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第六章
splash 59
しおりを挟む「お風呂有難う御座いました………って。」
あれ、と眉をピクッと上げながら、扉を開く。
リビングには、既に誰も居なくてガランとしていた。どうやら別の部屋にいる様だ。
「!」
不意に、カタン、と音が聞こえて振り返る。お風呂より二つ向こうの扉からだ。ギュッと、着ているシャツの袖を握る手に力を込めながら歩き出す。ぺたぺたと、廊下を歩く足音が響く中、奥の扉を恐る恐る開けた。
「…………」
開けた先の光景に、軽く目を見開いた。
何故なら、自分の部屋と同じ様に、部屋には大きな本棚が立ち並んでいたのだ。流石に自分の寝室の本棚は、ここまで大きく無かったが。彼のは天井に届くくらい高く、ハシゴを使わないと届かないくらいだった。
「………」
視線の先には、デスクでヘッドフォンを付けて何やら作業をしている早坂 伊織本人が居た。背後に居る自分には気付いていない様子だった。
「……!これ。」
ふと、床下に散らかされている一つの冊子に目が届く。手に取ると、それは、映画の脚本だった。この映画の主役は確か男だったが、まさか、それも担当するのだろうか。
「シユン君、居たのか。」
「…!すみません、勝手に。」
声を掛けられた瞬間、若干の後ろめたさを感じて、手に取っていた脚本をパタンと勢いよく閉じた。ヘッドフォンを若干ずらしながら、彼は、なんて事のない様に目を細めてこちらを見据えた。
「気にしてないよ。それより、臭いは取れたかな。」
回る椅子に座っていた彼は、くるりと体をこちらに向けながら顔を上げる。「お陰様で」と、頭を下げながら服の袖を持ち上げてみせる。
「ただ、……やっぱり伊織さん、ガタイ良いですね。結構ぶかぶかで、下は要りませんでした。」
「…………シユン君。」
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