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優しい人・第36話
しおりを挟むスマホの着信が鳴る度、家のインターフォンが鳴る度、ドキリとしては落胆し、家を出る時、店の営業中も、扉が開く度、パッと見てしまう。
お客さんには
「どうした?」
と何度か聞かれた。
遅がけにチラッと覗いた草介さんは、千佳史の心を乱している原因を、いち早く見抜き
「志賀は《千流》のHPなんか見ぃひんて」
と言うのに
「あいつ、俺の川柳見て焦ったな~。俺、今日は帰っとくわ」
とか言って、段々諦めを濃くしている千佳史の心を、いたずらに揺さぶって帰って行った。
午前3時半。
半年くらい前、突然店に現れて、來人目当てで通ってきているネコが、來人の友達が帰るのを待っているのだろう、粘っていたが、3時頃帰って行った。
とても綺麗な子だけど、最初から物凄く感じの悪い子で、ほぼ口も聞かないで、ずっとスマホ弄って、ただ飲んでるくせに、1時間に1回くらい
「ヤロウよ」
と、唐突に來人を口説くのだ。
1度
「俺はアカンの?」
と邪魔してやったら
「アンタ、ネコじゃん。ダメ」
と関東弁で一刀両断だった。
「リバやで?」
と言ってみると
「嘘つけよ。別嬪さんのバリネコさん」
と、意地悪く笑った。
憎たらしいにも程がある。
だが、人を嫌うという気にはなれない。
彼には彼をそうさせる何かがあるのだろう。
この店に通って来てくれている以上、大切な客だ。
それに、最初の頃よりは当たりも緩い気がするのは気のせいではないと思う。
「たまにはあいつに付き合ってきますわ。あんっま、タイプやないんですけどね」
と笑って、お疲れっす、と扉を開けた來人に
「來人、気が進まんのやったら、取り敢えずJangoかどっかで飲み直して、一息入れて、もっかい考え?」
と送り出した。
1日が終わってしまった。
何となく…
志賀が来るとしたら、店に来る気がしていた。
最後に別れたのが店だったから、志賀がもし、自分と始めようとしてくれているなら、終わった所に来る気がしたのだ。
何も起こらなかった。
「あ~あ!」
声に出す。
《どうしてる? 俺、相変わらず 愛変わらず》
そんな川柳を短冊に書き、また溜まった短冊の束に重ねた。
期待してる自分が、ほんとに馬鹿で…
そして馬鹿みたいに、いつまでも同じボルテージで志賀を愛している。
千佳史は、そんな自分自身に呆れて
「中坊ん時のんが、まだ落ち着いとったわ、俺」
と声に出して言い、苦笑した。
《君想う 誰とも添えず 今もなお》
神奈川から、志賀のいる神戸に戻って来て最初に書いた川柳。
「はぁッ…かわいそ!俺!」
川柳の束をカウンターにボンと置き、カウンターから出て、入り口にある看板の電気をパチッと落とす。
「ビール飲も…」
何となく帰りたくなくて、生ビールを志賀専用のチュー禁シールが2枚貼ってあるグラスに注ぐ。
書き溜めた川柳の束が千佳史を憐れんで、ジーッと見ている気がする。
ただひたすら、志賀を想い続けた川柳達。
―また、同じような毎日、繰り返していくだけなんよな……
ええよ。
今までも、そうやってきた…
ずっと…ずーーっと……
そうやって生きてきた……
もしかして、とも思ったことなんかなかったやろ?
ポトリ……ポトリ…ポト…
降り出した雨のように、一粒溢れた涙が、どんどん続いて、土砂降りになる。
だが激しくなる嗚咽を、誰に聞かれるでもない。
今日は、あまりにも残酷な偶然に、志賀だと思い込まされたあの川柳とコメントを恨んで、ボロクソ言って泣こう……
「クソ…アホか、ボケ…ふ…うう…誰…誰やねん…ぅぐ…ぐ……嫌、がらせか……ッ…死ねッ…クソがッ……ぅ……」
何もなけりゃ、それでいいのに、変に石ころ投げられて、期待が水の輪みたいに広がって……広がって……消えてゆく…
消え……
?
ノックの音?
