<本編完結>転生巫女は腹黒宰相と狂い咲く

汐瀬うに

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帝都 ヴェルヌ

04.危険な快感*

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「斎藤 茉莉…です。私、悪気…は、なくて!あの、気付いたら…ここ、に、落ちていて…っ」


 焦燥感と恐怖が相まって、声が震える。単純な言葉ですら、何故かうまく話せない。振り返って、この声の主に事情を伝えたいだけなのに、自分には振り返ることすらも許されていないような。圧倒的な存在感をひしひしと感じる。

「なるほど。…お前が言う言葉が、嘘か誠かは後々わかることだ。だが、そこは水の妖精ニンフの泉。その泉に入ることは、我々の定める巫女のみが許されている。」

 カツ、カツ、カツ、と一歩ずつ、確かに自分の元へ、声の主が歩いてくる足音が近づく。ゆっくりと歩くその足音から、じりじりとした怒りと、こちらを観察するような目線を浴びせられているような気がする。

 あぁ…私入ってはいけないところに落ちたんだ…そりゃ怒るはずだよね…と頭で理解すると、茉莉はしょげた様子で自ら泉の淵へと進み、顔を下へ向けたまま、ゆっくりと声の主の元へと足を進めた。

 出来る限り、彼らの怒りを買いたくてここにいるわけではないこと、自分だって悪いことだと分かっていてやったわけじゃないということを、少しでも理解してもらいたい。

「すみません、勝手も知らず、あなた方の大切な場所を汚してしまって…」

 まずは謝り、申し訳なさげに眉を下げる。そのまま相手の心情に寄り添って話すのが効果的だと、新人研修のクレーム処理で習ったのを思い出した。その次は、相手が怒っている理由を知る。そして、それをどうしたら打開することが出来るか相談する…だっけ。うろ覚えだけれど、これが少しでも通用すれば、最悪命くらいは助かるかもしれない、そんな淡い期待を寄せた。

「ん…まぁよい。マリ、といったな。お前、そのままそこにいて、辛くはないか。」

 銀髪の青年は、くくっと喉元を鳴らす。

「あ、えぇ…お気遣いありがとうございます!」

 色々な段階をすっ飛ばしていることにも気付かず、茉莉は自分の身を案じてくれたような質問に、うまくいった!と思い、嬉しさのあまり、とっさに相手の顔を見上げた。



 あぁ、声の主と目が合った、そう感じた瞬間。青年はほんの一瞬で何かを察すると、あぁ…と呟き、口元に充てた手の下で、嬉しそうに口角を釣り上げた。



 茉莉の体が光を放って宙に浮き、下半身にゆっくりと光が集まる。


「えっ…!っあ……なにっ!…あっ…ああぁっ…あっ!…あぁっ…こっれ…だっ…めぇ…えぇっ」


 急に自身が浮き上がった不安と、猛烈に押し寄せる下腹部への快感に、挙動が追い付かない。急激に上がる心拍数に顔を赤らめ、眉をゆがませながら、ワンピース一枚の茉莉の身体は空中で弓なりに体をしならせ、両足は痙攣し、指先までひくひくと動いている。

 表にボタンや留め具のないシンプルなワンピースだからこそ、張り詰めた双丘の先はぷっくりと主張をし、細身なのに小さくはない胸を、青年にしっかりと見せつけるような姿になっていた。

 青年は、微動だにせずただじっと、にやりと笑ったまま、茉莉を見つめ続ける。


 セックスなんて、もうだいぶ前からしなくなっていたし、欲求不満な夜でも自分自身で触ったりなんてしていない。それなのに、今全身に感じているこの感覚は、確実に、あの、絶頂に達した時の感覚…いやそれ以上に一瞬で虜になってしまうような、強く危ないレベルの快感だと本能で感じる自分を、茉莉はなぜか冷静に俯瞰し、驚いていた。
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