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第10話 持論
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二人は途中で寄り道をしてから帰宅した。
現在の時刻は十七時過ぎ。
二人はリビングの床に腰を下ろす。
実親は買って来た珈琲を、千歳はお茶を飲んで一息つく。
「流石に疲れた」
「そうだな」
今日は一日中働きづめだ。
いくら若い二人でも体力が持たない。暑さで体力が奪われるので尚更だ。
「後は細々した物を片付けるだけだし少しずつやっていくさ」
既に大体の物は片付け終わっている。
残りは書斎の本棚に並べる書籍くらいだ。
これは実親のコレクションでもあるので、千歳には触らせずに自分で整理するつもりだった。
二人で話しているとインターホンが鳴り室内に響く。
実親はインターホンのモニターを一瞥すると、玄関へ向かう。
玄関で客人を出迎えると、まず到着したのは家具量販店の配送だ。
家具量販店で購入した物と、家電量販店で購入した物をそれぞれの店舗で即日配送してもらうように頼んであった。
ベッド、ソファ、テーブル、デスク、シェルフなどが次々と運び込まれて行く。
実親は複数の配送員に運ぶ場所を指示し、千歳は邪魔にならないように端に移動して見守っていた。
一通り運び終わり玄関先で配送員を見送っていると、丁度入れ違うように家電量販店の配送員がやって来た。
冷蔵庫、洗濯機、テレビ、電子レンジ、炊飯器などを運び込んでもらう。
全て運び終わると、配送員を見送った。
そして一先ず生活する上で必要最低限の物が揃い、やっと一息つける環境が整った。
「汗掻いたしシャワー浴びさせて」
「ああ」
千歳が髪を搔き上げて首元に籠った熱を放出する。
汗で肌がべたついて気持ち悪い。
七月も間近に迫り、気温は三十度を超える毎日だ。
いくら東京暮しに慣れているとはいえ、暑いものは暑い。汗だってかく。
熱で火照り汗が滴っている首元が色っぽくて実親にとっては眼福だった。
「シャツ借りても良い?」
「適当に使って良いぞ」
「了解」
千歳は一度三階にある実親の寝室に向かう。
クローゼットを開くと、一番手前にあった黒のロングTシャツを取り出した。
二階に戻って来ると浴室に直行する。
「ついでに洗濯もさせて」
「お前の後に俺もシャワー浴びるから洗濯はその時に一緒にするぞ」
「良いけど私が洗濯機を回す」
千歳は脱衣所で衣服を脱ぎながら声を発する。
オフショルダースリムフィットTシャツを脱ぐと豊満な胸が揺れ、ワインレッド色のブラジャーが露になった。
ショートパンツと靴下を脱ぐと同じくワインレッド色で透け感のあるレースのショーツが姿を現す。
瑞々しくて張りのある臀部が美しい。
そして靴下、ブラジャー、ショーツを脱ぎ去り、アクセサリー類を外すと生まれたままの姿になった。
折角シャワーを浴びても汗を吸い込んだ服を着たら意味がない。
帰宅する途中で寄り道をしてシャンプー、コンディショナー、洗濯洗剤は買って来ている。
なので出来れば洗濯してから着たかった。
実親が自分の分と一緒に洗濯すると指摘したが、千歳は構わないようだ。
二人の衣服を一緒に洗濯するのは嫌がられるかと思ったのだが、要らぬ気遣いであった。
それでも譲れない部分はある。一緒に洗濯するのは構わないが、下着を見られるのは抵抗がある。
故に千歳は自分で洗濯機を回したかった。
「それじゃお先」
脱いだ衣服を全て洗濯機に入れると浴室に入った。
◇ ◇ ◇
千歳がシャワーを浴びている間に実親は買っておいたコンビニ弁当で夕食を済ませた。
千歳も実親がシャワーを浴びている間に夕食を済ませている。
そして今は書斎で書籍を本棚に収納していた。
実親が整理している姿を千歳は入り口の隣の壁に背中を預けて見守っている。
シャワーを浴びる前よりは薄めだが、確りとメイクし直している辺りは意識が高い。
