優しい人

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優しい人・第19話

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萌花と会ってから3日が過ぎた。

朝、7時頃から、何度も滝のスマホの着信がなり、滝が通話を押し、耳に当てても喋らないので、不審に思って聞くと、無言電話で3日前からなのだと言う。

萌花が電話番号を知っているかと聞くと、篤仁の携帯を預かる、と始めて店に来た時、携番を記載してある名刺を渡した、と。

「嫌がらせはよくあるから、萌花さんじゃない」
と滝は言ったが、篤仁は萌花だと確信していた。

最後に見た萌花の顔と、背中で聞いた捨て台詞…
いかにも無言電話が似合いそうだ―



「院長、長谷川さん、受付時間ちょっと過ぎるけどいいですか?、って連絡」
「断れ」

「…え?」
「昨日話したやろ?実行せえ。特にあの人はもう何回目や?断れ。どうしてもやったら、時間外貰います、って言え。キリない」

「僕、しますけど…」

「あんなぁ、今いてはる患者さんだけでも終わったら9時過ぎるぞ?うちの普通診療、7時半までやぞ?お前9時15分から予約の患者受けとんちゃうんかい。その人待たすんか?時間守れん患者の為に?断れ」

「…解りました。もしもし?長谷川さん?ああ、すみません、今日は…」

―昨日断る、って決めたとこやろがッ…

受付時間に間に合わない患者を、受け入れていたらキリがない。

前は萌花に任せていて、うまい具合にいっていた。

萌花が抜けてから、少しくらいなら、と遅刻患者を受付のスタッフが受け入れるから、どんどんエスカレートして、午後診の患者の最終が22時を過ぎることもあった。

これでは、保険外予約の患者を待たせることになってしまう。

それは絶対に困るので、今後は受付時間を1分でも過ぎたらアウト、ということにしたのだ。

「ちゃんと言うたか?」
電話を終えて、施術室に戻って来た植野に声をかける。

「…はい。けど」
「けど?何や」
「橋本先生がおった時の方が良かった、融通が利いた、お前すいません、出来ませんしか言葉知らんのか、言い方が悪い、って怒られてしまいました。後…」

「後、何や?」
「もうええわ、よそ行く、と…すみませんっ!」

「ええわ。かまへん」
「院長…」

「ええ、言うとうやろ?仕事せえ」
「はい!すみませんでしたっ」

植野は受付カウンターに走って行った。

確かに萌花は患者捌きがすごかった。

施術をしながらなのに、待ち合い室が押し合いへし合いの時も、誰が先だ後だと、誰も文句を言うのを聞いたことがないほど、皆に公平で、満足を与えた。

今のような時は、受付時間過ぎは、2~3分しか待てないから大急ぎだけど、保険外の予約治療なら、ちょっと高いけど22時まで受け付けてるし、ゆっくり来られて、全身充分、施術受けられますよ、気持ちいいですよーと勧めたり、保険範囲内でしか、という患者には、時間外300円、かかっちゃうけど、30分遅れまでOKだから、お茶飲んで来られるんちゃう?とジョークっぽく言ったりしていた。

