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第五章
splash 45
しおりを挟む『へぇ~、そんな事があったんだね……。』
スマホの向こうからリンのそんな声が聞こえてくる。
ライブ配信直前なのにも関わらず、俺は呑気にリンに今日の事を話していた。因みに、俺は「デート」とは言っていない。
「俺は…まるで、義務みたいな言い方をされたのが嫌だった。返して貰いたくて時間を与えた訳じゃ無いから……」
『……早坂 伊織も、よくない言い方をするけど、もしかしたら、彼なりの愛情表現だったのかもね。』
愛情表現?
問う前に、『ほら、あの人、シユンの事大好きじゃん』と揶揄う声が聞こえてくる。驚いて反射的に「な、何で!」と前のめりになる。
『あの人、CMの撮影の時もシユンしか見てなかったもん。シユン大好きだー!って感じ。握手会に来るくらいだしね~。』
「!」
握手会の時の男が早坂 伊織だと気付いていたのか。
呆然と、「そう、なのか」と返す。すると、今度はクスクスと楽しそうに笑う声が聞こえてきた。不服に思い、「何」と聞くと、『いやぁ…』と彼のワントーン上がった声がした。
『シユンって、意外と早坂 伊織の事好きだなぁって。』
「………は?!そんな訳無い…だろ。」
『だって気にしてるじゃーん笑。』
戸惑いながらそう返していて、動きを止める。
確実にあの人のペースに呑まれているのを、今完全に自覚した……。
『二人とも何だかんだで仲良いもんね。クールなシユンの照れた顔とかも見れたし♪』
「そ……っ!」
そっちが本当の姿だからとは流石に言えまい……。
行き場の無い手を這わせて、静かに下ろす。そのタイミングで、ガサッとマイクを装着する音が聴こえ、同時に『マイクチェックマイクチェック』と声が聞こえてきた。どうやら、レイとソウも揃ったみたいだ。
『この続きは、また今度ね☆』
アイドルみたく、きゅるんとした声で言ってから、全国生放送の方に繋げるリン。
色々思う事は有るが、取り敢えずは生配信の方に集中する事にした。
「……次の撮影の私服…これ、着て行って良いのか。」
生配信が無事終わり、お風呂に入ってから、紙袋の中から服を取り出す。真新しい服をバッと広げて改めて見るが、やっぱり、服のセンスは良くて気に入っている。モヤモヤしながらも、ハンガーに掛けようとして立ち上がったその時。
「……?何、これ。」
立ち上がった拍子に落ちてきた一枚の薄い紙。
拾い上げると、そこには番号が二つ綴られていた。
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