「親父が迎えに来るんだろ?」
「うん」
既に時刻は十九時を過ぎている。
高校生なので外出しても問題ない時間だが、今日は悟が車で千歳を迎えに来る予定になっていた。
千歳は頷いた後に思い出したように口を開く。
「そういえば、聞きたいことあったんだけど」
「なんだ?」
実親は整理する手を止めずに続きを促す。
「私達が兄妹になったことを知ってる人っている?」
「一人だけいる」
「誰?」
「映画研究部の部長」
「誰それ……」
千歳は今後学校生活を送る上で自分達の関係について知っている人のことを把握しておきたかった。
しかし全く知らない人物の名前が返って来て言葉に詰まってしまう。
「幼馴染だ」
「ふーん」
幼馴染が男なのか女なのか気になったが、実親の女性事情を気にしていると勘繰られるかと思い尋ねるのは自重する。
「今度紹介する」
今後顔を合わせることもあるだろうし、幼馴染のことは紹介しておいた方が良いだろう。
「お前はどうなんだ?」
「私?」
ちょうど良い話の流れだったので実親も尋ねる。
「慧と唯には伝えてる」
「そうか」
名前の出た二人は千歳の親友であり、実親とも親しい間柄だ。
「散々揶揄われたけど……」
「だろうな」
苦笑しながら溜まっていたものを吐き出すかのように溜息を吐く千歳は、心底辟易していたのだと察せられた。
実親は肩を竦めている。
「という訳で学校には伝えてあるけど、必要ない限りは内緒にしてほしいんだけど……」
「わかった」
これ以上揶揄われるのは勘弁願いたいのが本音だ。故に可能な限り内密にしておきたかった。
流石に学校には伝えているが、学内では旧姓の山本で過ごすことになっている。突然黛姓になったら勘繰られるのは目に見えているからだ。
「ところで」
「何?」
実親は一旦手を止めて千歳の脚に目を向けた。
千歳は首を傾げたが、実親の視線に気が付き、手でTシャツの裾を引っ張って脚を隠すようにモジモジし始める。
「冷房効いているし寒くないのか?」
今の千歳は実親のロングTシャツを着ているだけだ。
下着も洗濯中なので、裸の上にTシャツを着ているだけであった。姿勢によっては大事なところが見えてしまう。
黒のTシャツなので目立ってはいないが、良く見ると胸にある二つの突起の部分が微かに浮き出ていた。
「さ、寒くないけど?」
「そうか」
千歳はなんとも思っていなかったが、実親がまじまじと見てくるので急に恥ずかしくなり顔が赤くなる。
「そ、そんなにじっと見て何さ?」
「いや、良い脚しているなと思って見惚れていた」
実親は千歳のスラっとした長くて綺麗な脚に視線が釘付けにされていた。立っているのでつま先から太股まで良く見える。
必要以上に筋肉が付いている訳でもなく、かといって弛んでもいない。絶妙な筋肉の付き方をしている。
太いか細いかで言えば細めの脚だろう。
「は……?」
千歳は実親の台詞で一瞬思考が止まり言葉に詰まってしまう。
そして意味を理解すると一層顔を赤らめた。
「えっち」
千歳は赤面している顔を髪で隠し、器用にも目線は確保して上目遣い気味にジト目を向ける。
「誉め言葉だな」
「えぇ……」
なんら恥じ入ることのない実親の開き直りように千歳は呆れてしまう。
「作家は変態であるべし、というのが俺の持論だ」
「ふふ、何それ」
書籍を本棚にしまいながら堂々としている姿が可笑しく、千歳は思わず笑みを零す。
(なんか良いな、こういうの)
千歳は実親と交わす何気ないやり取りが心地よくなっていた。
そう思うと、無意識に口から言葉が漏れる。
「ねえ」
「何だ?」
「また遊びに来ても良い?」
首を傾げて実親のことを見詰めながら問う。
「構わんよ」
「ありがと」
了承を得られて自分が思っていたよりも嬉しいと感じていることに内心で驚くが、今感じている気持ちを素直に受け入れて大事にしたくなった。
その後は悟が迎えに来るまで二人で談笑した。
楽しくて心地よい時間になっていたのは互いに秘密だ。