コンコンコン…
今度ははっきり聞こえた。
体が震える。
確信―。
これは、志賀…
志賀だ……!
スツールから、落ちるように降りる。
脚に力が入らない。
早く、早く、返事しないと、志賀が行ってしまう。
なのに、脚が…喉が…言うことをきかなくて…
声が出ない。
膝が震えて、足が…前に出ないッ……
志賀!…志賀ッ!!入ってきてッ……!!
まるで、夢の中にいて、どうしても動かない体のように……
「ぁぃ…ぁ…い…開いて…る…開いてる……」
叫んでるつもりだが、実際には囁くような小声………
△
11時頃からずっと、店の周りをうろついていた。
どうにも勇気が出ずに、懐かしい常連達の出入りを隠れて見ながら、高見の時は後ろから蹴りを入れそうになって必死で押えた。
そして、1時を回った頃、あの野郎を見つけた。
「おんどれごら。何でおのれが此処おるんどい?!ああ?」
襟首を掴んで目の高さまで上げる。
「ゴホ、ゴホッ…ま、待ってッ…ま…お、俺、ゴホッ…くる…し…結婚、結婚…」
「結婚や?」
伊川の足が地面に着く。
バサリ、と座り込んだ伊川が必死で息を吸う。
「はよ喋れ!」
座り込んだ尻を蹴り上げる。
「ゴホッ、ゲホッ……はぁッ…ぁの、俺、この、店のママ…嫁です…ッ」
「あ?…はぁ?」
取り敢えず、と、なんだか解らないが、流れで《佳奈信》に入り、ママがあのドSの今井の元妻だと聞いた。
あれから伊川は、壮絶に機嫌を損ねた今井から、尻の毛まで毟られる、という状態に陥れられ、復讐を誓った。
そして、以前から顔見知りで、今井に溺愛されながらも、相当な不満を溜め込んでいると知っていた妻、佳奈子に近づき、知り合う程に熟女の魅力に惹かれ、惚れた。
そして佳奈子もまた、信輔に夢中になるのに時間はかからず、信輔はまんまと今井から佳奈子を奪った。
そして、今井が、篤仁の結婚と、この界隈からの消失を知り、再び、滝に近づこうとしているのを知って、元々“食べられる飲み屋”をやりたい、と場所を探していた佳奈子に、この場所を勧め、洗い浚いを話した。
佳奈子は、自分が横に居れば、今井は近づけないだろう、と言い、伊川も、毎日ここに迎えに来るのだから、滝の店を見張れる、ということで《千流》横の空き店舗に場所を決め今年の2月にオープンした、ということだった。
「ほんで《佳奈信》か。そっか、いきなり締め上げて悪かったな。ごめんな」
それから、佳奈の料理で信輔と和解の酒を飲んで、勇気が出た。
そして、自分の今の状況も信輔に話し
「ほな、言ってくるわ、俺も。撃沈したらもっかい、戻ってくるから開けといて?」
と勘定を済まし、外に出た。
「わ!!看板消えとう!!嘘やろ?そんっな!!あのボケと飲んどう場合やなかった!滝さんっ」
《千流》のドアに走り寄り、ノックする。
反応はない。
「嘘ーん!ちょ…」
今度はもっと強くノックした。
ガタン…
中で音がした。
―おる?
何か、ミシ…ギシッ…というような音が……
ドアの隙間に耳を当てる。
「…開いてる」
小さな声だが、確かに人の声がした。
―滝さん?
ドアに手をかける。
―開いてる!
ノブを思い切り、引いた―
「……滝さん」
そこには、スツールの背を両手で掴んで、変に膝を曲げたような格好で立ち、こちらを見ている滝が居た。
ヒッ、ヒッ…と喉を鳴らし、窒息するんじゃないか、というほど切羽詰まったように泣く滝。
尋常ではない姿だ。
夢中で滝の元へ走り、抱きしめる。
「滝さん、どうしたん?!!今井か?来たんか?!ここに!クソッ!何されたん?どないしたんよっ!!」
「…う……ち……う…」
アグ…ふ……はッ……アグ…
滝は必死で何かを伝えようとするが、言葉にならない。
「滝さん、もう大丈夫や。外、誰もおらんかったで?落ち着いて?」
「…がぅ……違……志賀…が……」
「何?違う?何?」
「…志賀が……来た…から……」
「え?」
カウンターの上の、夥しい短冊が目に入る。
《そこにキス 夢見て目覚めた 片笑窪》
「…ッ、これ……」
ー「その片笑窪が好きな人、私、他にも知ってる」
萌花の言葉。
すっきりとした微笑み…
ーえ、萌花、滝さんなん?