すると、魔法の様にみんな、すんなり萌花の示した方法に従い
「じゃあそれで」
となるのだった。

萌花がいなくなってから、受付関係で患者のクレームが午前診・午後診合わせて、毎日5~6件はある。

患者同士の喧嘩も増えた。

萌花がいる時は、診療所全体が明るく柔らかい空気に包まれ、皆が冗談を言い合い、待っている人も楽しそうだったのに…

腹立たしい。

篤仁が受付に立てればいいが、それは物理的に不可能だ。
どうしても受付は、治療が未熟な者で回す感じになる。

いっそ受付だけをする女性でも雇おうと、先週から面接を始めているが、ピンとくる者が来ない。

その日帰路に着いたのは23時だった。

実家の北区に比べたら、滝の家は本当に近くて助かる。
最近はもう、電車は使わずに自転車で通勤している。

《お帰り。コンロの上の土鍋に3分くらいでいいから火を入れて食べてな。後、冷蔵庫にもビールの横に2品あり・千佳史》

滝は、ラインもあるのに何故か、ご飯のことはメモ用紙にお手紙形式だ。

篤仁は、それがとても気に入っている。
メモを書いている滝を想像してニヤニヤが止まらなくなる。

「は~!帰ってきたら嫌なこと、ぜ~んぶ忘れるっ!あ~あ~、滝さんが女やったら絶対結婚すんのにーー!!」
メモを抱きしめ、足をバタバタさせて喚く。

「今日は何かな~?お!鱧鍋!!It's gorgeous!!」

後は胡麻豆腐奴と、焼豚サラダだった。

「うまっ!!うんまぁ~~~~!!!」

篤仁は旨い食事で3本の缶ビールを飲み、風呂に入った。

明日は木曜で休みなので、汗を流したら《千流》に滝をお迎えがてら、飲みに行こう、と思っていたのに、風呂上りで涼みながらもう1本、ビールを飲んだらウトウトと眠ってしまった。



今日はウリ専の奏流(かなる)に、話しがあり、店を閉めたのは3時を回った。

先日、志賀のこともしつこく誘って注意をしたが、今日も千佳史のノンケ友達を駐禁グラスなのにしつこく誘い、キレられてちょっとした騒ぎになった。


片付けを終え、カウンター内で棚に凭れスマホ画面をスクロールする。

「滝です。終わりましたけど」
『お疲れさまです。伊東ビルの8階、スターダストってスナックがあるんでそこに来てください』
「用件を仰って下さい」

『来てもうたら話します、って』
「…解りました。では、もう出ますんで、10分くらいで着きます」
『りょうか~い』

・・・・・

『草介さんの店の女の子の誕生日で、花持っていかなアカン店あるから、ちょっと遅なるよ』

志賀にラインを入れるが、既読がつかない。

―寝たな。

思わず笑みが溢れる。

きっといつものように、ソファで大の字だろう……


《STARDUST》と金文字で書かれたドア。

その横の《櫂》には来たことがあるし、ここのママはバイで、《千流》も3回ほど覗いてくれた。

ドアに手をかけグッと引くが、鍵がかかっている。
あれ?と思ったら、中から鍵を外す音が聞こえた。

一瞬、緊張が走る。

―逃げるか?

だが間に合わなかった。

以外に素早くドアが開き
「どうも。どうぞ?」
人当たりのよさそうな、若い男がドアを大きく開けた。

日に焼けた逞しそうな体躯。
一見すると、爽やかな好青年といったところ。

だが、萌花を妊娠させた男…

―油断するな…

千佳史は奥歯を噛み締め、緊張を解くことなく店の中に入った。

命の危険というのを感じたことはないが、身の危険を感じたことは両手でも足りない。

「そんな怖い顔せんと。一度《古今》でお会いしてるんですよ、僕。でも、初めましてですね。御足労頂きまして…。伊川です」
「あの、今日はどういう…」

「ま、座って」
伊川は奥のボックス席を掌で示した。

中は、いたって普通のスナックだ。
カウンターが10席、ボックスが1つ。

カチャ…
施錠の音。

…え?

「あの、鍵…は…」
「ああ、いや、ここのママがね、2時以降は鍵を閉めてくれ、って言うもんでね。鍵開けてるとお客さんが来ちゃうでしょ?で、男がいると、ママの男と思われたり?」

「ああ、そ…ですか…」

―まあ、そういうことはあるか…

示されたボックスには行かず、1番ドアに近い席に座る。

鼻でふふん、と笑った伊川は、カウンターに入り、千佳史の目の前に立った。

「つきあってよ、チカちゃん」

急に、横柄になる伊川に不意を突かれる。
カウンターを挟んではいるものの、両手首を強い力で掴まれ、全身に強い緊張が走る。

「な、にすんや…ッ…」

「なんにも?」
伊川は、パッと両手を離して万歳の格好をした。

ホッとしたら、次はロックグラスを煽り、一口飲んだ…と、思ったら
「ん」
と、口を突き出して来た。

「……」

「ん」

無反応でいると、伊川は尚も口を尖らせてくる。

「……」
無視だ。

ゴクン、と口の中の酒を飲み込んだ伊川が
「口移ししよーよ。キスくらい、いいやん」

「ふざけんな」
「ふざけてはないなぁ…ま、相手は俺やないから、チューはおふざけやけどな…。今、寝とる男共、全部切って、今井さんにしぃや」
「今井?誰?何処の今井さん?ってか…、意味わからんし」