千歳は車に揺られながら「次はいつ遊びに行こうかな」、と考え無意識に笑みを零していたことに本人も気付いていなかった。
現在の時刻は十七時過ぎ。
二人はリビングの床に腰を下ろす。
実親は買って来た珈琲を、千歳はお茶を飲んで一息つく。
「流石に疲れた」
「そうだな」
今日は一日中働きづめだ。
いくら若い二人でも体力が持たない。暑さで体力が奪われるので尚更だ。
「後は細々した物を片付けるだけだし少しずつやっていくさ」
既に大体の物は片付け終わっている。
残りは書斎の本棚に並べる書籍くらいだ。
これは実親のコレクションでもあるので、千歳には触らせずに自分で整理するつもりだった。
二人で話しているとインターホンが鳴り室内に響く。
実親はインターホンのモニターを一瞥すると、玄関へ向かう。
玄関で客人を出迎えると、まず到着したのは家具量販店の配送だ。
家具量販店で購入した物と、家電量販店で購入した物をそれぞれの店舗で即日配送してもらうように頼んであった。
ベッド、ソファ、テーブル、デスク、シェルフなどが次々と運び込まれて行く。
実親は複数の配送員に運ぶ場所を指示し、千歳は邪魔にならないように端に移動して見守っていた。
一通り運び終わり玄関先で配送員を見送っていると、丁度入れ違うように家電量販店の配送員がやって来た。
冷蔵庫、洗濯機、テレビ、電子レンジ、炊飯器などを運び込んでもらう。
全て運び終わると、配送員を見送った。
そして一先ず生活する上で必要最低限の物が揃い、やっと一息つける環境が整った。
「汗掻いたしシャワー浴びさせて」
「ああ」
千歳が髪を搔き上げて首元に籠った熱を放出する。
汗で肌がべたついて気持ち悪い。
七月も間近に迫り、気温は三十度を超える毎日だ。
いくら東京暮しに慣れているとはいえ、暑いものは暑い。汗だってかく。
熱で火照り汗が滴っている首元が色っぽくて実親にとっては眼福だった。
「シャツ借りても良い?」
「適当に使って良いぞ」
「了解」
千歳は一度三階にある実親の寝室に向かう。
クローゼットを開くと、一番手前にあった黒のロングTシャツを取り出した。
二階に戻って来ると浴室に直行する。
「ついでに洗濯もさせて」
「お前の後に俺もシャワー浴びるから洗濯はその時に一緒にするぞ」
「良いけど私が洗濯機を回す」
千歳は脱衣所で衣服を脱ぎながら声を発する。
オフショルダースリムフィットTシャツを脱ぐと豊満な胸が揺れ、ワインレッド色のブラジャーが露になった。
ショートパンツと靴下を脱ぐと同じくワインレッド色で透け感のあるレースのショーツが姿を現す。
瑞々しくて張りのある臀部が美しい。
そして靴下、ブラジャー、ショーツを脱ぎ去り、アクセサリー類を外すと生まれたままの姿になった。
折角シャワーを浴びても汗を吸い込んだ服を着たら意味がない。
帰宅する途中で寄り道をしてシャンプー、コンディショナー、洗濯洗剤は買って来ている。
なので出来れば洗濯してから着たかった。
実親が自分の分と一緒に洗濯すると指摘したが、千歳は構わないようだ。
二人の衣服を一緒に洗濯するのは嫌がられるかと思ったのだが、要らぬ気遣いであった。
それでも譲れない部分はある。一緒に洗濯するのは構わないが、下着を見られるのは抵抗がある。
故に千歳は自分で洗濯機を回したかった。
「それじゃお先」
脱いだ衣服を全て洗濯機に入れると浴室に入った。
◇ ◇ ◇
千歳がシャワーを浴びている間に実親は買っておいたコンビニ弁当で夕食を済ませた。
千歳も実親がシャワーを浴びている間に夕食を済ませている。
そして今は書斎で書籍を本棚に収納していた。
実親が整理している姿を千歳は入り口の隣の壁に背中を預けて見守っている。
シャワーを浴びる前よりは薄めだが、確りとメイクし直している辺りは意識が高い。
「親父が迎えに来るんだろ?」
「うん」
既に時刻は十九時を過ぎている。
高校生なので外出しても問題ない時間だが、今日は悟が車で千歳を迎えに来る予定になっていた。
千歳は頷いた後に思い出したように口を開く。
