何の説明もなく異世界に飛ばされました

安どぉなつ。

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独楽大陸

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独楽大陸の中心国、神国。
カミサマを祀る鳥居の上。
そこには美しい九尾の狐が居た。
名を神楽。
ルトリッカでカミサマの次に魔力を持つ妖狐である。
「ふぁ…退屈じゃのう」
「神楽様、少しいいですか?」
そう言う1尾の狐、鞍馬。
鞍馬は神楽のお気に入りの妖狐だ。
「鞍馬か。良い。申してみよ」
「最近ルトリッカに異世界人が来たって噂だよ!黒髪の綺麗な女の子だって!」
「ほう…?1度会ってみるかのう」
鳥居から飛び降りると、簪からシャラン、と鈴の音を響かせる。
「少し席を外す。何かあれば鴉を通じると良い。」
「はーい!」
歩く度に鈴の音を響かせて神楽は独楽大陸の端の地区に向かうのであった。

「おい、人間、朝だぞ」
「んん…」
ふぁ、とあくびをする刹那。
ルシフェルが起こしに来てくれた様だ。
「起こしに来てくれたの…?」
「そうだ。マスターからの命令でな。」
「そっか…ありがとう、ルシフェル」
「礼を言われることは無い。」
相変わらずつれない態度のルシフェル。
「そう言えば、ルシフェルしか悪魔はいないの?」
「他にもいるぞ。私の中で眠っているがな」
「ふぅん…。」
他愛のない話をしながら廊下を歩く2人。
「お、刹那おはよう。」
「おはよう、明日夢。」
今日の朝食はリンゴの様な果実とパンのようなものだった。
「今日はユニコ大陸を案内しようと思ってるんだけど大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。」
こくり、と頷く刹那。
「じゃあ食べたら早速行こうか」
「うん。」
その時、屋敷のインターホンが鳴った。
「あたしが出るよ」
そう言うと明日夢は玄関に向かっていく。

「朝早くからすまんのう。新しい人間が来たと聞いて来たのじゃが…」
「神楽様!?」
「そうじゃ。妾が神楽じゃ。早う案内せい」
「は、はい…!」
慌てた様子で神楽を通す。
そこには朝食をとっている刹那とルシフェル、東に篠目の姿があった。
「神楽様、どうしてここに…」
驚く東と篠目に対してきょとんとした顔をする刹那。
「神楽…さん…?」
「そなたが新しく来た人間じゃな。妾が神楽じゃ。恐れ敬うが良い」
「神楽様が刹那に何の用で…?」
東がそう問いかける。
「なに、ただの挨拶ついでじゃ。」
「は、はぁ…」
「神楽さんはそんなに偉い人なの?」
刹那がそう問いかける。
「偉いも何も、独楽大陸の中心国、神国を治める主だよ…!」
冷や汗をかきながら答える明日夢。
「そういうことじゃ。今度神国に来てみるが良い。客としてもてなしてやろうぞ」
ケラケラと鈴の啼くような声で笑う神楽。
「じゃあ今度お邪魔しますね…!」
そう言って笑う刹那。

しばらくすると神楽は満足したのか帰って行った。
「あぁ、緊張した…」
「マスター、あんな狐風情に傅くことは無いと思いますが」
「そんな事出来るわけないだろ…!」
「…そうですか、それは失礼致しました。」
珍しく対立する明日夢とルシフェル。
「まぁまぁ、とりあえずえっと、ユニコ大陸に案内してくれる?」
「刹那切り替え早いね~」
ケラケラと笑う篠目とそう?と首を傾げる刹那。

明日夢に連れられてユニコ大陸行きの船に乗る。
船には人間だけでなく、悪魔や天使など様々な種族がいた。
「そろそろユニコ大陸に着くぞ」
「少し緊張してきた…」
「大丈夫だって。あたしに任せとけ」
ドヤ顔をする明日夢。
ユニコ大陸に着くと歓迎ムードか、市場が開かれていた。
骨董品や食料、ブレスレットなど色々なものが売られていた。
「凄い…港町でこんなに賑わってる…!」
「だろ?」
「おー!明日夢ちゃん!今日は連れがいるのか!」
魚を売っている男性が明日夢に声をかける。
「ん、今日はユニコ大陸を案内しに来たんだ」
「ほー、そうかそうか!そいつァいいな!」
ゲラゲラと笑う男性。
「良かったら今度うちの店に寄ってってくれよな!」
「勿論!おっさんの魚はユニコ大陸1番だからな!」
ニッカリと笑う明日夢。
つられて苦笑いをする刹那。

市場やカフェなど色んな場所を案内してもらうと、すっかり日が暮れていた。
「そろそろ帰るか」
「ん、そうだね」
2人は独楽大陸行きの船に乗ってユニコ大陸を後にする。
手荷物には大量の食材や日用品が詰まっていた。

屋敷に戻ると、ルシフェルが出迎えてくれた。
「マスター、夕食を作っておきましたので良ければどうぞ」
「ありがとう、ルシフェル」
夕食を終えた後、刹那は部屋に向かった。
どうやら日記を書いている様だ。
今日あった出来事を書き留めると、ベッドに横になる。
しばらくするとすやすやと寝息を立てて眠っていた。
波乱の1日はこうして終わりを告げるのであった。
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