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第十七章
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しおりを挟む「それじゃあしっかり説明して貰おうじゃないか、伊織さん」
侍の様な口調でふんぞりかえるレイの態度に「こら」と、すかさずキッチンの方からソウが指摘するが直る気配は無い。
あれから、そのままシェアハウスに来た俺と伊織さん。心配そうに出迎えてくれたリンは隣に立つ彼を見るなり、驚愕。続けて出てきたレイは伊織さんをずるずると無言で中に連れ込み、正座させている……かれこれ十分程今の今迄。
その光景を困った様に眺めるソウ。
溜息を吐きながら温かいタオルを持って来たソウは、目の前で居心地悪そうに縮こまる俺の瞼にそっと当てて、視線の先の彼に告げた。
「伊織さんのあの発言について、俺からも聞きたい事が。あれは一体何ですか。またマスコミに張られたりしたら活動に支障が…」
「シユン君と付き合う事になりました」
遮る様に告げる伊織さんの発言に、目を丸くする一同。
数秒後に「二人は付き合っていたんじゃ…?」と首を傾げるリンに、俺は罰が悪い気持ちで恐る恐る答える。
「その……今迄は全部お試し付き合いというやつで……」
「はっ?!今迄あんなにイチャイチャしておいて、あれ全部がお試し?!ていう事はあんた…シユンにまだ手を出してないのか?」
「いや、キスはしたよ。何回か」
レイがホッとした表情をつくるが、伊織さんの返しに再び炎上。「手ぇ、出してるじゃんか!」と顔を真っ赤にして反抗している。まぁ、最初はまだしも後半からのキスは俺も受け入れ始めていたから伊織さんだけが責められる筋合いは無い。本題はここからだ。
「皆、今日まで色々迷惑掛けてごめん。俺、伊織さんと本気で付き合う事にした」
「!」
動きをピタッと止めるレイ。
更にリンとソウも心配そうに真っ直ぐな目でこっちを見てきた。ギュッと、緊張で震える手に力を込めながら「その…」と声を振り絞る。横から伊織さんが優しく握ってくる。大丈夫、今の俺の気持ちをしっかり伝えるんだ。
「男同士で恋愛とか、仕事はどうするのかとか、色々言いたい事はあると思う。俺自身も、この先どんな風になるのか不安だし怖い。俺の我儘だけど…」
それでも。
隣の彼を見据え、涙交じりに微笑む。伊織さんは弓形に細めた目で頷く。視線を逸らすと、目の前の大好きな三人を真っ直ぐ見つめて続ける。
「この人と一緒に居たい。辛い事も楽しい事も全部乗り越えていきたい。一緒に過ごす内にそう思えるくらい、俺はこの人の事が………好き、なんだ」
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