「そういえば、聞きたいことあったんだけど」
「なんだ?」
実親は整理する手を止めずに続きを促す。
「私達が兄妹になったことを知ってる人っている?」
「一人だけいる」
「誰?」
「映画研究部の部長」
「誰それ……」
千歳は今後学校生活を送る上で自分達の関係について知っている人のことを把握しておきたかった。
しかし全く知らない人物の名前が返って来て言葉に詰まってしまう。
「幼馴染だ」
「ふーん」
幼馴染が男なのか女なのか気になったが、実親の女性事情を気にしていると勘繰られるかと思い尋ねるのは自重する。
「今度紹介する」
今後顔を合わせることもあるだろうし、幼馴染のことは紹介しておいた方が良いだろう。
「お前はどうなんだ?」
「私?」
ちょうど良い話の流れだったので実親も尋ねる。
「慧と唯には伝えてる」
「そうか」
名前の出た二人は千歳の親友であり、実親とも親しい間柄だ。
「散々揶揄われたけど……」
「だろうな」
苦笑しながら溜まっていたものを吐き出すかのように溜息を吐く千歳は、心底辟易していたのだと察せられた。
実親は肩を竦めている。
「という訳で学校には伝えてあるけど、必要ない限りは内緒にしてほしいんだけど……」
「わかった」
これ以上揶揄われるのは勘弁願いたいのが本音だ。故に可能な限り内密にしておきたかった。
流石に学校には伝えているが、学内では旧姓の山本で過ごすことになっている。突然黛姓になったら勘繰られるのは目に見えているからだ。
「ところで」
「何?」
実親は一旦手を止めて千歳の脚に目を向けた。
千歳は首を傾げたが、実親の視線に気が付き、手でTシャツの裾を引っ張って脚を隠すようにモジモジし始める。
「冷房効いているし寒くないのか?」
今の千歳は実親のロングTシャツを着ているだけだ。
下着も洗濯中なので、裸の上にTシャツを着ているだけであった。姿勢によっては大事なところが見えてしまう。
黒のTシャツなので目立ってはいないが、良く見ると胸にある二つの突起の部分が微かに浮き出ていた。
「さ、寒くないけど?」
「そうか」
千歳はなんとも思っていなかったが、実親がまじまじと見てくるので急に恥ずかしくなり顔が赤くなる。
「そ、そんなにじっと見て何さ?」
「いや、良い脚しているなと思って見惚れていた」
実親は千歳のスラっとした長くて綺麗な脚に視線が釘付けにされていた。立っているのでつま先から太股まで良く見える。
必要以上に筋肉が付いている訳でもなく、かといって弛んでもいない。絶妙な筋肉の付き方をしている。
太いか細いかで言えば細めの脚だろう。
「は……?」
千歳は実親の台詞で一瞬思考が止まり言葉に詰まってしまう。
そして意味を理解すると一層顔を赤らめた。
「えっち」
千歳は赤面している顔を髪で隠し、器用にも目線は確保して上目遣い気味にジト目を向ける。
「誉め言葉だな」
「えぇ……」
なんら恥じ入ることのない実親の開き直りように千歳は呆れてしまう。
「作家は変態であるべし、というのが俺の持論だ」
「ふふ、何それ」
書籍を本棚にしまいながら堂々としている姿が可笑しく、千歳は思わず笑みを零す。
(なんか良いな、こういうの)
千歳は実親と交わす何気ないやり取りが心地よくなっていた。
そう思うと、無意識に口から言葉が漏れる。
「ねえ」
「何だ?」
「また遊びに来ても良い?」
首を傾げて実親のことを見詰めながら問う。
「構わんよ」
「ありがと」
了承を得られて自分が思っていたよりも嬉しいと感じていることに内心で驚くが、今感じている気持ちを素直に受け入れて大事にしたくなった。
その後は悟が迎えに来るまで二人で談笑した。
楽しくて心地よい時間になっていたのは互いに秘密だ。
千歳は車に揺られながら「次はいつ遊びに行こうかな」、と考え無意識に笑みを零していたことに本人も気付いていなかった。
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