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邂逅都市メイガナーダ、月華御寮の遺しもの編
10.最短距離で攻略するには
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なんというか、なんとも難しい話になってしまった。
今までの俺は、クロウが「過去に“弱い”と判定される事があって、そのせいで敬遠されていた」のだと思っていたんだよな。
でも、ホントは……というか、少なくともあのデハイアというクロウの伯父に関しては、そんな理由だけでは無かったらしい。
「弱者など我が血族には不必要なのだ!」と軽蔑しているだけならまだマシだったんだけど……さすがに、人の生死が関わって来ると……何とも言えなくなる。
――――デハイアは、クロウクルワッハが妹を殺したと思っている。
つまり、あの伯父は、クロウがお母さんであるスーリアさんを殺したと思っていると言う話なのだ。……真偽は一先ず置いておくとして、あの人がそう考えているなら、そりゃまあ……ああなっても、仕方がない……かも知れない……。
だって、王妃にまで選ばれた才女のスーリアさんなら、当然デハイアさんも自慢の妹だと思っていただろうし、溺愛だってしていたかもしれない。
そんな肉親を、実の息子が殺したのだと思えば、憎しみは凄まじい物だろう。
むしろ無視くらいで済んでいるのが恐ろしいとすら思う。
まあ……何十年も時間が経ってるみたいだし、それで抑え込める程度には怒りを制御できるようになったってダケかもしれないけど……それでも、仮に俺がその立場に置かれたと考えたら、正気じゃいられないかも知れない。
きっと、あの人の怒りはそれ以上のものなんだろう。
…………でも、まだクロウがお母さんであるスーリアさんを殺したなんて、決まったワケじゃない。少なくとも俺は、クロウがそんな事をするとは思えなかった。
実の兄に憎まれていたって、決してこの兄の事を悪く言わなかったような奴だ。
それに……クロウは、母親が好きだった花も、お風呂好きだったことも、全部とても嬉しそうに話してくれていたんだ。そんな顔をして、殺したんだとはとても思えない。
きっと、何かの誤解があるはずだ……とは思うんだけど。
でも……怒りんぼ殿下ことカウルノスが「問えばアイツはきっと認める」と言ってるのが気になるんだよな。
少なくとも、クロウは母親の死を自分のせいだと思っている。
……もしかしたら、そのせいで今の引っ込み思案であまり表情を表に出す事のないクロウが出来上がったのかも知れない。
だとしたら、確かに……今は、聞く事も出来そうになかった。
だって、自分の背負った罪を常に自覚させるような存在がいるんだもんな。
ストレスが掛かってる状態で自分を顧みるなんて酷な事、させられないよ。
しかしなぁ、だからって……。
「…………あのう、カウルノスさん」
「だから敬語をやめろと言っただろう。お前は頭の中まで駄肉が詰まってるのか? まったく……男の体のくせに、メスらしいけしからん腹肉をしおって」
「いや、うん、すんません……? っていうか、これで本当に癒されます……? 話をするっつっても、なんか取引内容が間違ってません……?」
つい疑問符がいくつも浮かんでしまうが、無理も無かろう。
だって俺は今、カウルノスの膝の上に乗らされたまま、酒臭いオッサンに変な説教のされかたをしながら腹肉を揉まれているのだから。
…………どうしてこうなった。
いや、うん。どうしても何も、忠告をしてやったんだから少しくらい気を使えってなコトで、俺も肉をご相伴にあずかりながら膝に座ってるんだけど……何でこんな風に体をムニムニ触られているのかはよくわからない。
まあ、カウルノスの触り方は別にヤらしい感じじゃ無く、本当に癒しグッズでも揉んでいる感じなので良いんだけどさ。
しかし、こんな所をブラックに見られたらと思うと気が気ではない。
ちょっとでも見られたら、絶対に次の日はとんでもないお仕置きコースだ。
なのでホントはもうお開きにして欲しいんだけど……カウルノス以外からは聞けそうにないクロウの話だったからなぁ……。
忠告も含めて軽く話してくれたし、そのお礼はしなければならないのだ。
俺は、そういうことはキッチリやる男だからな。
ありがとうとお礼するのは当然の事なのである。
でも、そのお礼が何故か癒しを求めて肉を揉む権利ってのはなんだかなぁ。
「何が不満だ。別にお前を食わせろと言っているワケでもあるまい。それともそっちの方が良かったのか? 淫売なメスだな」
「真面目な顔して人を罵るな! ったく、人のことデブだのなんだの言いやがって」
もうやめるぞと間近にある相手の顔を振り向いて睨むと、カウルノスは朱が強い橙色の瞳で俺を見返した。
「出武? よく分からんが、俺が満足していると思ったら大間違いだぞ。お前の場合は肉が足らん。もっと肉を食って太れ。腹肉は揉み心地が良いが全然厚みが足らんではないか。この薄さでは子を産むときに死ぬぞ。男メスは死にやすいのだ」
「産む予定はねええええええええ」
ギーギーと歯軋りをしながら抗議するが、俺の抵抗など獣人のカウルノスにとってはどこ吹く風のようで、俺の横っ腹の肉を揉みながら酒を飲む。
テメこんにゃろ、これで手つきがスケベだったら思いっきりつねってやるのに。
「そう言うな。アイツは人一倍、己の血族を欲しがっているんだ。お前も我ら王族の嫁になるのなら、股が渇かぬくらい子を孕まされる覚悟はしておけ」
「マジやめてくださいそういうの言うの本当にやめて」
何でこのオッサンは恐ろしいことばかり言うんだ。嫌がらせか。
でもクロウと一緒でマジで正直なだけだからなぁあああもおおおおおおお。
「何故そんなに嫌がる。まったく……これでは先が思いやられるな。どうせ、あの赤髪の男にも死ぬほど孕まされるんだろうに」
「いやあの、俺はそういうのまだ考えられない人間なんで……ッ」
この世界での俺は「メス」である以上、もうこういう超次元なセクハラ発言をされても、メスとして甘んじて受け入れなければならないのだろう。
だが、異世界で男として生きて来た以上、俺にはどうしても「孕める」という大前提が理解出来ない。というか、深く考えたくないのだ。
けれども、それを否定するとこの世界の男メスの人に申し訳ないし……結局、まだ考えられないと言うぐらいしか抵抗する術が無かった。
ああもう、なんで男まで妊娠できるんだよこの世界は。
おかげでややこしい関係が更にややこしくなってるってのに!
