何の説明もなく異世界に飛ばされました

マカラヒト大陸

「ここがマカラヒト大陸だよ。」
「わぁ、中世ヨーロッパみたい…」
独楽大陸からマカラヒト大陸にやって来たら刹那と東。
買い出しにやってきた様だった。
「えっと、今の手持ちは5000プリエールと7パライトか…」
「それがこの世界の通貨なの？」
「そっか、刹那ちゃんには説明してなかったね。こっちがプリエール、日本で言う円。パライトがセントだよ」
「なるほど…」
この世界に慣れる為にも、と刹那を誘ったのだ。
「やぁ、君達は買い出しかい？」
そう言って話しかけてきた白髪の少女…カミサマだ。
周りは驚きの余り騒然としていた。
「カミサマ！？」
「どうしてここに…」
「なに、ただの暇つぶしさ。刹那ちゃんはこの世界に慣れたかい？」
「ん、少しなら…」
カミサマに対してもタメ口の刹那に不敬だ、と言わんばかりの視線が向けられる。
ある者はひれ伏し、ある者は驚きの余り声がでない。
唯一神への態度は皆様々であった。
「そうかい。それは良かったよ」
優しげに微笑むカミサマ。
だが本心では無いことを刹那は感じていた。
「カミサマ、嘘が下手だね…」
「へぇ？どうしてそう思うんだい？」
「…なんとなく。勘。」
「ふぅん…。まぁ僕の世界で好き勝手するのも大概にしなよ？うっかり消してしまうかもしれないからね」
どうやらカミサマは自分の思い通りに動いてくれない世界に対して不満を抱いている様だった。
「…まぁ兎に角、君達の命は僕が握っているのと同じだからね。」
そう言うとカミサマは姿を消した。
張り詰めていた空気が一気に緩やかになっていくのを刹那と東は感じ取っていた。
「まさかカミサマ来るとは思わなかったよ…」
そうため息をつきながら言う東。
「カミサマってこの大陸だと敬われてるみたいだね…」
「カミサマに敵対すること自体がいけないことだからね。この大陸の人達の態度が当たり前なの」
そう説明する東。
「じゃあ私達が異常って事かな…」
「そうなっちゃうねぇ。」
ケラケラと楽しそうに笑う東に対して不安げな刹那。
「さて、カミサマもいなくなってし買い出しのつづきでもしようか」
「う、うん」
切り替えの早い東に引っ張られながらも買い出しを再開する刹那達。
街もすっかり元通りの賑わいを見せていた。

しばらく買い物を続けていると、日が暮れてきた。
「そろそろ帰ろうか」
「うん」
刹那達は帰路につく。
帰り道にはカミサマは姿を現さなかった。
気まぐれな神らしい。
屋敷に戻る頃には日は落ちているようだった。
屋敷には明かりが付いていて、篠目が留守していた様だ。
「ただいま」
「お、2人ともおっかえり～！」
「今日またカミサマに会ったよ」
刹那がそう報告すると、そっか、とだけ告げる篠目。
どうやらカミサマに対していい印象がない様だ。
「じゃ、買ってきた食材で料理でも作ろうか！」
「この材料だと…シチューとか？」
「いいね、シチューにしようか！」
刹那がそう提案すると、こくり、と頷く篠目。
今晩はシチューにするようだ。
「私も手伝うよ」
「いいの？流石刹那ちゃん、頼りになる～！」
嬉しそうに笑う篠目。
一通り話終えると、夕食を作り始める。
シチューなので比較的すぐ作れるだろう。

「いただきま～す」
皆そう言ってる後シチューを口に運ぶ。
ミルクの濃厚な味が食欲を唆る。
「…美味しい」
「皆で食べるともっと美味しいよね～」
「そうだな。…ルシフェルは食べないのか？」
「私は食べなくても構いません。マスターからの魔力が私の食事ですので」
ルシフェルがそう言うと仕方ない、と諦めた明日夢。
明日夢が食べろと言えば食べるだろうが、ルシフェルがそう言うので誘うのは諦めた様だ。

夕食を終えた後、皆で大浴場に向かって行った。
ライオンらしき石像からお湯が出ている。
頭を洗い終えると、身体を洗って湯船に浸かる。
1日の疲れが取れる様だ。
和気藹々と他愛のない話で盛り上がっていた。
「マスター、そろそろ出ないと逆上せますよ」
「もうそんな時間か。」
ルシフェルからの提案で風呂から上がる明日夢達。

風呂を済ませた後は各々自由なひとときを過ごしていた。
刹那は部屋でとある本を読んでいた。
この世界の深夜の話だ。
この世界、ルトリッカはカミサマによって作られ、何度も生まれ変わってきたらしい。
カミサマは気が短く、気に入らない事が起こると世界ごと滅ぼそうとするらしい。
そうしないように皆カミサマを恐れ敬っているのだ。
「…なるほど」
本を読み終えると、ベッドにダイブする刹那。
しばらくするとウトウトとし始め、すやすやと寝息を立てて眠り始める。

こうして長い1日は終わりを告げるのであった。