正体を隠せているつもりのエリートポンコツな可愛すぎる妻のため、僕は今日も暗躍する

境ヒデり

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プロローグ おしどり夫婦の方が、爆弾的な秘密を抱えてるもので

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 愛する妻に、どうしても言えない秘密がある。

 それも、一つや二つではない。

 もし全てを打ち明ければ、僕たちは夫婦でいられなくなるだろう。

――それでも僕は、彼女を愛している。

 だから今日も、彼女にだけは知られないように、僕は静かに嘘を重ね続けている。








 世の中の愛し合う夫婦達は、お互いの全てを知っているのか。答えは否だ。

 どれだけ相手の事を信用して、心の底から愛していようとも、言えない秘密の一つや二つは付き物である。もし、「俺達私達には何も秘密なんてありません」などと口にする夫婦がいるならば、本当に人間の夫婦かどうか疑ってしまうというもの。

 そして、その『言えない秘密』の種類は実に様々だ。

 小さいものなら、相手には内緒でへそくりを貯金していたり、恥ずかしくて口に出せない趣味があったり。大きいものなら、それこそ不倫や一夜のあやまだったり。

 しかし、抱えている秘密が大きいか小さいかなど、墓場まで持っていけばもはや関係の無い事。善悪はともかく、知らなければ得られる幸せというものが、確かに存在するのも事実である。

 ご近所さんから『おしどり夫婦』と揶揄やゆされる程、自他共に認める仲良し夫婦である僕と妻も、その例外では無い。この世にいる無数の夫婦達と同様、お互いがお互いに言えない秘密を保持している。

 勘違いして欲しくないのが、不倫や一夜の過ちでは断じて無い。僕は妻の事を世界で最も愛しているし、きっと妻も同じように感じてくれていると思う。未だに夫婦で夜の営みをした事が無いのに、他の人と体の関係を持つなど万に一つも有り得ない。

 では、一体どんな秘密があるのか。夫婦間の事を根掘り葉掘り知りたがるとは無粋だな、と言いたいところだがまぁいい。何故なら、僕達夫婦の秘密など、とても些細なもので、知った所で何の面白味も無いものなのだから──

「ルミ君!見て下さいっ!!池の中にお魚が泳いでます!!」
「リ、リリさん!!そんな前のめりに覗き込んだら危なっ──!!」
「わ、わぁぁああ!!」

 池の中を泳ぐこいを見付けて、はしゃいだあまりその池に落ちていった女性。彼女こそが、僕の最愛の妻である。

 落ちた池から頭を出し、「ぷはぁ!」と声を漏らしながら、びしょ濡れの顔に付いた水滴を拭うリリさん。

 焦りながらそこに駆け寄った僕に向けて、リリさんは申し訳無さそうに控えめな笑みを浮かべながら、

「あ、あはは……ごめんなさい。またやっちゃいました……」
「大丈夫ですか!?」
「はいっ!怪我とかは一切していません!」
「良かった……リリさん、気を付けて下さいね?」
「はい……何と言うか、ルミ君と一緒にいると幸せ過ぎて気が抜けちゃうんですよね……えへへ……」

 そう言って、照れたようにはにかむ彼女。うん、何と言うか……

 可愛いいぃいいい!!!可愛すぎるよこの女性!!

 え、尊すぎない?天使なのかな?リリさんが話す言葉だけ全部可愛く聞こえるのは、何かの魔法!?そんな魔法聞いたことも無いけれど!

 …………コホンッ。

 申し訳ない。舞い上がり過ぎて、何の話をしていたか忘れてた。あぁ、そうだ。僕たち夫婦の秘密についてだったね。

 僕の秘密は、過去に一度何やかんやあってこの国の旧政府高官達を全員亡き者にして、その結果、晴れてこの国の大罪人として、今もなお最重要指名手配のお尋ね者である事。

 そして、絶賛池の中にいる僕の妻の秘密は、現政府直属の暗殺ギルドリーダーであり、彼女はまだそれが僕だと知らないが、その暗殺ギルドの最重要標的ターゲットは、他の誰でも無く僕であるという事。

 ほらね?些細な隠し事で、他の夫婦と大した差は無いんだ。

 ……ただ、一つだけ明確に違う部分を除いてはね。

 おしどり夫婦として名高い僕達が、ある一点で他の夫婦と圧倒的に違うところ──それは、妻の秘密だけ僕が一方的に知っている事である。そして僕は、彼女にはバレないよう裏で手助けをしていたりもする。

 これは、愛する妻のため僕が日々暗躍する、ごくごく一般的な、仲睦まじい普通の夫婦の物語。
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