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第3章 不思議な国のシンデレラ

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「はじめまして!
 昨日は…タクトさんに助けてもらって、本当に感謝して
 いるんです」
 全く見ず知らずの、何も知らない
(事実、彼をひっくるめて、何もわかってはいない)
女性に向かって、無邪気で無垢な子供のような表情を
エラは浮かべてみせた。
「お姉さんは、ここの人ですか?」
何もやましい所がないので、まったく気負うことなく、
エラは話しかける。
「ごめんなさい、いきなり押しかけて…
 でも私、今どこにも行くあてがないのです」
 精一杯あどけない顔をして、とても困っている、という表情を
してみせると、はぁ~とその人は、大きくため息をついた。
「タクトってばぁ~まだあのクセ、治ってなかったんだ…
 よりによって、女の子を拾ってくるなんて!」
その人は思いっきり、顏をしかめてみせた。

 それでも何とか、エラがタクトを、だまそうとしていうわけではない…
ということだけは、わかってもらえたようで、
その女性はまたも、はぁ~と大きなため息をつく。
一体、どうしたらいいのよ…とエラは困った顔でその様子を見守る。
「とにかく、このままだといけないわねぇ。
 あなた、本当に…何も覚えてはいないの?」
 それでも疑う目付きで、エラを見つめる。
その視線を、エラは黙って受け止めて、じぃっと彼女を見つめ返すと、
「しかたがないわねぇ」
 これは本当に…迷子か、とさすがに持て余したようで、先ほどの
勢いがなくなってきた。
「他に…行く所が、ないの?」
「知り合いは?」
「お父さん、お母さんは?」

次々に聞かれても、ボンヤリとした顔をしてみせる。
「うーん」
その人は考え込むと、
「私のトコへ来て、というのが筋なんだろうけど…
 私のトコも、小さなアパートだしねぇ」
いきなりのハプニングで、かなり困っているようだ…
中々うんとは言えない。
困ったように、エラを見返した。
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