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優しい人・第6話
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第6話
あれからまたガンガン飲んだ志賀は正体不明だ。
放置された志賀のスマホは、後で返してやろう、とカウンターの端に置き、仲間の話しの輪に入ったら、美人の萌花も、意識の外に消えていった。
「今日貸し切りにしてくれたん?」
倉本に言われ、我に還ると、そう言や、何で今日は客が来ないんだ??と、ちょっと現実が戻る。
千佳史の店は、有難いことに、かなり忙しい。
三宮は最近では食べ物屋はまた別だが、飲み屋は景気が悪く、閉店する店が相次ぎ、例外は置いといて、大概、儲かっているのは立ち飲みレベルの安い居酒屋かバー、逆に座るだけでン万円、というハイクラスのクラブ、後は飲食以外に趣向を凝らした店という話しだ。
《千流》のようなバー、それとスナックと言われる種類の飲み屋は、かなり厳しい経営状況というのが実情。
それが判っていたので、とにかく開店前の宣伝に力を入れた。
賭けだったが、最初からミックスバーとしてフリーペーパーに載せてもらい、ホームページを作り、けっこうな金を払ってトップに出るようにして、開店半年前から宣伝した。
電話番号を乗せていたので
「ミックスバーってなんですか?」
という問い合わせが相次ぎ、ホームページの問い合わせボックスには、酷い中傷もかなりの数、届いた。
やっぱりミックスバーという文言を消そうか、と考えたこともあったが、LBGTであるということだけで疎んじられることに、どうしようもない怒りのようなものもあり、負ける気がして消すのを止めた。
そして蓋を開けたら、開店以来、坊主はもちろん皆無だし、カウンター8席、ボックス2席とキャパが少ないせいもあるが、最低でも3回転はする。
12時からはバイトの來人(らいと)が来るが、7~12時は一人で走り回る。
どうしようもない時は、常連で勝手知ったる…の客がカウンターに入ってくれることもある。
だが大抵は、ボトルとミネラル、アイスボックスにマドラーを差し込んだセットさえ出していれば、酒は、客が自分でつくって飲んでくれるし、カクテルやビールの人もあまりいないので、それでいけるのだ。
アテは乾き物だけ。
レーズンバターとスルメとチーズくらいはあるが、ほぼ出ない。お腹が空いたら、食べ物屋から出前を取る。
「おはよっすー」
來人がやってきた。
「千佳史さん、表、看板消えてますよ?」
―オーマイガッ!
「それでか!」
思わず千佳史が叫ぶ。
「点けて点けて!」
慌てて來人に看板に点灯してもらうと
「ちょっと、チカちゃん!どないしたん?!」
「もー、休みか思たー!!」
「電話出ろ、っつーの!」
等々、心配したり、文句をブーブー言いながらの客が次々来店し、30分でカウンターは満席だ。
時刻はジャスト深夜12時。
「ごめん、ごめーん!ほんま、すんません!」
ペコペコ頭を下げながら、1杯目を作っていく。
志賀のことで頭も胸も一杯で、萌花スマホばっかり気になって、自分のスマホはマナーモードにしたまんま、端っこに放置で、見もしていなかった…!
「濃くなってきたから帰るわ。金、倉本に渡したから。後で纏めて貰ってな」
と、常深と有田が腰を上げた。
「すみません、ありがとうございます」
来店3度目の常深が、気を遣ってくれて
「もうええで?中におり。また来るから」
と、千佳史の送りを断る。
正直、助かる!
