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第1章 トンネルの向こうには…

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 まだ頼りなげに、ボンヤリとする女の子を見ると、
「うーん」
彼は頭をかく。
「家出娘かぁ~」
そうつぶやくと、じいっとこちらを見ている彼女に気が付く。
「まいったなぁ~」
こういうのは、苦手だ…と、頭をかかえる。
何か手がかりが、ないだろうか…と、あれこれと考え
「ところでキミ…名前は?」
ふと思いついて聞いてみる。
「名前…?」
彼女は、少し頭をひねり、考え込み様子だ。
まさか、名前も忘れてしまったのか、と思っていると
「エラ…」と言いかけてから、あわてて
「レミ」と思わず言い直した。
 どっちも、偽名か…
どこから、この名前を思いついたのか、と一瞬思うのだけど、
それがどこでだったのか、すぐには思い出せない。
 だがとにかく、ごく最近にこの名前を聞いた。
それがどこで、と必死に思い出そうとあがくと、深い霧の中をさまよっている
ようで、どうしても思い出せない…

 そんなエラの様子には、気付く様子もなく、
「レミちゃんかぁ~何 レミ?」
さらにのん気な様子で、タクトは聞いて来る。
 エラは今度は、本当に困ってしまい、頭をかしげる。
まだ、頭がぼうっとしている。
あの光のトンネルのせいか…と思いつつも、彼女は少しばかり、焦っていた。

 まいったなぁ~
 もしかしたら、この子はやはり、本当に記憶喪失なのか?、
新たに見つかる難関に、タクトはかなり焦ってくる。
 それともまさか…単に家に帰りたくないから、芝居をしているのか、
と…段々混乱してくる。
「とにかくボクは、明日、仕事があるから」
そう言うと、彼女の隣に横になると、布団をかぶって寝ようとする。
それに慌てて、レミ(エラ)はあわてて起き上がると、まるでデクノボーの
ように、ただ突っ立って、黙ってこちらを見ている。
その様子に、一瞬ボンヤリとするけれど、ようやく何かマズイことを
したらしい、と気が付いた。
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