼を閉じたわけではなかったが、僕は未来にいた。
未来から戻ってきた僕は、志桜里とある場所へ向かうことにしたた。
そこは僕たちの住んでいる町で、一番評判のいい病院だった。病院の名前は難波病院といって、医院長は難波がしていた。彼は高校を卒業後、二年間アメリカに医学を学ぶために留学していた。アメリカから戻ってきた彼は、たった一年で、この町の病院で一番多くの患者を受け入れるほどの実力を身に付けて戻ってきた。そしてそのすべての患者を治し、かつ退院させることで腕の技術までも披露した。
そんなこともあって、もし僕が体を傷つけ、不老不死になっていなく瀕死の状態になっても必ず助けられるという自信があった。しかも、不老不死の薬は難波にも作るのを手伝って貰ったため、もし失敗しても理由を説明しやすいという安心感があった。
難波以外に僕を治せる医者はこの世界にはいないだろう。
そんな微かな期待を胸に秘め、車内に響いていた音楽を止めた。
「志桜里……」
助手席にいる志桜里は不安を隠せないのか、顔を下に向けていた。
続けて僕は「もし僕に何かあったら、子供のこと頼むな」
そう言って、僕は確実な答えを導くために自分の心臓に躊躇なく包丁を突き刺した。痛みを感じたが、すぐに僕は目を覚ました。少しの間身体中に激痛が走ったていたが、実験は成功しているようだった。
心臓を刺したせいか、呼吸をするのも苦しかった。
「ついに完成したぞ、これで僕は不老不死なったんだ。さあ、志桜里も飲んで」
僕は志桜里にも薬を手渡した。
始め不老不死になることを志桜里は少し拒んでいた。これからの人生を決める一大決心をするのだから、拒み、考えるのは無理もない。それでも、僕と一緒に生きていくことを選んだ志桜里は薬を飲んでくれた。そして、志桜里も死ぬことなく無事成功に終わった。
「後は難波だけか」
病院の目の前にいた僕はすぐに薬を持って走った。
しかし、そこに難波の姿はなかった……
「どうって、普通に……」
難波は簡単にそう答えた。そして、再びノートに目を戻し、黙々と手を動かし始めた。
「普通って……お前の普通が分からんのだけど」
少し笑みを浮かべて問いかけた。
「そうやな、しいて言うなら、したい教科をとことんして、残った教科は何時間って時間を決めてやるだけや。ほないに変わったことはしてない。志桜里はどうなん? 俺より勉強できるやん、どうやって勉強しとん」
俯いたままの難波が問いかけた。話しかける時も、ノートの上を動く手は休めることをしなかった。話しかけられた志桜里でさえ、ノートの上を走るペンは止まらなかった。
「私は時間を決めて毎日しっかりしてるよ。でも、勉強時間は少ない方だと思うよ。一日二時間ぐらいしかしてないもん」
志桜里も簡単に毎日勉強をするのが当たり前のように答えた。
「そっか……。まあ、がんばろ」
「そうだね。がんばろ」志桜里が言った。
「まあ、当たり前だな」続けて難波が言った。
沈黙の檻を破って、勉強から一時遠ざけようかと思ったが、また沈黙に逆戻りしてしまった。
いつもそうだ。誰かが沈黙を破るため話し出しても、結局は勉強の話題になってしまう。いまだ勉強の檻から抜け出せない。
そんなこともあって僕たちの学力は、全国でもトップクラスにまでなっていた。
僕が得意としていたのは化学や生物などのサイエンスである。ちなみに志桜里は数学、難波は英語である。
その得意としている化学や生物の知識などを使って、不老不死の薬の類似である薬品を作っている。
時折、数学的な事や英語など僕の許容範囲を超える要語が出てくるが、理由は伝えずに志桜里や難波に手伝って貰っている。だから、彼女たちは、僕が何かを作っているのかさえ知らない。
そう思っていた。でも、彼女たちは僕が何を作っているのか知っていた……
