ケンタと紫のバラ

daisysacky

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第1章

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「ねぇ、母さん」
「なに?」
「父さんて、ホントに見てくれてるのかなぁ」
 ケンタは、父さんの写真を、じぃ~っと見て、
母さんに聞きます。
すると母さんは、
「当たり前じゃない」
と言いながら、ケンタを見ます。

 でも、ケンタは知ってるのです・・・
母さんが時折、ケンタが眠った後に、写真を
見ながら、泣いていることを・・・
どうして知っているか、と言ったら、夜中
トイレに行く時に、ドア越しに、母さんが
父さんに話しかけているのを、見つけたからです。
その時ケンタは、まずいものを見てしまった・・・
そんな気がしました。

「父さんにあげてくれた?」
「うん」
「ありがとう」
 母さんは、台所から、手を拭きながら部屋に
入ってきました。
「母さん、父さんって、どんな人だったの?」
そう聞くと、母さんはキョトンとした顔をして、
「とっても優しい人だったわ」
と言います。
「父さんって、何が好きだったの?」
「そうねぇ~」
と言いながら、
「みんなの笑顔が、好きだったわ」
と、にっこりしました。

 父さんは、お花が好きで、
 動物も好きで
 自然が、大好きな人でした。
 ケンタは、母さんから、そう教えられました。
父さんは、アマチュアのカメラマンでした。
しょっちゅう、カメラを持っては、遠くに写真を
撮りに行ってしまうのです。
母さんは、いつも家で、お留守番。
でも、いいのです。
母さんは、いつも、お土産を頼んでいるのです。

「その日、1番、素敵だったものの写真を撮ってきて。
それが、1番欲しいものよ」と。

 父さんは必ず、約束を守ってくれました。
それは、空の写真であったり
雲の写真であったり
桜の写真であったり
猫の写真であったりしました。
だけど、父さんは必ず、手渡す時に、こう付け加える
のを、忘れませんでした。
「1番素敵なのは、君だよ」と。

 そして、母さんは男の赤ちゃんを産みました。
父さんはそれを喜び、母さんと赤ちゃん・・・(ケンタ)の写真を、帰るたびに、必ず
1枚ずつ撮るようになりました。
それが、家族の証となりました。
だから、ケンタの家には、父さんの写真はほとんど
ありません。母さんとケンタの写真ばかり、ドンドン
たまりました・・・


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