優しい人

sasorimama.fu

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優しい人・第41話

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チュッと唇を吸われる。

「シャワー浴びよか」

そう言って、腕枕をしていない方の手を伸ばし、千佳史の髪をクシャッと撫でる志賀は、何かとても慣れていて、自分より大人びて見える。

きっと、ずっと決まった人がいた志賀の経験した数は、千佳史のそれとは比べ物にならない程のものなんだろう。

ゆさ…
抱き上げられ、シャワーに向かう。

「だ、大丈夫やで?」
「運びたいの。俺に任せて」

志賀が微笑む。

きっと、これまで付き合ってきた女性全てに、志賀はこんなふうだったんだろうな…

ちょっと落ちる…


人はどこまで強欲なのか。

『こんな日が来るなんて!』
と、夢でもいい、と今、涙を流したのに、もう志賀の過去に嫉妬する自分。

「どうしたん?滝さん、顔がブルーやで?しんどなった?痛い?」

―顔に出てた?!

「ん?ううん!何もちゃうで?全然、大丈夫!」

浴室に千佳史を抱いたまま、胡座をかいた志賀が、ジーッと千佳史の顔を見てくる。

顔が引き攣るが、何とか笑う。

「嘘」
「へ?何が?」

「何か思とう。言うて」
「……」

「早く。言うてみて」
「…や、すごい…下らん、こと…」

ふん、と鼻から息を出し、志賀がギュッと抱きしめてくれる。

「言うて。滝さん、これまで俺を好きな気持ちも、寂しさも悲しみも、何も言葉にせんかったやろ?すぐは無理かもやけど、これからは気持ちはどんどん口にする連習していって?なんぼ愛し合うとったって、心の中は見えへん。想像はするけど、間違うこともあるやろ?そんなんでもし、すれ違ったら嫌やん?」

確かにそうだ。
信じさえすれば良かったものを!という場面は、現実でも、映画やドラマ、小説の中でも腐るほど出てくる。

心を言葉にする。
全部は無理でも、少しづつ…

出来そうな言葉から、少しづつ開放して。

話して放すのだ。

話して、自分の中から迷いや悩み、傷や嫉妬…そんな負の心を放す━━━


「俺、ヤキモチ妬いた。志賀の過去に」
「ぇえ?!マジで?嬉しいっ!!俺と一緒やん!俺もさっき、言うたでしょ?何、どこどこ?どこらへんで妬いた?」

志賀に抱きしめられたまま、ゆさゆさ揺さぶられる。

引かれるかと思えば、何故か志賀は嬉しそうだ。

そう言えば、自分もさっき志賀に、自分の最初の男になりたかった、他の男の記憶消して、と言われて、嬉しかった。

―そうやんな…志賀は俺を好きになってくれたんやから、俺は志賀に妬いてもいいんやん?

「なあ、どこで、どこで??」
耳近で志賀のちょっと高めのハスキーヴォイスが響く。

「ん…何か、大人っぽいから…。いちいち。だから、すごいエッチとか数こなしとんやろなぁ…って漠然と辛なった、って言うか…」
「もう、滝さんッ…」

「く、苦し…ッ…」
物凄い力に、背中が軋んでさすがにギブだ。

「あ、ついッ…ごめん!そうねぇ…数はこなしてますね~。回数ね。相手の人数は知れてるけど。俺、基本、付き合う気ないやつとせえへんから」

―愛し合ってた、ってことやんな?……微妙…
そう思うが、こんな曖昧な気持ちは言葉にはまだ、出来ない。

「あ、また!また変な顔しとう!」
「そんなことない」
「そんなことある」

「…愛し合ってた、てこと…やんな…?」
「…ん?」

「あ、嘘嘘!ナシナシ!!今の!」

「ワッカラン……」

志賀が思案顔で首を捻る。

「え?は?」
「いや、愛し合ってた?と言われれば……多分、そりゃそん時は、熱中しとった筈やけど、あー、顔くらいは覚えてますけどねぇ…あ、萌花は覚えてるけどね、さすがに。でも、なぁ…どやったかなぁ……忘れた!へへ…」

いつもどこかズレているが、ヘラッと笑うこの時の志賀の答えは、今の千佳史にとって、最高の大正解だった。

「わっるー!」
「そう言いながら、滝さんゴキゲンなったやん」
「うん…。嬉しい」

「わっるー!そんなイケズにはお仕置き!」
「わっ!!」

座った体勢で千佳史を抱いていた志賀は、そのまま、千佳史の膝を持ち、ガバッと左右に開いた。

何せ明るい浴室だ。
前面の浴室鏡に、志賀の胡座の上でM字開脚させられた己の姿。

「ゃめて…」
思わず顔を背ける。

「最ッ高…ヤバい…エッロ……」
志賀の息が荒い。

「ちょ、滝さん、エロい…ヤバい…ちょ、脚、閉じたらアカンで?ここ、自分で持って、ここ」
自分の膝を掴まされる。

鏡には、自ら脚を開いて誘っているかのような自分が映る。

志賀が、後ろからわざと荒く胸をまさぐってきて
「黒と白やん。俺の手、黒ォー。何か、おらおら~言うてオッサンにいじくられとう白人の娘って感じやなぁ…いや、娘ちゃう。白い美少年」
「三十路や」
「そんなん!だって、キレイもん!そんなん言うて、俺の滝さんを侮辱したから、もっとお仕置き!」