「アンタの相手、3人は知っとうで?新居チェーンの高見、県庁の富士、GDの明石ケンタロウ…。色んな男とヤリまくっとうのに志賀と同棲しとうよな?」

「…ッ同棲?!そんなんちゃうわ!志賀は中学の後輩や。ワケあって今、家に帰れんからうちにおる。おたくに説明せなあかん理由はないけど」

「ふん。へえ~…」
小馬鹿にしたように、伊川が鼻を鳴らす。

「強姦か。やっぱりな。彼女がアンタとスルとは思えん」
「いやいや。合意よ?ちょっと酔うてたけどな」

煙草に火を点けた伊川は、フーッと煙を千佳史の顔に吹きかけた。

「嘘つくな。んなわけない」

「ま、どーでもええ、そんなこと。アンタが今井さんの彼女になったら・・」
「俺は男や」
「はっ!ゲイの主張~、か?男て!ハハッ…!突っ込まれるんやから女やろ!」

怒りで体が震える。

こんな男に萌花さんは…!

―志賀、萌花さんは強姦されたんや!萌花さんと別れたらあかん…!

「話し、続けよか。アンタが今井さんの“彼女”になったら、志賀に萌花のことは、俺が100%悪い。酔った萌花にハルシオン飲ませてヤった、って白状したるわ。で、萌花に懇願されとう中絶も許したろ」

「……。今井って、本宮の今井さんか?」
「ui」
伊川のふざけた肯定が鼻につく。

今井はゲイ達の間で、鬼畜と言われる程のドSで有名だ。

―「その綺麗な顔が苦痛に歪む瞬間……ええなぁ…。チカのその人形みたいな真っ白な肌に、血の赤は似合うで~…ああ、考えただけでも勃ってくるわ…」
とニヤつく今井の顔には、いつも寒気を覚える。

「ずっと断ってる。これからも一緒や」

「ふう~ん…じゃ、あっちゃんを愛する可哀想な萌ちゃんは、自殺しちゃうかもね~」
「……ッ」

「あっちゃんに振られてから、彼女、2回自殺未遂しとんよなぁ……」

―自殺未遂……

店に来た時の萌花…。
自分を拝むようにして、志賀を引き止めるように懇願した…

昼間に会った萌花は、少し、その時よりは落ち着いていたが、何かよりほっそりとして、暗い顔をしていた。

―「私、あっちゃんがマスターんとこ通うの、何か解る」「すごい…癒される…」

やっと微笑んで言ってくれた萌花を思い出す。


千佳史は黙り込んだ。

「今井さんにOK~って連絡するよ~?ええやんな?」
「解った。その代わり・・」
「はいはい、解ってるよ~。ちゃーんと志賀にゲロします!萌花も要らん子堕ろして、はい、2人は元通り!今井さんは悲願達成で、俺は作業長昇進で給料アーップ!もっと若い女行くわ!Woo~」

「……」

「あ。チカちゃんだけ可哀想でちゅね~!でも、ええやんな!アンタ、優しいもーん!アンタのこと調べて、まあ怪盗ルパン並みに色んな人間になりすまして客やらツレやらに接触して聞いたら、み~んな口揃えて、チカ、メッチャ優しいヤツ、ってことでした~!」

「話し終わったから帰ります」

「へ?」

「じゃ」

「おーっと!」

思わぬ速さでドアに走った伊川は、千佳史の目の前に来たかと思うと、すごい力でスツールから引き摺り下ろし、押し倒した。

「な…ッ…止め…」

腹の上に大きな体で乗られて、身動きが取れない。

「あぅ……ッ」
穴が開くかと思う程、強い力で左右から頬を押され、口が開く。

何かの錠剤を投げ込まれ、伊川はマーテルをラッパ飲みし、口に含んだかと思うと、勢い良く、口移しでそれを飲ませに来た。

鼻を摘んで塞がれ、飲み込んで必死で息を吸う。

それを3回ほど繰り返すと、目が回りだした。

伊川の電話から、ずっとあったモヤモヤで、店でもいつもより飲んだので余計だったと思う。

「取り敢えず、アンタみたいに可愛かったら、男でも勃つもんか試そうと思ってな」
遠くの方で声が聞こえて、服を脱がされる。

素肌にザラザラしたカーペットの感触を受けると、何か、開放感でいっぱいになり
―もう、いっか…
と思え、両手をダランと床に預け、言われるままに脚を開いた……


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