今日の失態はヤバイ。
「ありがとうございましたー!!」
常深の言葉に甘えて、2人にカウンターの中から声をかけ、送らせてもらった。
今から迷惑かけた分を取り戻さなければならない。
「俺らも、もうちょっとしたら帰るわ。あのアホだけ置いといてええな?」
倉本が志賀を顎で指した。
「あ、ああ…」
ボックスを見ると、多分、もう泥酔の志賀が、頭を振りながらまだ、グラスを握っている。
―帰るな…志賀…
念を送る。
そして、暫く仕事に集中した。
カウンターでは
「別れた…」
と、アパレルメーカーのショップ店員、颯斗(はやと)が涙を零す。
颯斗は綺麗な子だけど、彼氏は年上のバイで家庭持ちだ。
最初にここに彼を連れて来た時から、千佳史には先が見えていた。
颯斗がトイレに立つと、早速千佳史の手を握ってきて、手の平を擽るような男だったから。
「颯斗、終わる、ってことは、颯斗には必要ない人、ってことやで?明日はビックリするくらい、ええ男に会えるよ、きっと」
「明日なんか要らん。義則さんがええ。あの人呼んで?なあ、マスター」
「よし、じゃあ、颯斗には、これあげよ!はい!声出して読んでー」
「…ん…えと…気張っても(きばっても)…24時間…ズズ…泣けませんー…ぅぅ…うー…
もう…マスター…」
「はい、もう1回!皆で!來人もな」
「ラジャ!」
來人が手を挙げる。
「気張っても 24時間 泣けませんっ!」
「ハハハッ…」
「アハハ…」
「ワロター!はい!泣きの時間18分でした~」
涙で濡れた颯斗の頬をグニグニーっと揉む。
「もう…じゃあさ、マスター今日抱いてよぉ」
「え?!俺?ええよ~?逃げんなよ~」
「キャハハ…ッ」
そんなこと言いながら、千佳史はバリネコだ。
タチの経験は一度もない。
逆に來人はバイのバリタチ。
今日は來人に振るか…等と考えていると
「ここで寝とけ、って!」
倉本の声がした。
見ると、志賀が立ち上がっている。
―ダメ、かぁ……
念は効かなかったようで、思ったより落胆してしまう。
「いや、迷惑なんで!自分は帰りまっす!帰るっ!」
と敬礼し、財布から1万円札を抜いて
「御馳走様でした!」
とまた敬礼をする志賀。
フラフラだ。
せめて送ろう、とカウンターから出た。
俺を見た志賀は、いきなり
「あ!蘭奈っ!蘭奈ぁー」
と、唇を尖らせて迫ってきた。
近づいてくる、顔…
……ッ
思わず、避けて俯き、到着したのは志賀の胸。
「ギュー!」
今度は無邪気に抱きしめられ、心臓がヤバイ。
―志賀ッ、志賀…好き…大好き……
「止めてくれる?」
聞き慣れた声。
草介だ。
静かな声とは裏腹に、強い力で志賀と引き離され、慣れた腕の中に収まる。
ポカンとした志賀は
「すいません」
と謝ったものの、何故か
「え、誰ですか?」
等と、呂律の回らない舌で聞いてきた。
千佳史が答える前に、草介が志賀に向き合った。
「ただのマスターファンですよ?でも、初めて見るお兄さんに、そんな厚かましいことされたら、ちょっと頭に来るな、っていう者です」
「あ…ああ…そう…」
ワケがわからない感じの志賀は
「んじゃ!」
と手を挙げて、店のドアを開けた。
解っちゃいるが、あまりにも平然とした感じに、やはり傷つく。
「お、おいおい!ちょー待て!待てっって!チカ、その志賀ので取っといて!明日、志賀に返すから!先輩らから預かっとんはテーブルに置いてる!メッチャ飲んだし、足りん分は明日精算するし!電話するわな!」
と、倉本が志賀を追って行った。
「マスター、今の何?!」
「誰、あれ!!」
ドアが閉まると一斉に客が騒ぎ出した。
酔った客のキスなど、日常茶飯事。
「こらこらこら、これ、1番高いよ?500万円!」
等と冗談で日に何回躱すことか。
それが、あの乙女のような反応。
客が騒ぐのも無理はない。
「いやいや、全く違う世界の子やから、ちょっと予想外の攻撃やっただけやん」
と苦しい言い訳して、カウンターに戻り、話題を変えた。
嵐のような時間だった。
14年ぶりの再会に、心臓が跳ね、だが、志賀の爆弾発言で振り回され、そうこうしてたら志賀は正体不明に酔っ払い、別の意味で振り回した挙句、呆気なくバイバイ、だ。
―何かちょっとムカつくなぁ…