「本人や、って!」
「あかーん!アウト!」

志賀は、千佳史の手の上から、また千佳史の膝を持ち、更に脚を拡げ、グイッと尻を見えるように持ち上げた。

「も、止めてっ!ほんま、やめて!いやや、いやっ!!ややー……ぅ…ゃゃ……ゃ」
「あ、ごめん、…ごめん、滝さん、悪乗りした!ごめんな?泣かんといて?」

「ヒッ…うん……ズッ…そんなん、汚いやん…そんなとこ…見んといて…ヒクッ…」
「汚なないけどなぁ~」
「嫌っ」
「はい…じゃ、止める!止めますッ。でも……そのうち慣れたら見せて??ってか、強姦ごっことかさせて?」

「・・・・・」

―志賀…ストレートやけど、ノーマルちゃうかってんな……

志賀を大好きで、それは何があっても変わらないが、ちょっとだけそこは直してほしい千佳史だ……


「あーごめん!やっぱガマンできんー」

また志賀のキスの雨が始まり、愛撫がきて高まって…先にイカされてしまった…

「俺もいくな、よっ…」

後ろを向かされ、自分の迸りが散った鏡に手をついて、志賀の高速ピストンを受ける。

「……シィッ……ツゥ……あ、シィッ…」
1年前、志賀が千佳史の背中に乗って、一人で扱いていた時、いつも出していた歯音。

急にあの切なさを思い出した。
「うしろ、いやゃ…」

クルッと振り返り、広い胸に抱きつく。





いきなり滝が振り向いたかと思うと、抱きついて来た。

まだ、最後まで出していない。

合わさった2人の間に、残った精が、タラ……と流れる。

「も、まだ……。ちょ、しっかり出てへんのに…え、どしたん?滝さん?」


バックで思い切り腰を振った。

最高に気持ちいいセックス。

先にイった滝の中に放ち、しっかり最後まで飲み込ませたかったのに、浴室鏡に手をついて、人形のように揺さぶられていた滝が、最後の最後で、いきなり向きを変え、胸に飛び込んで来て
「うしろ、いやゃ…」
と、訴えて来る…

とにかく抱きしめて、精を出し切る。

滝は黙ってシクシクやっている。

きっとこれまでの相手なら、ええ加減せえよとイラついていただろう。
だか、滝に対してはそれがない。
愛おしくて堪らないのだ。

何度止められても何度泣かれても、それが自分に対する愛を隠し続けるしかなかった滝が、人並みに感情を出せるようになる為の作業なのだと思える。
そしてそれがそのまま、自分への愛の大きさで深さだと思えるのだ。

「どしたん?」
抱きしめたまま、最大限優しい声を出す。

篤仁の問いに、ただ首を横に振った滝だったが
「言うて。言葉にして?」
という篤仁の言葉に頷いた。

「どしたん?」
もう1度聞く。

「思い出した…から…」
「何を?」

「去年…一緒におる時…志賀が、俺の…背中で……」

―あ、ああ、そうか!女の代わりみたいだったことを、思い出した…!

「ごめん!滝さん…バック、やめとこな?」
「違う!ごめんな?…俺、それでも、あの時は幸せやってん。志賀が、俺の顔や背中で興奮してくれて…それは、全然、嫌じゃなかった…ほんまに……やのに、こんなに…愛…?されたら」

「愛やで?愛しとう」

篤仁は、抱きしめた手に力を入れ、宇宙一可愛いのに何処までも自身のない、疑り深い恋人を強く抱く。

ズズ…
鼻を啜る音がする。

宇宙一可愛くて、宇宙一、泣き虫な恋人、やな、と篤仁は心で密かに訂正する。

「ふふ…ありがとう…だから、その、こんなに愛されたら、急にあの頃のことが切なくなって…もしかしたら、ちょっとだけ辛かったかな、とか……や、そんなことないな、やっぱり…あれ?何言うとんや、俺…」
「何でもええよ。とにかく、過去は変えられへんからな…俺、メッチャ滝さん傷つけて、辛い思いさせてると思う」

腕の中で滝が、ブンブン頭を振る。

「いや。ええねん。俺、無神経でさ、KYで天然。そんなん、周りから嫌っちゅーほどいわれとうから、知っとう。でも、だから、言うとうことは全部、ほんま。滝さんは本音隠すんがクセやから、俺と逆やな。…《千流の 涙は全て 君が為》…。散々、泣いてきたやろ?隠さんでええの」

「……」

滝の、篤仁の背中に回した手に力が入る。

「でも、これからは勝手に泣かんといて。《これからは いつでもそばに おるからね》。どう?これ」


「最高……」



それから2人は体を綺麗に洗い、小腹が空いたなと言い合いながら、カップラーメンを食べて、歯を磨き、一つのベッドで抱き合うと、3秒で眠りについた……
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