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第三章
splash 28
しおりを挟むいやいや、よくよく考えたらおかしくないだろうか。
雑誌の撮影が終わるなり、パイプ椅子に腰を掛け、考える人ポーズを取る俺。未だに朝の一連の流れが信じ難い。
顔を顰めていたら、通り掛かったレイに「シユン」と呼ばれる。上を向くと、レイがペットボトルを此方に差し出して立ち尽くしていた。
「くれるのか?」
「ん、間違って買ったからあげる。」
………。
色々思う事はあるが、素直に受け取る事にした。「ありがとう」と受け取り、キュポンとボトルの蓋を開ける。
「お前、コラボCM決定したんだってな。あの、早坂 伊織と。」
「あ……」
やっぱり、よく思って無いだろうな。あまりにも美味し過ぎる話だ。ただでさえグループのセンターをやらせて貰ってるのに。
「………お前って、意外と…」
「……?」
不意に、頭上でレイが何か言い掛け、顔を上げると、何やら考える素振りを見せた。「レイ?」と問うと、彼は屈託の無い笑顔で「なんつー顔してんの」と、髪の毛をグリッと回す様に触れてきた。
「シユンの考えてる事、鈍感な俺でも何となく分かったぞ。言っとくけど、お前がセンターなのも、コラボCMで選ばれたのも実力だから。」
「!」
「それに、お前なんて直ぐに抜かしてやるから。」
ハハッと空笑いで続けて、頭をわしゃわしゃと撫で回す彼に、俺は苦笑した笑みと一緒に「セットしたのに」とだけ返す。レイはキョトンとした表情の後、嬉しそうに告げた。
「シユンって、話してみると、クールじゃ無いな。そっちの方も好きだぞ、俺は。」
クールでいなければいけない。
だけど、レイに言われたその一言だけは嬉しく思った俺は、もう一度素直に笑みを返した。
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