目指せ100万円！ドキドキ！？カラオケチャレンジ

その3

　「デハ　ツギノ　チャレンジ　ハ　８０テン　デス」

　３曲目のイントロが流れる。今度もよく聴いていた楽曲だ。

　（あの程度の妨害なら、次こそは！）

「プシュー……プシュー」

　「…………」

　今度はイントロから妨害が始まったが、心を静め、落ち着いた表情で歌いだすリホ。

　「プシュー……プシュー」

　しつこい妨害にも淀みなく歌い続けるリホ。１コーラス目を無難に歌い終える。

（よしよし！ここで決めるわ！）

　「しゅるるる……」

　間奏の合間にリホの間近で異音がする。
　そしてもうすぐ間奏が終わろうとするタイミングで。

ぐいっ！！

「きゃあぁぁぁぁ！！」

　何もしていないのに、リホのデニムミニスカートが捲り上げられ、水色のパンツが露になってしまった。

「ちょっと！どうなってるの！？」

　慌ててスカートを戻そうとするが、何かに引っ張り上げられているのか全く戻らない。
　よく目を凝らしてみると、うっすら透明の紐のようなものが見え、どうやらその紐とフックでスカートが吊り上げられているようだ。
　しかもいつの間にか目の前のモニターには、歌詞と共にスカートを捲られパンツを露にされたリホの姿が映し出されている。

「ちょっと！やめてください！！」

　必死でスカートを戻そうとしながら、抗議の声を上げる。しかしそんな声を無視し曲は続く。

「こんなことするなんて聞いてないです！ちょっと！聞いてるんですか！！」

　なんとかフックを外そうとするが、どういう訳か一向に外れない。マイクを投げ出し、両手で少しでも見えない様に隠すのが精いっぱいのリホ。
　そして無情にもそのまま曲は終了する。紐もまた同時に外れていった。

「デハ　サイテンデス……55テン！　スコシ　チョウシガ　ワルカッタデスカ？」

　何事もなかったように淡々と質問してくるキャラクター。

「こんなエッチなことされるなんて聞いてません！大体こんな事放送できるんですか？」

「ゴシンパイナク　タダイマ　トクベツカイイン　ゲンテイノサイト　ニテ　ゼッサン　ライブハイシン　シテオリマス」

「なっ……ライブ配信……」

　まさかの急展開に耳まで真っ赤にし、今にも卒倒しそうなリホ。

「デハ　ツギノ　チャレンジ　デス」

「誰がするもんですか！もう帰ります！！」

　そしてドアノブに手をかけるが……

　ガチャガチャ　ガチャガチャ……

　外からロックされているらしく重厚な扉はびくともしない。

「ルール　クリアデキルマデ　カエレマセン」

「今すぐここから出しなさい！」

　開かないドアノブを尚も回しながら画面のキャラクターを睨みつける。

「ソレニ　オネーサンニハ　コノゲームニ　チャレンジスル　ギムガ　アリマス」

「何よそれ！こんな事に付き合わされる義務なんて無いわ！」

　すると画面が切り替わり、先程リホがサインした書類が大写しになる。

　その書類がくるりと裏返しにされると……

「出演者による番組進行を妨げる行為があった場合、出演者は番組制作側に損害賠償金として1000万円を支払うものとする」

「なっ……そんなの知りません！」

「ホラ　キチント　サインサレテマス」

「……」

　何という理不尽な契約書なのだろうか。当然この様な契約は無効なのだが、あまりの展開と羞恥心でパニック状態のリホは自分の失態だと思い込んでしまった。

「ゴナットク　イタダケマシタラ　サイカイデス」
　
「覚えてらっしゃい……」

　画面を睨みつけながら渋々元の位置に戻るリホ。

　(ここまで来たら賞金取って、関係者全員警察に突き出してやるんだから！)

　元来正義感と負けん気の強いリホ。売られた喧嘩は買ってやるとばかりに、この状況下で逆に闘志を漲らす。