16 / 99
第二部 魔法使い、双子の悪魔との日々
16
しおりを挟む
.....誰だ、こいつは。
自分でもびっくりする位大きく表情が歪んだのが分かった。ギョッとしたセルは「そんな顔しなくてもいいだろ」と不機嫌そうに指摘してくる。
「ヨルだってリュシーの前だとあんなににこにこ笑っているくせに」
「に.....、俺の事は別にいいだろ。それより、もう勝手に寝室に入ったりするな。起きた時どう言い訳するんだ」
何となく会話の端切れが悪くなり無理矢理打ち切る。どんどん変わっていくセルとは違って、俺はずっと何も変わっていない。最初に嫌な態度を向けていたからこそ最近の俺は凄く変わった様に思えるのかもしれないけれど、外面を良くして大人しくしているだけだ。.....それだけ。
(別にリュシーが喜ぶからとか、そんな事.....、.....別に関係ない)
言い聞かせれば言い聞かせる程、変に自分の気持ちと行動が矛盾している事に気付いていく。かぶりを振った俺はさっさと片付けを済ませるとセルより先に自室に篭った。
***
一緒に住む様になって二人と街へ出掛けるのは今日が初めてだ。
自前のローブを纏い、後ろに引っ掛かった長い髪の毛を前にする。そして、用意した二人用のローブを「じゃーん」と彼等の前に掲げて見せる。
「これは特殊な魔法を施した僕特製のローブなんだ。これを着ていると人間の目には別の者の様に映る『着る幻覚魔法』だよ」
二人の雰囲気に合わせて作った黒色のローブ。セルとヨルの身長がすっぽり隠れて、ふふっと無意識に笑っていた。
「二人ともまだまだ小さいね」
「.....これから伸びるんだよ」
ちょっとだけ不貞腐れるセル。
揶揄って嫌な思いをさせただろうか、そう思って「ごめんね」と彼に手を伸ばそうとした次の瞬間、胸位の高さだったセルがいつの間にか自分を見下ろして立っていた。セルを見てギョッとヨルが目を見開いている。
積み上げられた箱の上に乗ったセルの見慣れない視点に「セル」と動揺してしまう。
「──リュシーだって小さい。もう少ししたら直ぐに追いつく」
「.....ぁ」
吸い込まれる様な漆黒の瞳に見つめられ、か細い声が喉の奥からこぼれていく。セルから向けられた真剣な表情が新鮮で、まるで成長した青年と重なって見えて直視出来ない。
「.....ちょっと揶揄い過ぎたね」
ぽふん、とセルの頭に手を置いて撫でる。
キョトンと見上げてくる彼に笑い掛けながら「そろそろ出ようか」と家の扉を開ける。
何事も無かったかの様に無理矢理やり取りを終わらせた自分を見て、無言で箱から降りて着いてくるセル。そんなセルの隣でボソボソと何かを言うヨル。彼等に背を向けていた僕は──心臓をバクバクさせていた。
自分でもびっくりする位大きく表情が歪んだのが分かった。ギョッとしたセルは「そんな顔しなくてもいいだろ」と不機嫌そうに指摘してくる。
「ヨルだってリュシーの前だとあんなににこにこ笑っているくせに」
「に.....、俺の事は別にいいだろ。それより、もう勝手に寝室に入ったりするな。起きた時どう言い訳するんだ」
何となく会話の端切れが悪くなり無理矢理打ち切る。どんどん変わっていくセルとは違って、俺はずっと何も変わっていない。最初に嫌な態度を向けていたからこそ最近の俺は凄く変わった様に思えるのかもしれないけれど、外面を良くして大人しくしているだけだ。.....それだけ。
(別にリュシーが喜ぶからとか、そんな事.....、.....別に関係ない)
言い聞かせれば言い聞かせる程、変に自分の気持ちと行動が矛盾している事に気付いていく。かぶりを振った俺はさっさと片付けを済ませるとセルより先に自室に篭った。
***
一緒に住む様になって二人と街へ出掛けるのは今日が初めてだ。
自前のローブを纏い、後ろに引っ掛かった長い髪の毛を前にする。そして、用意した二人用のローブを「じゃーん」と彼等の前に掲げて見せる。
「これは特殊な魔法を施した僕特製のローブなんだ。これを着ていると人間の目には別の者の様に映る『着る幻覚魔法』だよ」
二人の雰囲気に合わせて作った黒色のローブ。セルとヨルの身長がすっぽり隠れて、ふふっと無意識に笑っていた。
「二人ともまだまだ小さいね」
「.....これから伸びるんだよ」
ちょっとだけ不貞腐れるセル。
揶揄って嫌な思いをさせただろうか、そう思って「ごめんね」と彼に手を伸ばそうとした次の瞬間、胸位の高さだったセルがいつの間にか自分を見下ろして立っていた。セルを見てギョッとヨルが目を見開いている。
積み上げられた箱の上に乗ったセルの見慣れない視点に「セル」と動揺してしまう。
「──リュシーだって小さい。もう少ししたら直ぐに追いつく」
「.....ぁ」
吸い込まれる様な漆黒の瞳に見つめられ、か細い声が喉の奥からこぼれていく。セルから向けられた真剣な表情が新鮮で、まるで成長した青年と重なって見えて直視出来ない。
「.....ちょっと揶揄い過ぎたね」
ぽふん、とセルの頭に手を置いて撫でる。
キョトンと見上げてくる彼に笑い掛けながら「そろそろ出ようか」と家の扉を開ける。
何事も無かったかの様に無理矢理やり取りを終わらせた自分を見て、無言で箱から降りて着いてくるセル。そんなセルの隣でボソボソと何かを言うヨル。彼等に背を向けていた僕は──心臓をバクバクさせていた。
239
あなたにおすすめの小説
身代わりの出来損ない令息ですが冷酷無比な次期公爵閣下に「離さない」と極上の愛で溶かされています~今更戻ってこいと言われてももう遅いです〜
たら昆布
BL
冷酷無比な死神公爵 × 虐げられた身代わり令息
一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったら引くほど執着されてた
時
BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。
志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。
美形×平凡。
乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。
崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。
転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。
そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。
え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる