触れたくて触れられない

よんど

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第二章

splash 20

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「残念。もっと触っていたかったのに。」


本当に残念そうな顔と声で、そんな事を言わないで欲しい。ただでさえ、憧れの俳優に抱き締められて驚いているというのに。

顔を背けながら「そもそも!どうしてこんな所にいるんですか」と問うと、彼は、ふふふっ、と何かを企んだ様な笑みを漏らした。まさか…と思いつつも、この時の俺は聞かずにはいられなかった。


「貴方…っ、仕事を放って来たり……?!」

「そんな事しないってば。それに、俺が此処に来たのは、君に会いに来た理由が八割で、後の二割は呼ばれたからなんだよ。」


あ…仕事で呼ばれて来たのか…って、目的の八割が俺って…!


「か、からかわないで下さい!!」

「あはは、真っ赤。」


クスクス笑いながら頭を撫でてくる彼の悪戯っ子の様な、初めて見る表情に鼓動が増していく。初めて会った時から思うけど、どうして自分はこの男にこんなにも胸が熱くなるのだろう。相手が、あの早坂 伊織だからか、それとも………


「伊織。こんな所で何してるんですか。」

「!」


突然、別の男の声が背後から聞こえて振り返る。
パタパタと駆けつけて来たのは、真っ黒なスーツを身に纏った男。茶髪だが、眼鏡を掛けていて真面目そうな雰囲気を醸し出している。


「変なヘマはしない様に忠告したばかりですが……」

「あはは、早速暴走してしまったみたいだ。ごめんね、マネージャー。」

「マネージャー?!」


二人のやりとりを聞いて仰天する。
この人……マネージャーにすら何も言わずに……。


「この男が、''シユン''ですか。」

「!」


名前を呼ばれ、ビクッと肩を震わせる。マネージャーの冷めた様な視線が一瞬突き刺さってきて怖気付いた。あまりにも冷えた視線を向けられたので、何も言わずに見つめ返していたら、早坂 伊織が「ちょっとちょっと」と割って入って来た。マネージャーは何か言いたげな表情をして、一歩後ろへ下がって顔を背けた。


「悪いね、シユン君。コイツ、人見知りで…」

「い、いえ…」


視線が人見知りっていうレベルじゃ無い気がしたのだが……?
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