「何故そう苦み走った顔をするのか分からんが……まあ、あの恐ろしい男が子を望むことがないなら、そう簡単に頷く事も出来んか」
お……?
ブラックのおかげか、何故か妙な納得の仕方をしているぞこのオッサン。
恐ろしい男、と言っているのが少し気になるが、まあ妊娠の話題から遠ざかったのは凄く良い事だ。このまま別の事に話をスライドさせよう。
そう思い、俺は水をぐびっと飲んでカウルノスに話を振った。
「そ、それより……デハイアさんの話なんだけど……やっぱり、このままだとスーリアさんの研究は見せて貰えないんだよな。クロウのことで拗れてるとしたら……こっちはどうすれば良いと思う? “嵐天角狼族”の動きも気になるし、王都も心配だし……出来れば早く遺物を見せて欲しいんだけど……」
問いかけると、カウルノスは赤ら顔で目を細めて、目下の中年らしい溝を深くした。
「フム……それについても、難しいな。ここにクロウクルワッハが滞在している以上、デハイアの機嫌を良くするのは難しいだろう」
「それヤバいんじゃ……」
「ああ、ヤバいな。だが方法が無いわけではない」
「な、なんか良い案があるのか?!」
クロウの過去を聞いてわだかまりを解消する……という方法が取れない以上、もうその方法に縋るしかない。
カウルノスの顔を見上げた俺に、相手は片眉を上げた。
「オスを釣る方法など、どこだろうが一緒だろう」
「……はい?」
「愛想、メシ、色気だ。お前のメシは申し分ない。愛想も……まあ、あるだろう。あとは、色気を勉強して来い。この館にもメス用の服は幾つか用意してあるだろうから、あとで執事に言って着させて貰え」
「えーと……あの……」
「まだ判らんのか? お前の頭はやはり駄肉詰めか? 要するに、デハイアの前で、メスらしく振舞って色気の一つでも振り撒けということだ。アイツも独り身が長い。お前くらいのメスでも、手作りメシの効果と合わせればコロっと行くだろう」
…………えーと。
つまり……ええと……俺にスケベな格好をして、手料理を振る舞ってメスっ子らしくきゃるるんとしながらデハイアさんに近付け……って、こと……?
……………………。
「いや無理ムリむりムリ!! なんで俺がっつーか無理でしょ!?」
「俺らオスがメス用の服を着ても意味が無いだろ。それに、お前はちんちくりんのくせに妙に色気はあるからな。ダメでもともとだ、やってみろ。……それ以外に、あの難癖クソオヤジを籠絡する術は無いぞ」
オス相手にはとことん頑固なんだ、と付け加えつつ酒を煽るカウルノス。
……このオッサンは、真面目な顔をして物凄く失礼な事を言うが……冗談はあまり言わない。と言う事は、本当に俺がメスとして色仕掛けする以外に方法は無いと思っているって事で……マジでそれ以上の案が思い浮かばないってことで……。
「…………えぇ……」
「クロウクルワッハが自分から過去を話せるくらいに自分を保てれば、他の解決策も有るだろうが……今は無理だろう。短期間で決着を付けたいなら、お前自身が一肌脱いで、己のオスの為に頑張るしかない」
「ぐうう……」
確かに、クロウが不安定な今の状況では過去の話もしにくい。
でも、心が安定するのを悠長に待っているヒマもないのだ。当然、デハイアさんとの和解を模索する時間も無いだろう。
だとすると…………最短で相手を落とせる策はもう……。
「……で、やるのか? やるなら、俺も協力してやるぞ。デハイアも中々のムッツリだからな。アイツが自然と目で追うような服を見繕ってやろう」
カウルノス本人は、俺を何とも思っていないような目で見やがる。
その視線の方が、俺にとってはよっぽど楽なのだが……俺の「メス」という属性が唯一の切り札になるのなら、もうどうしようもない。
「…………おねがいします……」
がっくりと肩を落として観念する俺に、カウルノスは何故か「ブフッ」と笑った。
テメこの脳筋おこりんぼ王子め覚えてろよ。
→
※ツ…エックスで言ってた通り遅れました…!:(;゙゚'ω゚'):
ブラック達出て来てなくてもうしわけねえ
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