中年で汚いおっさんニートが出産子育てする話し

沖田きょう

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おっさんニートと一緒に退院_1

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元木は昼になっても病室へ戻って来なかった。

  同室の皆は、まるでそれが暗黙の了解のように誰一人として昨夜の事を話題には出さず半日が終わった。

「谷さん、ちょっと早いけど個室へ移動しましょうか」

「別のフロアなんですよね。 何階ですか?」

「一階の105号室です」

(ラッキー。キッズスペースの近くじゃん)

 俺は1階の個室に移ってから毎日のようにキッズスペースのソファで時間を潰した。

 キッズスペースの向かいにある受付にいつか、赤ん坊の時の綾○は○かを肥溜めに入れてツームストーン・パイルドライバーと腕挫腕固をくらわせて2発ぐらい殴ったような顔をしている赤ん坊を抱いた元木が退院受付に訪れるんじゃないかと思ったからだ。

 そんな事をしなくても院内を探してお礼を言えばいいじゃんと思われるかもしれないが、言わば元木は俺の命の恩人。彼女の幸せな姿を確認してからお礼を言いたかった。前回のような思いは絶対にさせたくない。

(幼女はやっぱりツインテールだよね・・・・・・)

 だけど、いつまで経っても元木は現れなかった。

 やがて俺の元に赤ん坊が戻って来てまた同室になり、とうとう退院まで後2日となってしまった。今日も俺はキッズスペースのソファで赤ん坊を抱きながら受付を見ていた。

(今日も元木来なかったな。あっ! 大平大明神だ今日退院なんだ。てか赤ん坊でっけー。あれが巨大児ってやつか、妊娠高血圧症候群だと小さめに産まれる事が多いのにスケールが違うわ)

(むっ! あれはプリピアスにヤクザイル。1ヶ月検診かな? もうそんなに経ってたのか。わっ、あっちから心愛ちゃんの場末のホスト風彼氏が来る。よし! ぶつかれ、ぶつかれ・・・)

 ドンッ!

(やった! おっさんワクワクしてきたぞ!!)

「あんっ? どこ見てんだゴラッ!」

「あっ? 下見て悪いかゴラッ!」

「こっちは赤ん坊連れてんだぞ! 前見ろやゴラッ!」

「あっ? 前も将来も見えねえよゴラッ!」

「諦めんじゃねえよゴラッ!」

「無理に決まってんだろゴラッ!」

「愚痴なら聞いてやるよゴラッ!」

「いい親だなゴラッ!」

「LINE教えろゴラッ!」

(んっ? ヤンキーってああやって仲間を増やして行くんだ・・・)

 そんなこんなで退院まで後1日となってしまった。

 結局、俺は居ても立ってもいられず院内を探し回った。例え話しが出来なくても元木の顔をもう一度見たかったんだ。

 俺は赤ん坊を看護士に預けると病院内を隈無く探した。そして、やっと沐浴室の前で元木に会う事が出来た。

「あら、久しぶりじゃない」

 顔だけを見ようと思っていたけど向こうから話しかけて来た。わりと元気そうだ。

「今ね赤ちゃんの沐浴をしてきたところなのよ」

(良かった! じゃあ赤ちゃん無事だったんだ!!)

「元木、あの時はありがとう。お陰で私は救われたよ」

「赤ちゃんはアンタが救ったのよ」

「背中を押してくれてありがとう。そうじゃなきゃ私はここに居なかった」

「相変わらず変な奴ね。退院はいつ?」

「明日だよ。赤ちゃんと一緒だよ」

「良かったね、おめでとう」

「元木はいつ退院なの?」

「まだ分からないわ。でも赤ちゃんと一緒よ」

「元木の赤ちゃん見てみたいな、きっと可愛いだろうね」

「・・・今、家族が面会してるから後でね」

 元木はニッコリと笑うとまた沐浴室に戻って行った。沐浴室はとても静かだ。きっと気持ちよくて眠ってしまったんだろう。
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