菱形の陽暉楼(女探偵キラサとあやかしの鬼神)

南逆賊

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第十話 暗黒の女王

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 「キサマらに勝ち目は無い…だって、わらわは最強ですもの…」
 ニセのキラサは、あっさりと脱出し…その手でもう一方の糸を、引きちぎり…ユズキに化けていた奴を、地面に叩きつける…
 グシャッ!
 「グハ!ガ、ガクッ…」
その反動で蛇の妖怪は、潰れて息絶える…が、蜘蛛の姿はそこに無く…元々いなかったかの様だ…
 「ふん…役立たずめ…」
 キラサの姿をした者が…ふたり、向かい合う…
 「目障りなんスけど…」
呆れ顔の、本物のキラサ…
 「それが…母に言うセリフ…フフフ…」
その笑顔は…だんだんと引きつる…と、同時に巨大化してゆき…その小さな建物を破壊しながら、天井まで突き抜ける…
 「顔…戻しといてね…」
その状況を脅威に思うより、自分の顔のままでバケモノ化する方が、許せないキラサだった…
 顔は、確認出来ないが…その大きな足で、娘を踏みつける…人より一回り大きい程度の鬼神は…頭上の物体を両手で抑え、キラサを助ける…
 「息子よ…私を使え…」
上体を起こし…瀕死の父鬼は、手を伸ばす…彼はその手を掴む瞬間、海に落とされそうになった時の、記憶を蘇らせる…
 「何故あの時…」
 「スマン息子よ…結局…私は…」
(そう…私は、あの後…一瞬躊躇したものの、実の子を海へと叩き落としてしまった…でも、それには意味が…深海に棲む海王神に拾わせ、育てさせる事により…お前を、今の鬼神にするためだった…信じてはくれまいが…)
 「え…そんな事が…」
父の思考を、読み取り…少し驚く鬼に、物知り顔のキラサが続ける…
 「ユズはね…記憶を失ってるのよ…私の所に、夜這いに来る前の…」
 「誰が夜這いだ…助けてやったのに…正しくは時空を越えて、この世界に転生する時に、鬼だった頃の記憶をだ…」
 「で…時々ビンタして、思い出させてやってるもんね…」
 「他にやりようがあるだろ…チュ~とか…」
 「え…して欲しいの?言ってくれれば…」
 「いや…その…」
照れる彼等は、何か忘れている…
 「お~い…もうそろそろ…」
破れた屋根の上から、女王カルミカが覗き込む…
 「ゴメン…ママ…ちょっと待ってね…ユズ、早く…」
 「ん…チュ~!」
唇を突き出す鬼神…
 「違うわ!」
ドスッ!蹴りを入れて、父とのやり取りを続けさせるキラサ…
 「お嬢さん…息子を頼む…」
そう言い残し…父鬼は、気体と化し…鬼神の手の中へと、吸い込まれてゆく…
 「オオオ…」
鬼神の背中から、コウモリの羽根が這い出し、宙を舞う…
 「ユズ…私も…」 
愛おしそうに見つめる、キラサを脇に抱え…共に飛び、女王の眼前に…
 「お母様…お美しいです事…」
彼女と同じ、銀髪の美しい女王は、キラサとよく似た顔をしていたが…その目は、光を失っていた…
 ガッ!
次の瞬間、大口を開け…ふたりを呑み込む…
 ズルズルズル…ゴクン…ペロリ…
 「美味しかった…これで、永遠の若さと鬼神の力は、ワタクシのモノ…フフフフフ…」
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