と思いながらも、その日の仕事を終え、今日は疲れすぎた、と草介の誘いも断り、店を閉めた。
來人は
「こいつ、もっかい啼かせてきますわ~」
と、颯斗を連れて帰ってくれた。
「何っか…メッチャ疲れたし。…はぁ…終わったなー」
深い溜息と共に、何となくやはり…悲しい…
もう、会えんのやろなぁ……と思った時
ピピピピッ…
ピピピピッ…
いきなり音がして飛び上がる。
志賀のスマホだ。
「あ!」
“萌花”だ。
「そうやった!」
一瞬、躊躇したが、まあ、携帯を忘れてることくらい伝えてもいいか…と通話を押した。
「あっちゃん?出てくれた!…ごめんなさいっ!話し、聞いて?もしもし?あっちゃん?」
―あっちゃんかぁ……綺麗な声…。女性らしい、柔らかい…
「あっちゃん?怒ってるやんね…」
「すみません!僕、あっちゃん、ちゃいます」
「え?え、あの…すみません、私」
「いや、これ、彼の携帯ですから。うちに、飲みに来られて忘れて帰りはって」
「ああ…あ、そうなんですか…」
「はい。お知り合いの方ですか?」
「はい…まあ…あの、あの!それ、私、取りに行きます!」
「今からですか?!」
「あ、はい…あの、ご…迷惑…ですよね、そりゃ…」
「い、いや…迷惑ということは…」
「よろしいでしょうか?お願いします…」
「あ、じゃあ…あの、東門ご存知ですか?」
「はい」
「それ北に抜けて、山幹渡って2つ目の角を…」
店の場所を言って電話を切った。
「ふう…」
コーラを入れて、カウンターに座る。
「何か、変なことなったなあ…。志賀の婚約者…会いたないなぁ……」
千佳史は、蘭奈~、蘭奈~としつこくしていたクセに、草介に阻まれてアッサリ帰って行った志賀を思い出して溜息をつく。
「これでもか!…ってか…?あ~あ……コーラうま!」
意味もなく大きな声を出して、自分に気合いを入れた。
あれからまたガンガン飲んだ志賀は正体不明だ。
放置された志賀のスマホは、後で返してやろう、とカウンターの端に置き、仲間の話しの輪に入ったら、美人の萌花も、意識の外に消えていった。
「今日貸し切りにしてくれたん?」
倉本に言われ、我に還ると、そう言や、何で今日は客が来ないんだ??と、ちょっと現実が戻る。
千佳史の店は、有難いことに、かなり忙しい。
三宮は最近では食べ物屋はまた別だが、飲み屋は景気が悪く、閉店する店が相次ぎ、例外は置いといて、大概、儲かっているのは立ち飲みレベルの安い居酒屋かバー、逆に座るだけでン万円、というハイクラスのクラブ、後は飲食以外に趣向を凝らした店という話しだ。
《千流》のようなバー、それとスナックと言われる種類の飲み屋は、かなり厳しい経営状況というのが実情。
それが判っていたので、とにかく開店前の宣伝に力を入れた。
賭けだったが、最初からミックスバーとしてフリーペーパーに載せてもらい、ホームページを作り、けっこうな金を払ってトップに出るようにして、開店半年前から宣伝した。
電話番号を乗せていたので
「ミックスバーってなんですか?」
という問い合わせが相次ぎ、ホームページの問い合わせボックスには、酷い中傷もかなりの数、届いた。
やっぱりミックスバーという文言を消そうか、と考えたこともあったが、LBGTであるということだけで疎んじられることに、どうしようもない怒りのようなものもあり、負ける気がして消すのを止めた。
そして蓋を開けたら、開店以来、坊主はもちろん皆無だし、カウンター8席、ボックス2席とキャパが少ないせいもあるが、最低でも3回転はする。
12時からはバイトの來人(らいと)が来るが、7~12時は一人で走り回る。
どうしようもない時は、常連で勝手知ったる…の客がカウンターに入ってくれることもある。
だが大抵は、ボトルとミネラル、アイスボックスにマドラーを差し込んだセットさえ出していれば、酒は、客が自分でつくって飲んでくれるし、カクテルやビールの人もあまりいないので、それでいけるのだ。
アテは乾き物だけ。
レーズンバターとスルメとチーズくらいはあるが、ほぼ出ない。お腹が空いたら、食べ物屋から出前を取る。
「おはよっすー」
來人がやってきた。
「千佳史さん、表、看板消えてますよ?」
―オーマイガッ!
