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50話 相変わらずな男
しおりを挟む「あいつのことは専務に調べてもらったんだ」
「どうして急に」
「スミの会社にあいつが来た事をテルから聞いて…」
「中田秘書から?」
「実は…今テルは俺の児童施設で働いてる」
「えっ⁈そうなの⁈」
「うん。それでテルから聞いた」
「よっぽどシュンは慕われてるのね。でもシュンのとこで働いてるならよかった」
「それより…雨の日はバスじゃなくてタクシーで帰れよ」
「…シュンはあの人が釈放されたの知ってそれで心配で戻って来たの?岸田さんがこの前会社に来たのもシュンの指示だったのね?」
「スミ!あいつは危険だ。知ってるだろ?近くに居るし何をしてくるかわからない」
「近くって、どこに居るか知ってるの?」
「SS社で副社長をしてる」
「え…SS社って…シュンの元奥さんの…」
「うん…保釈金も由希が払ってる」
「えっ…どっ…どうして」
「わからない。だから俺、SS社に行って来るよ」
「やめてっ!シュンには迷惑かけたくない」
「迷惑だなんて。俺が勝手にやってることだから」
「本当にやめて。シュンも危ない目に遭ったでしょ。もう私に構わないで」
「心配なんだよ‼︎」
「…シュン。でももう恋人でも何でもないのよ」
「何でもないけど、元カノのこと心配しちゃダメなのかよ。守りたいって気持ちは変わらないから」
「シュン…」
「もうバレたならコソコソしない。帰りは送るから晴れてても運転はするな」
「えっ…いいって」
「運転…苦手なんでしょ?俺と付き合ってる間はスミが運転するの見た事なかったし…危ないよ」
「もう出よ。お母さんが心配するから帰る」
「…わかった。送るよ」
店を出ると2人は歩いてスミの家に向かった。
「シュンは家に戻ったの?」
「いいや。ホテルに泊まってる」
「…そう。お父様には?」
「会って話したよ」
「福岡には?もう行かないの?」
「スミ…俺は…」
「本当にもういいから。放っといて」
家に着くとスミは走って家の中へ入って行った。
シュンが裕二に会いに行く前に私が行かなきゃ…
SS社に居るのね…
裕二はあれ以来、姿を見せないけど…
また来るに決まってる…
翌朝、早速スミはSS社に行った。
社長室に通されると、中にいた裕二がスミを見てニヤニヤしていた。
「どうしてここがわかった?」
「それは…調べたのよ」
「ふーん。で…何?俺に会いたくなった?」
「どうしてここに居るのよ。ここってシュンの元奥さんの会社でしょ。しかも副社長って…」
「聞きたいかー?」
「…ええ」
「教えな~い」
「あなたって人は…」
「スミの会社に1度顔出しただけで何もないから変に思ってるんだろ?」
「ええ、そうよ。本当なら釈放されてても私の前には来れないはずだから。なのにわざわざ会いに来たのは何か魂胆があるんでしょ」
「さすが…よくわかってらっしゃる」
「お願いだからシュンには迷惑かけないで‼︎あの人はもう関係ないから」
「何言ってるんだ。あいつがいなければ俺は捕まってもないし…全てあいつのせいだよ‼︎」
「裕二!今までしてきた事、少しも悪いと思ってないの?」
「全てあいつのせいだからな」
スミは呆れて涙が出てきた。
「おいおい…どうして泣く?心配するな。もう監禁なんかしないから」
「シュンには…何もしない?」
「知りたいか?」
「…何もしないで‼︎」
「するー!」
「警察に話すからね」
「話してどうなる?それに俺には強力なバックが付いてるからね」
「バックって…」
「この会社だよ。会社が俺を守ってくれてる。言ってる意味わかるよな?」
「裕二っ…お願い。シュンには関係ないから。シュンには何もしないで!」
「お前ら別れたんだろ?あいつがどうなろうといいじゃないか」
「別れたけど…お願い…」
「じゃあ…金持って来い」
「…え」
「俺の口座に明日までに振り込んだら考えてやる」
「いっ…いくら?」
「とりあえず500万」
「500万⁈」
「無理ならいいよ。別に強制じゃないし」
「わっ…わかった。振り込むからシュンには何もしないでよ!」
「わかったよ。これ俺の口座ね」
スミはその場を立ち去った。
バカな奴め…
スミはそのまま銀行へ行き、早速500万を下ろした。
あんな奴に払いたくないけど…
シュンの為ならこのくらい…
スミはそう自分に言い聞かせると渋々裕二の口座に振り込んだ。
そしてお昼過ぎ、シュンは裕二に会いに行った。
「おー!これはこれは地曽田社長じゃないですかぁ~」
「ちょっと話がある」
「今日は俺を訪ねて来る人が多いなぁ~」
こいつ…
何で俺がここで働いてる事を知ってるんだ…
さてはスミとこいつ…まだ繋がってるな…
「俺がこの会社に居る事も、俺が刑務所から出て来た事も驚かないんですね~」
「どういう事だ⁈どうして由希がお前を釈放させたんだ⁈」
「そこまで知ってるとはな…」
「答えろよ‼︎何でこの会社の副社長なんかやってるんだ」
「じゃあ、俺に謝れ。そしたら教えてやる」
「なっ…何だと?」
「お前が遺言書を見付けなければ…俺とスミは元に戻ってたんだ。そしたら放火もしなかったのに…お前のせいだ」
「おっ…お前、監禁までしてたのに」
「そうだよ。あの日お前たちは焼死してたはずなのに…まさか助け出すとはな。本当に目障りな奴だ」
こっ…こいつ…腐り切ってる…
「お前に謝るはずないだろ。謝るのはお前の方だ」
「何だと⁈」
「もういい。お前に聞いても一緒だ。由希を呼べ。この会社にいるなら連絡くらいつくだろ」
「お前は由希さんの番号消したんだな?残念ながら今は旅行に行かれてますよ~海外に」
「いつ帰って来るんだ」
「来週には帰って来るんじゃないですかぁ?」
「また来る」
「はーい」
「それと…」
「まだ何か?」
「スミには手を出すなよ。何かしたら俺、手加減しないからな‼︎」
そう言うとシュンは思い切りドアを閉めて出て行った。
あいつら…お互い同じ事を俺に忠告しやがって‼︎
別れてないな…
クソー!スミの奴…嘘つきやがったな‼︎
まぁいい…これから地獄を味あわせてやる‼︎
スミ‼︎覚えとけよ‼︎
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