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𝐓𝐫𝐮𝐞 𝐋𝐨𝐯𝐞 𝟒
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「何故貴方が謝るんですか。それより、首を噛まれていませんか」
心配そうに尋ねてくる彼の言葉通り、首の後ろに手を置いてみる。幸いな事に首は噛まれておらず、未遂のままだ。舐められた時はヒヤッとしたが、本当に良かった。安堵する僕を見て、白雪さんも困った様に小さく笑い、注射器を抜く。
「あまり自分を責めないで下さいね。発情期が終わる迄鍵を閉めておけば、もう誰も入って来たり、怖い事が起きたりはしませんからね」
「有難う御座います…白雪さん」
シーツで身体を包みながら心から感謝を告げる。
白雪さんが居て良かった、と泣きそうになりながら、ふと彼の足元を見据える。驚いた事に、発情期に当てられて自分を襲ってきたのは瀬名さんだった。ぐったり項垂れる様に床に倒れている。
「瀬名さんだったんだ…」
「………多分、暫くは目が覚めないと思うので休憩室に連れて行こうと思います。それにしてもこの男だったとは。発情期が終わった時、万が一また襲われたりでもしたら…」
不安そうにブツブツ不吉な事を呟く彼に、慌てて「それは大丈夫ですよ」とかぶりを振る。第一、彼は僕の匂いに当てられ、この様な行為に至ったに過ぎないのだ。故意で僕に手を出す理由は見つからない。
「琥珀様は警戒心が無さすぎるのです。そんなんだったら、いつかその無防備さにつけ込まれてしまいますよ」
「………ごめんなさい」
無防備かは分からないが、警戒心は確かに備えておくべきだ。彼の説得に納得した僕は素直に謝る。よし、と頷いた白雪さんは、そのまま項垂れた瀬名さんを肩に抱えて扉迄向かう。
「それじゃ、私はこれで。発情期が終わったら、またあのニートのお世話をして頂けると嬉しいです」
「…!勿論です!」
では…と部屋を出て行く二つの背中を見送る。緊張の糸が解けたのか、力が抜けた僕はそのまま床に寝転ぶ様に倒れた。胸に手を当てると、まだ鼓動がドクドクと鳴り続けている。
(そうだ、全部終わったら、また麗二と一緒にーー……)
「ーー……っ?!」
その瞬間、心臓がドクン、と強く鳴ったのを感じた。 落ち着いていた筈なのに、心臓が突然強く脈打ち始めたのだ。先程迄とは比べ物にならない程の突然の激しいヒートに「あぐっ」と苦しい声が漏れ出る。床に這いつくばった状態で、なんとか扉の前迄向かって行く。
(た、大変だ。いきなり激しくなってきた。多分白雪さんはもう戻って来ない。早く、早く扉を完全に閉めないと……鍵、掛けないと、また迷惑を……)
床に這いつくばったまま、上半身を軽く浮かせてドアノブに手を伸ばす。しかし、そのドアノブは次の瞬間、外側に静かに引かれた。ドクドク煩い心臓を抱えたまま、僕は恐る恐る顔を上げる。
心配そうに尋ねてくる彼の言葉通り、首の後ろに手を置いてみる。幸いな事に首は噛まれておらず、未遂のままだ。舐められた時はヒヤッとしたが、本当に良かった。安堵する僕を見て、白雪さんも困った様に小さく笑い、注射器を抜く。
「あまり自分を責めないで下さいね。発情期が終わる迄鍵を閉めておけば、もう誰も入って来たり、怖い事が起きたりはしませんからね」
「有難う御座います…白雪さん」
シーツで身体を包みながら心から感謝を告げる。
白雪さんが居て良かった、と泣きそうになりながら、ふと彼の足元を見据える。驚いた事に、発情期に当てられて自分を襲ってきたのは瀬名さんだった。ぐったり項垂れる様に床に倒れている。
「瀬名さんだったんだ…」
「………多分、暫くは目が覚めないと思うので休憩室に連れて行こうと思います。それにしてもこの男だったとは。発情期が終わった時、万が一また襲われたりでもしたら…」
不安そうにブツブツ不吉な事を呟く彼に、慌てて「それは大丈夫ですよ」とかぶりを振る。第一、彼は僕の匂いに当てられ、この様な行為に至ったに過ぎないのだ。故意で僕に手を出す理由は見つからない。
「琥珀様は警戒心が無さすぎるのです。そんなんだったら、いつかその無防備さにつけ込まれてしまいますよ」
「………ごめんなさい」
無防備かは分からないが、警戒心は確かに備えておくべきだ。彼の説得に納得した僕は素直に謝る。よし、と頷いた白雪さんは、そのまま項垂れた瀬名さんを肩に抱えて扉迄向かう。
「それじゃ、私はこれで。発情期が終わったら、またあのニートのお世話をして頂けると嬉しいです」
「…!勿論です!」
では…と部屋を出て行く二つの背中を見送る。緊張の糸が解けたのか、力が抜けた僕はそのまま床に寝転ぶ様に倒れた。胸に手を当てると、まだ鼓動がドクドクと鳴り続けている。
(そうだ、全部終わったら、また麗二と一緒にーー……)
「ーー……っ?!」
その瞬間、心臓がドクン、と強く鳴ったのを感じた。 落ち着いていた筈なのに、心臓が突然強く脈打ち始めたのだ。先程迄とは比べ物にならない程の突然の激しいヒートに「あぐっ」と苦しい声が漏れ出る。床に這いつくばった状態で、なんとか扉の前迄向かって行く。
(た、大変だ。いきなり激しくなってきた。多分白雪さんはもう戻って来ない。早く、早く扉を完全に閉めないと……鍵、掛けないと、また迷惑を……)
床に這いつくばったまま、上半身を軽く浮かせてドアノブに手を伸ばす。しかし、そのドアノブは次の瞬間、外側に静かに引かれた。ドクドク煩い心臓を抱えたまま、僕は恐る恐る顔を上げる。
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