「それでか!」
思わず千佳史が叫ぶ。
「点けて点けて!」
慌てて來人に看板に点灯してもらうと
「ちょっと、チカちゃん!どないしたん?!」
「もー、休みか思たー!!」
「電話出ろ、っつーの!」
等々、心配したり、文句をブーブー言いながらの客が次々来店し、30分でカウンターは満席だ。
時刻はジャスト深夜12時。
「ごめん、ごめーん!ほんま、すんません!」
ペコペコ頭を下げながら、1杯目を作っていく。
志賀のことで頭も胸も一杯で、萌花スマホばっかり気になって、自分のスマホはマナーモードにしたまんま、端っこに放置で、見もしていなかった…!
「濃くなってきたから帰るわ。金、倉本に渡したから。後で纏めて貰ってな」
と、常深と有田が腰を上げた。
「すみません、ありがとうございます」
来店3度目の常深が、気を遣ってくれて
「もうええで?中におり。また来るから」
と、千佳史の送りを断る。
正直、助かる!
今日の失態はヤバイ。
「ありがとうございましたー!!」
常深の言葉に甘えて、2人にカウンターの中から声をかけ、送らせてもらった。
今から迷惑かけた分を取り戻さなければならない。
「俺らも、もうちょっとしたら帰るわ。あのアホだけ置いといてええな?」
倉本が志賀を顎で指した。
「あ、ああ…」
ボックスを見ると、多分、もう泥酔の志賀が、頭を振りながらまだ、グラスを握っている。
―帰るな…志賀…
念を送る。
そして、暫く仕事に集中した。
カウンターでは
「別れた…」
と、アパレルメーカーのショップ店員、颯斗(はやと)が涙を零す。
颯斗は綺麗な子だけど、彼氏は年上のバイで家庭持ちだ。
最初にここに彼を連れて来た時から、千佳史には先が見えていた。
颯斗がトイレに立つと、早速千佳史の手を握ってきて、手の平を擽るような男だったから。
「颯斗、終わる、ってことは、颯斗には必要ない人、ってことやで?明日はビックリするくらい、ええ男に会えるよ、きっと」
「明日なんか要らん。義則さんがええ。あの人呼んで?なあ、マスター」
「よし、じゃあ、颯斗には、これあげよ!はい!声出して読んでー」
「…ん…えと…気張っても(きばっても)…24時間…ズズ…泣けませんー…ぅぅ…うー…
もう…マスター…」
「はい、もう1回!皆で!來人もな」
「ラジャ!」
來人が手を挙げる。
「気張っても 24時間 泣けませんっ!」
「ハハハッ…」
「アハハ…」
「ワロター!はい!泣きの時間18分でした~」
涙で濡れた颯斗の頬をグニグニーっと揉む。
「もう…じゃあさ、マスター今日抱いてよぉ」
「え?!俺?ええよ~?逃げんなよ~」
「キャハハ…ッ」
そんなこと言いながら、千佳史はバリネコだ。
タチの経験は一度もない。
逆に來人はバイのバリタチ。
今日は來人に振るか…等と考えていると
「ここで寝とけ、って!」
倉本の声がした。
見ると、志賀が立ち上がっている。
―ダメ、かぁ……
念は効かなかったようで、思ったより落胆してしまう。
「いや、迷惑なんで!自分は帰りまっす!帰るっ!」
と敬礼し、財布から1万円札を抜いて
「御馳走様でした!」
とまた敬礼をする志賀。
フラフラだ。
せめて送ろう、とカウンターから出た。
俺を見た志賀は、いきなり
「あ!蘭奈っ!蘭奈ぁー」
と、唇を尖らせて迫ってきた。
近づいてくる、顔…
……ッ
思わず、避けて俯き、到着したのは志賀の胸。
「ギュー!」
今度は無邪気に抱きしめられ、心臓がヤバイ。
―志賀ッ、志賀…好き…大好き……
「止めてくれる?」
聞き慣れた声。
草介だ。