近頃、薬品作りが順調に進んでいた。それは、僕が過去や未来を深い眠りの中で見る夢でなくても、瞼を閉じるだけでも視れるようになっていたからだ。
僕はこの力に名前を名付けた。
虚像干渉
実際にはあり得ないことに手をだし過去や未来を変えることができる。
意味としては、あり得ないことを虚像として、さらに手を出すことを干渉と呼ぶことにした。
しかし、この虚像干渉の力が巨大化して、知らない方が良かった重大な秘密を知ってしまうことを、僕はまだ知る由もなかった。何故なら不老不死の薬を作るために未来と現在を行き来していて周りに目がいっていなかった。
夢以外でも視られるようになったからか、僕は今まで以上に体力を消耗するようになっていた。さらに、行きたい未来に確実に行けるわけではなく、何度も力を使わないといけなかった。
何度も繰り返しているうちに体が持たなくなってきた。体の負担が大きくなるたびに不老不死の薬は完成に近づいてきたが、どうしても、未来の研究道具までは真似をすることができなかった。
それから二週間後、なんとか薬は完成したが、未来にある研究道具が真似できない以上、真の完成とは言えなかった。
「まあ、できたことだし、とりあえず飲んでみるか」
僕は完成したばかりの薬を口に含み水を注いだ。飲んですぐに効果が出るのかを確かめたいが、万が一成功していなく、体を傷つけて死んでしまっては元も子もない。
「これじゃあ、確かめようがないな。未来ではどうやって確かめていたんだろう」
僕はそれを確認するために未来を視た。
未来では薬を飲んだ後、血液採取をしてDNAが特殊になっているのかを確かめるのだが、生憎その機械は今の世界では作ることができなかった。
「どうしようか……」
虚像干渉を使うために瞼を閉じたわけではなかったが、僕は未来にいた。
未来から戻ってきた僕は、志桜里とある場所へ向かうことにしたた。
そこは僕たちの住んでいる町で、一番評判のいい病院だった。病院の名前は難波病院といって、医院長は難波がしていた。彼は高校を卒業後、二年間アメリカに医学を学ぶために留学していた。アメリカから戻ってきた彼は、たった一年で、この町の病院で一番多くの患者を受け入れるほどの実力を身に付けて戻ってきた。そしてそのすべての患者を治し、かつ退院させることで腕の技術までも披露した。
そんなこともあって、もし僕が体を傷つけ、不老不死になっていなく瀕死の状態になっても必ず助けられるという自信があった。しかも、不老不死の薬は難波にも作るのを手伝って貰ったため、もし失敗しても理由を説明しやすいという安心感があった。
難波以外に僕を治せる医者はこの世界にはいないだろう。
そんな微かな期待を胸に秘め、車内に響いていた音楽を止めた。
「志桜里……」
助手席にいる志桜里は不安を隠せないのか、顔を下に向けていた。
続けて僕は「もし僕に何かあったら、子供のこと頼むな」
そう言って、僕は確実な答えを導くために自分の心臓に躊躇なく包丁を突き刺した。痛みを感じたが、すぐに僕は目を覚ました。少しの間身体中に激痛が走ったていたが、実験は成功しているようだった。
心臓を刺したせいか、呼吸をするのも苦しかった。
「ついに完成したぞ、これで僕は不老不死なったんだ。さあ、志桜里も飲んで」
僕は志桜里にも薬を手渡した。
始め不老不死になることを志桜里は少し拒んでいた。これからの人生を決める一大決心をするのだから、拒み、考えるのは無理もない。それでも、僕と一緒に生きていくことを選んだ志桜里は薬を飲んでくれた。そして、志桜里も死ぬことなく無事成功に終わった。
「後は難波だけか」
病院の目の前にいた僕はすぐに薬を持って走った。
しかし、そこに難波の姿はなかった……
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