《どうしてる? 俺、相変わらず 愛変わらず》
《千流の 涙は全て 君が為》
《ひとつだけ 我が儘を言う 忘れない》
《千流の どれを選べど 先同じ》
《君が為 あれこれ整え 阿呆鳥》
《思う様 君を愛した 夢の中》
《滲んでく あなたの背中に 愛してる》
《石の上 10年座れど 来ぬ人を》
《癒される 言われて溜息 つけませぬ》
《此処に居て 届かぬ愛でも かまわない》
《胸の底 篤き仁抱き 死ぬるまで》
《君想う 誰とも添えず 今もなお》
・・・・・
読みきれない……物凄い数の、滝の自分への想い。
まるで泉が湧くように、どんどん滝の愛が溢れ、鈍感だった篤仁は、足元から積年の涙に浸かってゆく。
自分を想って流してくれた、この愛しい人の千流の涙に……
「……滝さん…これ俺に?…この、俳句……全部、滝さんが…?」
泣き過ぎで、呼吸が苦しそうな滝が、ハッハッ……と息を吐きながら頷く。
「滝さん何でっ!」
力の限り、細い体を抱きしめる。
「言うてくれたら!俺、もっと早く!俺は滝さんとおりたかった!ずっと…一緒に、おりたかったっ!1年前、ここで離れた時、何でもう、会えんのか、って……完全に恋人と別れた気持ちやったんやッ…今、思たら……ッ…何で…何で一言ッ……」
「いッ…言われ…へ……言われへんッ……言われ…ん、そんなん…言われへんッ…言わ…」
「俺も好きや!滝さんの顔だけじゃなくて!女の代わりとちゃう!滝さんが好きなんや、俺は!メッチャ好きっ!!メッチャ好き、大好き!!」
「ぁ……ぁあッ…あッ、わあああー……志賀ぁ……」
「滝さん…滝さん…好き…な、俺のこと、好き、って言うて?滝さん」
「…ふ…ぅ……す…き……ぅぅ……好き大好き…志賀…大好きッ」
篤仁は、涙でぐじゃぐじゃの滝の顔をTシャツの裾で拭ってやり、自分の顔もサッと拭く。
「滝さんに、キスする」
「…ぅ……」
滝さんが泣きながらも、ちゃんと俺を見つめる。
2人、お互いを確認するように、目を開けたまま唇を合わせてゆく。
唇が触れ、滝が目を閉じる。
愛しい唇を一舐めすると、激情のままに柔らかいそこに喰らいつく。
確かな手応え。
しっかりと口づけに応えてくれる滝は、一年前の川本蘭奈ではない。
滝千佳史だ。
いや、もうあの時から、自分は滝に口づけていたのだろうと思う。
いつから、何処からそうなったのかは自分でも不明だが、以前のように滝が女だったら、とはもう、思わない。
口づけを顔から耳に移動させる。
ビクン…と大きく滝の体が揺れ、ぁ…と、声が漏れた。
ズク…
一気に下半身が重くなる。
「滝さん…滝さん…」
呼びながら、耳介を、耳孔を舐め、貪る。
「ぁ…や……」
身を捩る滝。
軽い抵抗を感じるが、もう、止まらない。
Tシャツの裾に手をかける…
「嫌…嫌…止めて…嫌や……」
「え、なんで…そんな、無理ッ…」
「お願い、志賀ッ…お願い、待って…」
あまりに悲痛な声に、轟轟と音を立てて燃え盛っていた志賀の劣情が少し、止まる。
「どうしたん?滝さん。抱きたい、俺。アカンの?」
あの可愛い『あかんくない…』を期待して待つ。
もう、俺の雄はとんでもない状態だ。
「ぁかん……あかんょ…だって……」
滝はまた、泣き出してしまったー。
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