静かな声とは裏腹に、強い力で志賀と引き離され、慣れた腕の中に収まる。
ポカンとした志賀は
「すいません」
と謝ったものの、何故か
「え、誰ですか?」
等と、呂律の回らない舌で聞いてきた。
千佳史が答える前に、草介が志賀に向き合った。
「ただのマスターファンですよ?でも、初めて見るお兄さんに、そんな厚かましいことされたら、ちょっと頭に来るな、っていう者です」
「あ…ああ…そう…」
ワケがわからない感じの志賀は
「んじゃ!」
と手を挙げて、店のドアを開けた。
解っちゃいるが、あまりにも平然とした感じに、やはり傷つく。
「お、おいおい!ちょー待て!待てっって!チカ、その志賀ので取っといて!明日、志賀に返すから!先輩らから預かっとんはテーブルに置いてる!メッチャ飲んだし、足りん分は明日精算するし!電話するわな!」
と、倉本が志賀を追って行った。
「マスター、今の何?!」
「誰、あれ!!」
ドアが閉まると一斉に客が騒ぎ出した。
酔った客のキスなど、日常茶飯事。
「こらこらこら、これ、1番高いよ?500万円!」
等と冗談で日に何回躱すことか。
それが、あの乙女のような反応。
客が騒ぐのも無理はない。
「いやいや、全く違う世界の子やから、ちょっと予想外の攻撃やっただけやん」
と苦しい言い訳して、カウンターに戻り、話題を変えた。
嵐のような時間だった。
14年ぶりの再会に、心臓が跳ね、だが、志賀の爆弾発言で振り回され、そうこうしてたら志賀は正体不明に酔っ払い、別の意味で振り回した挙句、呆気なくバイバイ、だ。
―何かちょっとムカつくなぁ…
と思いながらも、その日の仕事を終え、今日は疲れすぎた、と草介の誘いも断り、店を閉めた。
來人は
「こいつ、もっかい啼かせてきますわ~」
と、颯斗を連れて帰ってくれた。
「何っか…メッチャ疲れたし。…はぁ…終わったなー」
深い溜息と共に、何となくやはり…悲しい…
もう、会えんのやろなぁ……と思った時
ピピピピッ…
ピピピピッ…
いきなり音がして飛び上がる。
志賀のスマホだ。
「あ!」
“萌花”だ。
「そうやった!」
一瞬、躊躇したが、まあ、携帯を忘れてることくらい伝えてもいいか…と通話を押した。
「あっちゃん?出てくれた!…ごめんなさいっ!話し、聞いて?もしもし?あっちゃん?」
―あっちゃんかぁ……綺麗な声…。女性らしい、柔らかい…
「あっちゃん?怒ってるやんね…」
「すみません!僕、あっちゃん、ちゃいます」
「え?え、あの…すみません、私」
「いや、これ、彼の携帯ですから。うちに、飲みに来られて忘れて帰りはって」
「ああ…あ、そうなんですか…」
「はい。お知り合いの方ですか?」
「はい…まあ…あの、あの!それ、私、取りに行きます!」
「今からですか?!」
「あ、はい…あの、ご…迷惑…ですよね、そりゃ…」
「い、いや…迷惑ということは…」
「よろしいでしょうか?お願いします…」
「あ、じゃあ…あの、東門ご存知ですか?」
「はい」
「それ北に抜けて、山幹渡って2つ目の角を…」
店の場所を言って電話を切った。
「ふう…」
コーラを入れて、カウンターに座る。
「何か、変なことなったなあ…。志賀の婚約者…会いたないなぁ……」
千佳史は、蘭奈~、蘭奈~としつこくしていたクセに、草介に阻まれてアッサリ帰って行った志賀を思い出して溜息をつく。
「これでもか!…ってか…?あ~あ……コーラうま!」
意味もなく大きな声を出して、自分に気合いを入れた。
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