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第16章 リターン、まさかの再会

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 それは、完全にぬれぎぬだなぁ~
あわててエラは、頭を振る。
「おっ」
そこでようやく、エラの存在に王子は気付く。
「おや、お客さん?」
まったく怪しむ様子もなく、女中頭のマーサに声をかける。
(ヤバイ!見つかったぁ~)
顔を隠そうとするけれど、マーサに手首をつかまれているので、
隠すこともままならない。
どう反応したらいいのか、わからなくて…
せめて王子が、自分のことを忘れてくれていれば…と、かすかに
期待する。
マーサに左手を取られたまま、顏をそむけるようにして、体を
ひねっていると…
「ほら、あなたも、王子様にご挨拶なさい」
叱りつけるようにして、マーサがエラの手をぐいっと引っ張る。
引っ張られて、わずかに身体が揺れる。
(どうしよう、バレちゃう!)
エラはあわてるけれど、それでもまだ、体をひねったまま、
なるべく横を向いて、不自然なほどに身体をねじっている。

「こんにちは!」
 ごまかすように、エラは声をかける。
「ちょっと、あなた!
 王子様に対して、とても失礼よ!」
今度はマーサが、むんずとエラの肩をつかむと、むりやり正面を
向かせようとする。
(ちょっと、やめて!)
エラはそう思うけれど、強引に真正面を向かせられると、マーサは
エラをにらみつつ、
「本当に、申し訳ありません。
 すぐにこの子は、追い出しますから!」
強い口調で、マーサが言うのを、エラはうつむいて聞く。
それを無視するように、王子は興味津々で、こちらを向いている。
視線を感じて、エラが目を合わせないようにと、頑張っていると…
逆に王子は興味を持ったらしく、エラの顏をのぞき込むようにする。
「あれ、あれぇ~どこかで見た顔だぞぉ」
 それでもマーサの手から逃れようとして、エラは必死に、
あさっての方向を向いたり、クルリと身体をひるがえしたりした。
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