22 / 200
第二章
splash 20
しおりを挟む「残念。もっと触っていたかったのに。」
本当に残念そうな顔と声で、そんな事を言わないで欲しい。ただでさえ、憧れの俳優に抱き締められて驚いているというのに。
顔を背けながら「そもそも!どうしてこんな所にいるんですか」と問うと、彼は、ふふふっ、と何かを企んだ様な笑みを漏らした。まさか…と思いつつも、この時の俺は聞かずにはいられなかった。
「貴方…っ、仕事を放って来たり……?!」
「そんな事しないってば。それに、俺が此処に来たのは、君に会いに来た理由が八割で、後の二割は呼ばれたからなんだよ。」
あ…仕事で呼ばれて来たのか…って、目的の八割が俺って…!
「か、からかわないで下さい!!」
「あはは、真っ赤。」
クスクス笑いながら頭を撫でてくる彼の悪戯っ子の様な、初めて見る表情に鼓動が増していく。初めて会った時から思うけど、どうして自分はこの男にこんなにも胸が熱くなるのだろう。相手が、あの早坂 伊織だからか、それとも………
「伊織。こんな所で何してるんですか。」
「!」
突然、別の男の声が背後から聞こえて振り返る。
パタパタと駆けつけて来たのは、真っ黒なスーツを身に纏った男。茶髪だが、眼鏡を掛けていて真面目そうな雰囲気を醸し出している。
「変なヘマはしない様に忠告したばかりですが……」
「あはは、早速暴走してしまったみたいだ。ごめんね、マネージャー。」
「マネージャー?!」
二人のやりとりを聞いて仰天する。
この人……マネージャーにすら何も言わずに……。
「この男が、''シユン''ですか。」
「!」
名前を呼ばれ、ビクッと肩を震わせる。マネージャーの冷めた様な視線が一瞬突き刺さってきて怖気付いた。あまりにも冷えた視線を向けられたので、何も言わずに見つめ返していたら、早坂 伊織が「ちょっとちょっと」と割って入って来た。マネージャーは何か言いたげな表情をして、一歩後ろへ下がって顔を背けた。
「悪いね、シユン君。コイツ、人見知りで…」
「い、いえ…」
視線が人見知りっていうレベルじゃ無い気がしたのだが……?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
117
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる